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それぞれの思い

アルス

年齢:17才

種族:人間

種族特性:適合者

能力:侍

詳細:強い相手と戦う事が大好きで天真爛漫な少年。

ナディーとバキュラとパーティーを組んでいたがリアに一目惚れしたナディーによってリアのパーティーの一員となる。

リアには惜しくも敵わなかったが、数いる冒険者の中では最強クラスの剣技を持つ。

その一太刀は全てを断ち斬ると言われているそうだが、本人は自覚がない。

いつも強い相手を求めている。

本人は使わないが、魔法も立派な戦い方だと思っている。


バキュラ

年齢:16才

種族:狼族(人間種)

種族特性:闇之声(ダークハウンド)

能力:獣人化:ウルフ

詳細:見た目は普通の人間の少年。

ナディーの双子の兄。

獣人種族の狼族と人間の間に産まれた半人狼(ハーフウルフ)でその中でも人間よりの容姿を持つ人間種と呼ばれる種族。

獣人化:ウルフによる人狼に変身する能力で戦う事を得意としている。

鋭い爪の一撃と牙による攻撃力の高さが自慢。


ナディー

年齢:16才

種族:人間(人狼種)

種族特性:適合者、月乃瞳(ムーンアイ)

能力:戦魔女(バトルシスター)

詳細:獣人種族の狼族の特徴的な大きな耳と尻尾の容姿を持つ少女。

人間と獣人種族の狼族の間に産まれ、狼族の容姿をしているため人狼種寄りの人間となっている。

見た目は狼族だが、他の狼族と違って人狼への変身能力は無いが、絶大な魔力を持ち、魔道の道においては最強クラスの魔女(シスター)

