円卓会議
フィリアム・オクロウル
種族:時械神
種族特性:時の支配者
能力:時械神世界
詳細:混沌の世界の時間を司る時械神の美しき少女。
人々に時間の概念を与えたと古の神話に残る非常に信仰のある神様。
その影響か時械神世界による時間を自在に歪める能力を持ち、創造神:レグラスよりも時の流れに身を投じてる為、寿命が早く進み、古の時代に比べるとかなり力が落ちたらしい。
それでも、レグラスと互角以上の力を有し、他世界の神々も彼女には頭が上がらないそうだ。
理由あってレグラスの命令でリアを神にしようと目論む。
俺たちが門を出たその矢先の事だった。
「お、おい…アレって…」
レイチェルが目の前の敵を見て震えた声で言う。
「平原の…夜の悪魔…」
ナディーは俺の服の裾を握り締めている。
若干首がしまってるせいか、少しだけ息苦しい。
「おいおい…あいつ、瘴気を纏ってねぇか?!」
ドス黒い禍々しい瘴気があいつから溢れ出る。
そして、そいつはゆっくりとこっちを向く。
「ワレヲコロシニキタカニンゲン…ワレハソンナニアマクナイゾ?」
悪魔の翼を広げて吠える。
纏っていた瘴気が吹き飛び、周りの草を枯らす。
「最悪じゃん…」
アルスがボソッと呟く。
「リルラ、俺が突っ込むから、ナディーと援護しろ!ナディーはなるべく遠距離から援護してくれ!アルスはリルラとナディーの援護だ!後は敵の攻撃を受けない様にしながら、作戦通りに行くぞ!」
俺は的確に指示を出し、刀を抜きながら、魔法の詠唱をし、敵に向かって全力疾走する。
「了解!地獄の業火で悶えろ!ヘルフレイムストーム!」
リルラの振り払った鎌から闇色の炎の竜巻が発生し、悪魔に向かってその業火を燃やす。
「俺も本気で行かねばな!うおぉぉぉぉぉぉん!獣人化:ウルフ!」
バキュラも姿を人狼に変えて突撃する。
「ナディー…回復…する…ナディーの声に応えて…継続する癒しを…リキュアラ!」
ナディーの魔法で味方に継続回復の能力を付与する。
「僕も行くよ!天炎よ…我に力を与え、我が斬撃となりて敵を焼き尽くせ!久遠枝垂桜!炎舞!」
アルスの舞う様な刀の流れから、無数に白い炎の斬撃が発生する。
「うおおおおぉ!くらいやがれ!風帝:カラドボルグ!」
レイチェルの全てを貫く様な風が彼女の細剣から発せられ、悪魔に向かっていく。
「フン…ヨイ、タワムレテヤロウゾ…」
悪魔は翼を広げ、俺たちの攻撃を避けようともしてない様子だった。
「くらえ!バニッシュメント・サイクロンダスト!」
俺が奴の足元で無限の斬撃を叩き込む!
