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Avengers  作者: くをん
15/25

そして10年が経過した現在

普通に話は続きます。

※修正しました。皆様にはご迷惑をお掛けします。

 ――それから数年の月日が経った。

 研究養育施設『イクスぺリメント』は学術研究会『ウィア』を代表として数多の組織の目論みから無事完成し、その内部中枢に位置する『スパシーバ学園』も周囲360度高いプレートに守られる城か宮殿の様に出来上がった。

 そして更に数年が経過し、『スパシーバ学園』内部には男女合わせて累計1500人程度の聖徒達が『神呪(ミュステリウム)』の使い手として在籍している。


 そんな中、今日も『私闘(フェーデ)』は行われていた。


「喰らえ! 水の縄張り――『ウォーターヘル』!」

「チッ! クソ! お前の属性は『水』か! だが――」

 2人の新人(ルーキー)能力者の本日三度目の『私闘(フェーデ)』――。

「――これはどうかな?」

 濁流の様に手から『水』の術式を編み出した1人の能力者はその言葉を聞くまで、勝ち誇った顔でいた。しかし――

「我を水害の(すべ)から守り通せ! 氷の大帝――『ダイアモンドクロス』!」

 この瞬間、『水』の術式をその手に創造し勝ち誇っていた1人の新人(ルーキー)は絶句。その顔は硬直し、文字通り――

 ――その場にあった全てが凍り付いた。

 ペキペキペキ――!

 絶対零度の冷気がもう1人の術者の属性を物語る。

 それは『氷』――あらゆる『水』の攻撃を無力化するある種の天敵。

 『水』は『氷』には敵わず、代わりに『火』の属性を鎮める。

 これは属性と呼ぶ魔法だった。だが、その弱点と長所は限定的でジャンケンの様な図式になる。

 属性は主に8つある。

 ――『火』『水』『氷』『土』『風』『雷』『光』『闇』――

 『火』は『水』に弱く『氷』に強い。

 『水』は『氷』に弱く『火』に強い。

 『氷』は『火』に弱く『水』に強い。

 『土』は『雷』に弱く『風』に強い。

 『風』は『土』に弱く『雷』に強い。

 『雷』は『風』に弱く『土』に強い。

 『光』と『闇』は特殊な構造をしていて、唯一このルールからズレている。具体的に言えば互いに打ち消し合い、『無』と言うあらゆる属性に耐性を持つトランプで言えばジョーカーの様な役割を与えられる。

「勝負あり!」

 今回のこの戦いの『私闘(フェーデ)』を司る審判がそう告げると、どうやら勝者は『氷』属性の持ち主の方だった。

 負けた方の『水』属性の男は勝ちを確信していたのか実に悔しそうな表情を浮かべていて、もう1人の勝者。『氷』属性の男は先程の躊躇が嘘だったかの様に余裕の笑みを浮かべていた。

 しかし、『私闘(フェーデ)』の真の目的は勝ち負けでは無い。勝者と敗者は互いに握手しあい、戦闘後の余韻にそれぞれ浸っているが、特製のギプスを身体のあちこちに嵌めていて電極、そしてプラグにコードが付属していた。この状態での戦闘はさぞ、動きずらかっただろう。

 その身体中の幾本ものコードが伸びた先、そこに機械があってかなりの数の巨大なUSBポートにコードが差し込んである。

 そこから今しがた終わった2人の新人(ルーキー)の戦闘を解析し、一時的な指標。つまりパラメーターを検出するのだ。『神器珍獣(エクセンプルム)』と呼ばれる独自の世界中に一種類しかいない妖精ロボットもこの時、出現する。

「これ見てるといつも思うんだけどさ」

「何を?」

 ドームの様な卵形の研究養育施設『イクスぺリメント』――その『スパシーバ学園』内部。

 本来ここは日本の教育制度で言えば小学校から大学に位置するつまりは学校の役割を果たしており、例の『私闘(フェーデ)』が執り行われるのは、決まって教育者のトップ。要するに校長先生が熱弁をふるう体育館ホールでの出来事だ。

 もちろんそこにいる『神呪(ミュステリウム)』の年齢層はバラバラで、下は10歳未満、上は老人と呼べる程の生徒達で溢れている。要するに学術研究会『ウィア』の御眼鏡にかなえば、誰でも良いのだろう。しかしその条件はあくまで『コンタギオン』の罹患者。

そこから導き出される『啓示(スティグマ)』の紋章(エンブレム)の持ち主――男女問わず約1500人。

 小さな無名の大学規模の所謂楽園(パラダイス)であり、外の世界からは『デビルアイランド』と言う真逆の意味を成した『スパシーバ学園』――。

 その観客席が設えられている1階上の通路を挟んで手すりにもたれる2人の男女がいた。

 ――他でもない。大地ルイと大地レイだ。

「決まってるじゃないか。僕達がまだ新人(ルーキー)だった頃の事をさ。レイももちろん思い出すよね?」

「へーえ? ルイはそんな感傷的な気分で見てたんだ」

 その言葉の真の意味を探る。

 そんな雰囲気を纏ってルイはレイの方を見つめ、続く言葉を待った。

 レイは手にしていた棒付きアイスキャンディーをひと舐めし、フフンと鼻を鳴らすとこう言ってのけた。

「私にとっては鳥の様に2、3歩歩けば宇宙の彼方に記憶が吹き飛ばされる程どうでも良いわ。大地ルイよ。そなたはここに担ぎ込まれたあの日の事を覚えておるかね?」

 アーメンと、今にも十字を切って両手を合掌。天を仰ぐ老神父の真似事をするレイ。

 そんなバカげたコントに付き合ってられるかとルイは言いたい所だが、レイの頭上には未だ希少価値の高い『神器珍獣(エクセンプルム)』――アムーと呼ぶ天使の輪と両脇に羽根がオプション付きで浮遊していたので、何だか本当に聖キリストには申し訳ないのだが、その手の宗教者に見えない事も無い。ただ、右目を覆い隠す海賊の様な黒い眼帯と黒のツインテール、そして白いつなぎの制服を除けばの話だが。それと最も大きな禍根は先端がレイの舌で溶けかけている棒付きアイスキャンディーの存在感だ。

「忘れる訳ないじゃないか。僕達はあの時、死にかけだったんだぜ。インサニオとか言うレクティオンとの戦いの後、この――」

 そう言いつつ、ルイは己のあるはずの無い左目の黒い眼帯をスリスリ摩る。

「左目を奪われて、そして――」

 ――クスクス。

 不意にレイは含み笑いの様な無邪気な笑みを向けて片目でウインク。必死こいて己の緊張感タップリ果汁100%のルイの記憶の残滓を弄ぶ。嘲弄する。

 そんな時だった。

読んでくれた方々ありがとうございます。

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