リアに一目惚れし、凄く懐いている。

月乃瞳による獣人種族を強化する能力を持っている。


「着いたぜ。ここがうちらの街、剣の街:ブレードワーズだ。」


あちらこちらで見かける冒険者の様な人は皆、剣を背に担いでいた。


「うわぁ…リア、凄いですよっ!あれ見てください!ああっ!あちらからは剣を打つ音が…!」


リルラが街の凄さに大喜びしている。


俺も街の凄さに圧倒されながら…


「さすがの俺も驚きの言葉も出ないくらい、圧倒されちまったぜ…」


俺たちがそんな感じで街の凄さに圧倒されてるとレイチェルがまだかと言わんがばかりに言う。


「うちらの街を褒め称えてくれるのは嬉しいんだけど、うちの武器返してくんね?仕事に行きたいんだ。」


俺はそうだったなと武器を返しながら言う。


「なぁ、あんた、良ければ、俺たちと組まねぇか?俺たちはこっちの事はよく知らねぇから教えて貰えると助かるってのもあるんだがな…」


「はぁ?!」


レイチェルが驚いた様子で目を見開きながら言う。


「お前、正気か?!うちら、さっきまで殺し合いしてたんだぞ!それとも、強者の余裕ってやつか?」


「いや、俺はお前が強いって言うのをこの身で知っているし、何より、お前、良い奴じゃん。それに可愛いし…」


最後の一言はギリギリ聞き取れるくらいの声で行ったんだけど…


「はぁ?!か、可愛いとか言ってんじゃねぇぞ!何言ってんだお前!」


恥ずかしさからか真っ赤な顔でめちゃくちゃ騒いでるレイチェルの声でリルラがニヤニヤと嬉しそうにこっちに来て言う。


「もしかして、お二人さん、付き合っちゃう感じですか?あははっ!側で見て居るのが楽しそうですね♪」


リルラの思わぬ発言に俺とレイチェルは思わず…


「「それだけはぜってぇねぇ!」」


勢いよく全力否定していた。


「それはねぇけどよ…」


レイチェルが少しだけ恥ずかしそうに言う。


「別に、お前がどうしてもって言うなら、うちらで組んでやってもいいぜ?どうせ、うちはこのままでも1人だしな。」


俺はレイチェルに手を差し出しながら言う。


「ああ、これからよろしくな。レイチェル。」


ガッチリと俺の手を握って言う。


「うちの方こそ、よろしくな!リア。」


そして、リルラが俺たちのそんな様子を見て言う。


「こうして、俺たちは人生のパーティーとして付き合う事になった。」


「「だから、普通のパーティーだ!」」


俺たちは息ぴったりに否定する。


そんな様子の俺たちに少年が駆け寄ってくる。


「なあなあ!そこの猫女族(ケットシーナ)のお姉さん!僕と手合わせしやがれです!」


突然、俺の前でその少年は立ち止まって言う。


俺がわけがわからず、はぁ…と言っているとあちらは戦闘体制を整えていた。


「行くよっ!一の舞…(ホムラ)突き!」


炎を纏った強烈な突きが少年の刀から発せられる。


「おわっ?!ぶっねぇ…」


俺は咄嗟にそれを屈んで避ける。


「隙有りっ!炎一閃(ホムライッセン)!」


続けて炎を纏った一閃が少年から発せられる。


俺は紙一重で避けて刀を魔力で生成する。


「ここまでやる気なんじゃ…俺も手は抜かねぇぜ?どりゃ!」


俺の低位置からの振り払いを間一髪で少年は避ける。


「お前、すっげぇな!魔剣士ってやつか?僕、楽しくなってきたよ!まだまだ行くよ!乱れ咲け!紅蓮の桜よ!秘技:紅蓮桜(グレンザクラ)!」


咲き誇る桜の様に踊る炎の斬撃が俺に飛んでくる。


「ふっ…お前が紅蓮に燃え盛る桜なら、俺は地獄の桜を見せてやろう…怒り狂い、死に返り咲き…黒き炎をあげよ!くらうがよい!我が必殺の刃!地獄桜(ジゴクザクラ)六部咲!」