「くらえ!ハウンドノイズ!あおぉぉぉぉーん!」
バキュラの強烈なブレス攻撃が炸裂する。
「ヌゥ?!」
そして、素早く距離をとって、それぞれの攻撃が直撃し、最後の詠唱を終わらせる。
「全てを破壊する土の竜よ!その姿を現せ!グラビトンドラゴン!」
奴の足元から土の龍が現れ、やつを飲み込む。
「はぁ…はぁ…やった…か?」
レイチェルが肩で息をしながら言う。
「はぁ…はぁ…開始早々、魔力も力も全力も出し切っちまったぜ…」
アルスが片膝を付いて苦しそうに言う。
「お、俺も…らしくねぇが…これで生きてたら…死ぬかもしれん…」
バキュラも少し弱々しい声で言う。
「私が…全力を…出した…んですから…倒せて…ますよ…」
リルラが息も絶え絶えに言う。
「後で…ナディー…魔力…回復…する…」
ナディーは相変わらずの様子だが、かなり疲れているだろう。
「正直、これで倒せれねぇなら…撤退した方がいいかもしれんな…」
俺の疲労もかなりのものであった。
俺は今までの感覚から、魔力には自信があったが、それでもかなりの消費である事には変わりはなかった。
巻き上がった煙が少し晴れてきた頃…
「モウオワリカ?ニンゲン…」
「んなっ?!」
悪魔が翼を広げて巻き上がった土煙を吹き飛ばす。
「ウソだろ?!」
レイチェルが驚きで声を荒らげる。
「ツギハワレノバンダ…」
俺は急いで皆に言う。
「俺が少しだけ、時間を稼ぐ!お前らは全力で逃げろー!」
悪魔の拳を刀で何とか受け止める。
「リアー!」
ナディーが大声で叫ぶ。
「リア、私が転移の魔法をかけます。だから、絶対に死なないでくださいね!転移門!」
リルラがそう言って、魔力を溜め始める。
「フン…ニンゲンラシイ…バカナカンガエダ…セツナノシュンカンニカケ…ワレカラノガレヨウトモクロムカ…ヨイ!ワガチカラ…ミセテヤロウ!」
悪魔が瘴気を溜めはじめる。
「…ッ?!」
俺は知った…
俺はこいつに今、殺される!
「座標軸確保!転移!」
皆の身体を光が包む。
「シヌガヨイ!デビルブレス!」
悪魔の闇色の彷徨が俺を包み込む。
「ここは…何処だ?」
薄暗い部屋に俺はいた。
スタスタと何かの足音が聞こえる。
俺は痛む身体を起こして薄暗い部屋の扉を見る。
コンコンと控えめなノックが響いて扉が開く。
「入るね…」
小さな聞き覚えのある少女の声が響き、その姿が現れる。
俺は体の痛みも忘れて驚きの声をあげて言う。
「ナディー!あいってぇ!!」
俺が飛びつく様に身体を動かそうとして、痛みでベッドから落ちて悶えてるのをナディーは涙しながら駆け寄ってゆっくりと俺の身体を撫でる。
「リア…ナディー…ずっと…うぅ…良かった…ほんとに…良かっ…た…よ…良かったあああん!」
ナディーが大声をあげて泣き始めた。
オレは落ち着くまでナディーの頭を撫で続けた。
「ナディー…ずっと…リア…起きる…待ってた…皆…いなくなった…転移…する時…リア…ナディーたち…悪魔の攻撃…受けた…皆…」
ナディーは少し悲しそうで申し訳なさそうに尻尾を垂れて言う。
「ナディー…力…足りなかった…せい…皆…皆…」
俺は再び泣きそうになるナディーの頭にポンッと手を置いて優しい声で言う。
「ナディーは何も悪くねぇよ。俺が戦えと指示したんだ。俺の責任だ。そのせいでパーティーは壊滅し、挙句にはお前の家族を…ごめんな…俺があんな事言わなかったら、こんな事にはならなかったよな…」
「そんな事…ない…リア…強くて…賢い…でも…ナディー…弱いから…皆…守れなかった…ナディー…弱かったせい…皆…」
俺たちはいつの間にか眠っていた様だった。
気がついて起きると辺りは夜の静寂に包まれていた。
「リア…おはよう…」
ナディーが元気の無い声で言う。
「おはようナディー。」
俺も元気の無い声だった様だ。
響く木霊が悲しげにないていた。
俺たちは、しばらくこの空家で生活する事にした。