俺の一太刀から黒炎を纏った強烈な斬撃が無数に咲き誇る。


そして、それは少年に膝をつかせるには容易いものであった。


少年はその場に倒れて晴れやかな表情で言う。


「あー、負けちまっだな!やっぱ、僕の思った通り強いや♪ありがとうございました!」


相当、全力を出し切ったのか、少年は顔だけをあげて俺にお礼を言う。


「いや、俺もお前の強さにはびっくりしたぜ。俺はリアだ。お前はなんて名だ?」


「僕はアルス!そして、こいつが僕の相棒の天照だよっ!」


少年が嬉しそうに自分の武器を紹介する。


「やっと見つけたぞアルス!」


声が聞こえた方を振り向くと、人間の男の子と俺みたいに耳と尻尾の生えた女の子がアルスに駆け寄って言う。


「アルス、凄い怪我…何したの?」


少女が少し震えた声で言う。


「アルス、お前、またやらかしたな?」


少年が、面白そうに笑いながらアルスに言う。


「あっはは…まあね…」


アルスが少しぎこちない笑い方をする。


「アルス、こいつらはお前の仲間かい?」


俺が不思議そうにそう言うと少女が答える。


「ナディーとバキュラはアルスの仲間…あなたは?」


「俺はリア。こっちのちんちくりんはリルラでこっちがレイチェルだ。」


俺がちんちくりん呼ばわりしたことによってリルラが飛びつく様に反論する。


「だーかーらー!ちんちくりんって呼ばないでくださいよっ!レイチェルも何か言ってやってください!」


「ちんちくりん…ププッ…!」


レイチェルは何故かめっちゃツボっていた。


「ちょっ!レイチェル!笑うなんて酷いですよ!」


「ハッハッハ!わりぃわりぃ!面白くってよ!」


リルラとレイチェルがそんな言い合いをしていると…


「俺はバキュラだ。アルスのパーティーの一員で俺とナディーは双子の兄妹だ。」


少し微笑みながら、バキュラが嬉しそうに言う。


「おう!よろしくな。バキュラ。」


「ああ、俺の方こそよろしくな。リア。」


俺とバキュラが硬い握手を交わす。


「バキュラ、ナディーにも握手させて…アルスの治療…終わった…」


ナディーがバキュラの手を俺から離して両手で俺の手を包む様に握る。


「リア…いいにおい…だから…いい人…ナディー…リアの事…気になる…」


俺の手を握りながらナディーはあまり変わらない表情で嬉しそうに言う。


「レイチェル、浮気現場ですよっ!取り押さえましょう!」


「だから、違うつってんだろ!」


リルラのボケに勢い良くツッコミを入れるレイチェルを面白そうにバキュラが見ながら言う。


「お前の仲間も面白い奴らだな。」


「ナディー…一緒に旅したい…バキュラ…どうかな?」


ナディーは嬉しそうに俺の足にまとわりついて言う。


「それはアルスに聞いてくれ。俺たちのリーダーはアルスだからよ。」


「いいよっ!リアは強いし、僕もリアより強くなりたいからね!」


「即答かよ!まあ、良いや。そんじゃ、これからもよろしくな。」


俺は改めて三人にそう言う。


ナディーの俺に注がれる熱い視線がやけに気になるが、俺たちはこうして、一つのパーティーとなった。


「ねぇ…リア…ナディー…リアの事もっと知りたい…」


ナディーが尻尾をブンブンとちぎれるんじゃないかってくらい振りながら言う。


バキュラはそんなナディーを見て面白そうに言う。


「ナディーが初対面でこんなに懐くなんてなぁ…よほど、リアには魅力がある様だな!俺も気になってしまったぞ。」


バキュラは興味深そうに笑いながら言う。


「うんっ!それに、リアはすっごく強いし!僕もその強さが気になる!」


俺は小さく呟く。


「俺、モテ期か?」


レイチェルと言い合いをしていたリルラが戻ってきて言う。


「リア、いつの間にか超モテモテになってますね!」


レイチェルも豪快に笑いながら言う。


「ガッハッハッ!羨ましいなぁ!このこのー!」


「ちょっ!レイチェル、剣の柄は痛てぇって!ナディーは危ねぇから、もうちょっと離れろって!」


そんな騒がしい俺たちに駆け込み依頼が舞い込む。


「すみません!冒険者の方ですか?」


少女の声がして振り返ると少女が居た。


「ああ、俺たちは確かに冒険者だけど、何かあったか?」


俺が不思議そうにそう言うと少女が言いづらそうに言う。


「この依頼なんですけど…」


そう言う少女が差し出してきたのは天狼山(テンロウザン)にのみ自生するという天狼草(テンロウソウ)の採取だった。


「良いぜ!受けてやるよ。」


「ほんとですか!ありがとうございます!では、手配金(イライリョウ)を…これだけしか無いんですけど…」


そう言って、少女が僅かなお金を差し出そうとする。


「おいおい、お前、金ねぇんだろ?金はいいから任せな。」


俺がそう言って断ると少女が驚いた様に目を見開いて言う。


「ほ、ほんとにいいんですか?!それはほんとに助かるんですけど…」


「気にすんな。他の奴らは知らねぇが、俺たちは金のねぇやつから金を取り上げるほど鬼じゃねぇって事でさ。」


俺はそう言って、皆の方を向いて言う。


「ってなわけで!天狼山に行くぞ!道わかんねぇけど!」


「お前ら、今までどうやって暮らしてたんだよ…」


レイチェルが苦笑いしながら言う。


「ますます…リアの事…気になってきた…」


ナディーはよくわからないが楽しそうだからそっとしておこう。


「天狼山はその名の通り、狼族の山だそうで、ここからずっとクラリスの長城沿いに歩けば辿り着けますよ。」


何処からか地図を持ってきたリルラが地図を見ながら言う。


「ちなみに、この地図は私の交渉術(セットク)で手に入れてきました。」


俺は満面の笑みでリルラに言う。


「それぜってぇ恐喝だろ」



話が逸れてしまったが、俺たちは狼族との戦闘になる可能性を考慮して、夜中は避ける事にした。


「だったら…夜…ここを出る…朝に着くよ…」


ナディーが嬉しそうに俺の顔を見ながら言う。


「そうか、ありがとうな。ナディー。」


俺が頭を撫でてやるとナディーは気持ち良さそうに頬を緩ませて、尻尾をブンブン降っていた。


「だけど、クラリスの長城に辿り着くまでの平原には平原の夜の悪魔と呼ばれる化け物がいると聞くぞ。」


バキュラが難しい顔をしながら言う。


「そうだよなぁ…俺とリルラだけなら、何とか避けて行くのは出来そうだが、それだとパーティーの意味がねぇしな。」


「あのさ…」


アルスが言いずらそうに言う。


「僕とリアで何とか足止めだけでも出来ないかなって…倒す事は出来なくても注意をそらすくらいなら…さ…」


俺は少し考えて言う。


「いや、それは良くないな。もしリルラ達と隊を分けるにしても、俺たちでは怪我をした時のリスクが大きいし、何より俺たちではなく、リルラ達の方へ行くと元も子もねぇしな…」


「ナディー…リアと一緒…居れたら…幸せ…離れない…」


ナディーは俺にベッタリと引っ付く。


「…だそうなので、悪いがこの案は却下だ。」


「いい案だと思ったんだけどなぁ…」


すると、ここまで黙っていたリルラが突然立ち上がって言う。


「あーもう!考えてたって仕方ありませんわ!リスクばかり考えたって前には進めませんし、思い切って皆で化け物を倒して進めば良いのですよ!」


「はいはーい!うちもリルラの意見に同感でーす!危険な化け物がいるなら、先に倒しちゃえば問題ないと思いまーす!」


レイチェルもリルラに同調して声高らかに言う。


俺は少し考えて言う。


「まあ、次にまた同じ依頼が来た時に化け物が居なけりゃ、少しは楽が出来るか…」


「ナディー…回復出来る…ナディー…大活躍…リアになでなでしてもらえる…ナディー…満足…」


ナディーはとても嬉しそうに尻尾を振りながら言う。


「仕方ないな。皆がそう言うなら、俺たちも腹くくるしかないな?アルスよ…」


「そうだな。僕たちの力を化け物に見せつけてやろう!」


アルスとバキュラもやる気を出して言う。


「よし、なら夜までは各自寝るなり、武器を整えるなりしてくれ。所持品の確認も忘れるなよ。集合場所はこの門だ。それじゃ、解散!」


俺たちはこの場は解散する事になった。


皆がそれぞれ思い思いの場所へ出かけて行く。


俺は商店街の方へ歩き出した。


隣には当然の様に嬉しそうにしているナディーが居た。


「さってと…調合薬とかいろいろ買いてぇけど、金はねぇし、どっかで昼寝すっかねぇ…」


俺は手に持ったあのドラゴンの角を見て言う。


「まあ、所持品もこれくらいだしな。」


ナディーがその角を見て嬉しそうに言う。


「それ…高く…売れる…高級品(レアアイテム)…やっぱり…リア…凄い…フフッ…」


「そうなのか?リルラが簡単に叩き折っちまったんだけどなぁ…大丈夫かな?」


「うん…サンダードラゴニックの角は別格…それに…まだ放電してない…プレミアムな角…」


ナディーが嬉しそうに俺に言う。


「なら、持ってても仕方ねぇし、売っちまうか。」


俺は近くに即売所があると聞いて駆け込んだ。


「いらっしゃい!今日はなんの御用で?」


受付のおじさんに先ほどの角を売りたいと差し出す。


「おおー!これは珍しい、サンダードラゴニックの雷角じゃねぇか!こいつなら、傷はあるが5000000J(ジュエル)で買い取るぜ?」


俺は500万Jと言う大金に目を見開いているナディーを見て言う。


「これって、そんなにすげぇのか?」


「凄いどころじゃない…傷ありでも…珍しい…過去最高値…」


「マジか!俺、こっちの感覚よくわかんねぇから、実感なかったぜ…」


俺は即断で角を売った。


おじさんがおまけとして、調合薬をありったけくれた。


「えらく、気前のいい爺さんだったな。調合薬もこんなに貰っちまってよ…」


ナディーが嬉しそうに言う。


「それだけ…凄い物…持ってたって事…まだ足りないくらい上質(ハイクオリティ)…」


ナディーと俺で溢れそうな調合薬の山を持って歩いてると、アルスに会ったのでアルスのバッグに調合薬の山を押し込んだ。


アルスは重たそうにしていたが、まだ寄る所があるらしく、何処かへと去って行った。


冒険者のバッグはギルドで至急されているらしく、何でも入ってとても便利なのだと言う。


俺はナディーとギルドへ向かう事にした。


「ナディー…ギルドの場所…案内する…」


ナディーが俺の手を引っ張ってギルドに向かう。



「いらっしゃい!あら?ナディーちゃん、久しぶりね!元気にしてた?」


受付のお姉さんがナディーを見てにこやかに言う。


「ナディーたち…リアのパーティー…なった…新しい…冒険者する…バッグ…取りに来た…リア…バッグない…」


「あら?そうなのね!だったら、リアさんにサインだけしてもらうわね。」


お姉さんが俺にバッグとリングを手渡しながら言う。


「はい。この書類にあなたの名前を書いてね。それと今渡したのは新しく作ったコミュニティリングと大きさを自在に変えれる冒険者のポーチよ。ナディーちゃんたちのは既に更新データを送っておいたから、後で確認してね。」