旅を続けるか、やめるかも話し合った。
結論から言うと旅は続ける事になった。
冷静になって考えると、まだあいつらが死んだと言う確証は無かった。
そもそも、俺たちが生きてて、あいつらが死ぬ訳ないと言う事になったんだ。
その結果の旅を続けると言う答えだった。
俺たちが森の無人小屋で生活し始めてしばらく経ったある日…
「リア…贈物って…どんな能力…なの…?」
ナディーが不思議そうに首を傾げながら俺を見つめて言う。
「そう言えば、俺にもわかんねぇんだよなぁ…試しに使ってみるか!」
俺は贈物を意識して力を使う。
「贈物、発動!」
『贈物の発動を確認しました。ギフトを授けましょう。』
レグラスと似た声ではあったが、別人の声が俺の頭に響く。
ナディーも少しだけ不思議そうに周りを見回している。
『エンチャント…水精霊!さらに、能力永続倍増!』
俺は身体に力が溢れてくるのを感じた。
ナディーも同じ様に能力が上がったと思われる。
「ナディー…リア…能力…上がった…凄く…強くなった…」
そして、俺たちの目の前に謎の文字が浮かび上がる。
「なんだこりゃ?」
オレがその文字に触れると、眩い光を放ち始める。
「おわっ?!」
驚きと眩しさで思わず目を閉じてしまった。
目を開けるとそこには言葉に表すには勿体無いほどの美しい少女が居た。
その少女はゆっくりと目を開けて言う。
「我は時械神フィリアム・オクロウル…そなたの力になりに来た。」
ナディーが興味深そうに言う。
「リア…声…時械神…応えた…なんで…?不思議…とても…不思議…」
フィリアムが面白そうに言う。
「…我はもう時期死ぬ…それまでにリア、そなたを必ず神にせよとの命令なのだ。今から、二日だ。そなたに神になってもらう!そうだな…あえて名付けるなら、幸福の時械神…幸時械神:リア・ラクリアになってもらうぞ。異論は認めん。」
飄々とした態度とは裏腹に真剣を感じる声だった。
俺が文句の一つでも言ってやろうかと、口を開こうとした瞬間。
「人狼の少女よ。今しがた、そなたにも力を与えよと命が来た。そなたにももっと力をつけてもらう。」
そう言うと目の前の時械神は自らの背後に不思議な力を感じる空間を創り出した。
「行くぞ。時間がない。有無を言わずに着いてこい。話はそれからだ。」
俺たちは喋る事も出来ないまま時械神に連れて行かれた。
「おいおい!なんだって、俺たちをこんな訳のわからない世界に…それに俺を神にするってどう言う事だ?」
「ナディー…よくわからない…力…必要…なんで…?」
時械神が静かに言う。
「1つずつ順に答えてやる…だが、まずこの話を聞いてもらおう。遥か遠い昔、我らの力が世界の全てを支配し、この混沌の世界でもそれが当たり前だった日の事だ…」
ここはまだこの世界が混沌になる前の混沌の世界…
私はいつもの様に地上の民の祈りを受けて地上に降りていた。
「どうしたのじゃ?人間が我を呼ぶなんぞ久しい事なんじゃが…」
我がそう聞くと目の前の人間はこう言った。
「申し訳ありません。ですが、どうしても、時女神様のお力をおかりいただけないと行けない自体が発生してしまいまして…」
「なんじゃ。申してみよ。我にできることなら、何でもしてやろうぞ。」
「はい…実は、邪教徒が邪神:メネシスを復活させたとの報が寄せられた次第でして…私どもではとても太刀打ち出来ませんし、もし真実であるならば、何とか今のうちに我ら善徒の神々のお力をかりれぬかと…」
神殿の巫女が苦しそうな表情で言う。
「ふむ。して、他の神にも助力は乞うておるのか?」
私が諭す様に言うと神殿の巫女が言う。
「ほとんど全ての神殿が邪教徒の手に落ちてしまいました…しかし、始まりの巫女が言うには、創造神レグラス様の神殿と炎神ブラスロア様の神殿と幸神リアム様の神殿しか残されていないそうです。」
神殿の巫女が苦虫を噛み潰したような表情で続ける。
「私達も恐れながら、尽力させていただきました。しかし、邪神の恩恵を受けた少数の邪教徒を倒すだけで精一杯であっという間に揺蕩いの巫女、轟きの巫女、地鳴りの巫女と巫女が捕まり、邪教徒の監獄に捕らえられてしまったのです。」
私は他の巫女の居場所を聞く事にした。
「ちと、待っておれ。他の神にも連絡を取ってみようぞ。」
私は他の神のところへ行ったが、殆どの神は居らず、レグラスとリアム以外は居なかった。
ブラスロアはきっと何処かで戦っているのだろう…
やつは人の言葉は理解せぬが、神として民を救う気持ちは我ら以上に強い故な…
「して、私たちを招集したのは良いのだけど、リアムのやつ遅くない?あんた、ほんとに呼んだの?」
レグラスがつまらなさそうに言う。
「えぇ、確かにお呼び致しましたが…言われてみるとかなり遅いですね。」
その時、何とも気の抜けた声とともに神々の円卓の扉が開く。
「いやぁ…寝坊しちゃってさぁ…ごめんね?」
猫女族の姿をした少女が悪びれる様子もなく円卓の椅子に座るのでレグラスが責め立てるように言う。
「あんた、ほんとにこの世界が危ないってわかってんの?ほんと、あんたの頭の中っていつもお花畑よね!」
リアムはニコニコと微笑んだまま言う。
「あはは。だから、ごめんってば~…ね?このとーりだからさー」
レグラスが火に油を注いだ様にさらに怒った様に…て言うか怒って言う。
「だいたい、あんたには自分が神だっていう自覚はないわけ?私がどんだけ待ってたと思ってんの?」
「やぁ~…レグラスの大将、そんなに怒ってるとシワが増えますぜ?ほら、ニッコリと笑ってさぁ…」
「…ッ!!調子に乗ってんじゃないわよ!」
レグラスがリアムに掴みかかろうとするがリアムは軽い身のこなしで避けて真剣な表情で言う。
「今、私たちは30分の時間を無駄にしたわ。この間にも何万人と言う民が傷つき、不幸になっているのよ!いい加減に始めましょう?ブラスロアもこの世界の為に戦ってるわ。フィリアム、始めてください。今回の件は貴方がリーダーなんですから、さっさと決めて世界を救いに行きましょう!」
リアムの言葉を苦虫を噛み潰したような表情で聞きながら、始まった円卓会議。
世界の命運がかかった会議は何処へ向かうのか…
邪教徒の行動とそこから導き出される目的を議論し、1つの結論へと至った…
「私は邪教徒が邪神の力を使って世界を混沌に陥れようと考えているのでは?と思います。」
「世界を混沌に陥れるだと?!」
レグラスが今にも飛びつきそうな勢いで言う。
「あくまでも、私の感にすぎませんよ。ですが、混沌の世界は彼ら邪の道を行く者達にとっては目指すべき世界のはずです。」
リアムはレグラスの勢いに圧されることもなく堂々と真剣な表情で言う。
「混沌の世界…となれば、我ら光の神の殲滅と言う事か…」
レグラスが随分と腹ただしそうに拳を握りしめながら言う。
「でも、なんで、彼らは混沌の世界を望んでるんでしょう…?そこは人間には耐えられぬ瘴気の世界しか残らないと言いますのに…まさか…!」
私が何かに気づいた様に言うとリアムはその通りだと言う様に頷く。
「なんじゃと!そんな事が許されるわけがなかろう!今すぐ、私らが出て奴らを殲滅せねば!」
レグラスが怒りで鉄砲玉の様な勢いで円卓の扉に向かおうとするのをリアムが止める。
「待ちなさい!闇雲に突撃しても、今の彼らが人間である可能性はないのですよ!レグラス様の怒る気持ちは分かりますが、少し落ち着いてください!貴方が死ねばこの世界は混沌に落ちてしまうのですよ!神である以上、我々は冷静に考え、実行せねばならないのです!」
リアムはやけに真剣に考えていた。
もしかしたら、全てを知っているんじゃないかと思える程に…だ。
普段のリアムからは想像もつかない程の冷静さでかつ真剣そのものであった。
それは私たちの間に疑問符を浮かべる隙もいれないぞと言いたげでもあった。