ナディーが嬉しそうに言う。


「フフッ…リアとナディーたち…パーティー…ナディー…満足…」


「うふふ。それなら、良かったわ♪それじゃあ、気をつけて行ってね!」


「うん。バイバイ…」


そうして、俺たちはギルドから出て俺の武器を買う為に武器屋による。


「いらっしゃい!今日はこの国王様がお使いになられた伝説の刀、不知火が250Jでご購入頂けますよ!」


俺はナディーの勧めでそれを購入する。


秘刀:不知火は魔力を向上させる能力があり、魔剣士を志す者にとってはまさに喉から手が出る程の代物で、さらに国王様が使った物となれば、プレミアムがつくので、本来なら50000000Jは下らないであろう値がつくという。


そんな代物をたったの250Jで手に入れられたのはまさに砂漠で砂金を見つけた様なものらしい。


「そんな代物を手に入れちまうなんてな…まあ、国の管理している施設なので潰れる事は無いとは言ってたが…」


「ナディー…リアの心配する…気持ちわかる…国の施設は潰れない…唯一の武器屋…無くなると…ナディーたち…冒険者…困る…とても…困る…」


ナディーが俺にべったりとくっついたままで嬉しそうに尻尾を振りながら言う。


「なるほどな。冒険者にとって武器は大事って事だな…」


「うん…ナディーにとっても…リアにとっても…大事…」


ナディーが近くの施設を指を指して言う。


「あの宿で少し寝る…ナディー…オススメ…寝心地…最高…」


俺はそう言いながらも離れようとしないナディーの様子を見て宿で休息をとることにした。


中に入り、受付を済ませ、部屋に入る。


「日本の高級旅館みたいだな…」


畳張りの部屋に、なんかよくわからない掛軸に、襖付きの部屋だった。


お風呂場を見てみるとまさに日本の銭湯って感じの内装で富士山らしき山が描かれていた。


「この絵…異世界人(ニホンジン)…描いたって噂…160年程前…召喚した…画家らしい…」


俺はやはりなと思いながらナディーの解説を聞く。


「なるほどな…って、何でナディーはもう服を脱いでるんだ?」


「リア…お風呂…入ると思った…違うの?」


「後で入ろうとはしてたけど…まあ、せっかくだし、一緒に入るとするか。」


俺たちは一緒に風呂に入る。


ナディーがやたら背中を流そうとしてくれたが、自分で洗えるからと断わった。


「ナディー…少し…残念…しょぼん…」


ナディーが尻尾を垂れて少し寂しそうに言う。


「ナディーにとっては俺と風呂が入れて、嬉しいんじゃないのか?乙女心って複雑だなぁ…」


俺はそんな事を呟きながら、湯に浸かる。


ナディーが猫族(ケットシー)なのにお湯に浸かるなんて珍しいと嬉しそうに言っていたが、俺は風呂に入るのは好きだ。


身体の芯から温まるし、血行も良くなって疲れはとれるしで俺にとってはまさに調合薬に浸かる様なものだ。


風呂とはまさに神が人に与えし、地上の楽園だと思う。


それになんだか意識がふわふわするし…





一方、その頃リルラは…


「おおー!サンダーソードとは珍しい物ですねっ!バキュラ、あれを買ってください!」


リルラが嬉しそうに地獄之鎌(50000J)を指さして言う。


「馬鹿かお前は!あんな上質(ハイクオリティ)な物なんて俺でも買えないんだぞ?!」


バキュラがアホみたいにでかい声でリルラに食いつく様に言う。


「良いから、買ってください!お金ならここに…」


リルラはそう言って、ポーチを探るが無い!無い!と喚いていた。


「ここに入れてたはずのお金が全く無いですー…バキュラ、宿泊費どうしましょう…一文無しですよぉ…」


「仕方あるまい、そこら辺の空き地で寝るしか無かろう?」


バキュラは当然だと言わんがばかりに言って空き地を探し始める。


「ほ、ほんとに路上で寝てしまうのですか?!あぁ…待ってください!私も一緒に寝ますー!」


バキュラはお前が居ると楽に寝れないなと思いながら、夜を待つことになるのだった。





うちは今、酒場に居た。


「お?嬢ちゃん、また気やがったな?一杯やってくかい?」


無精髭の酒場のマスターが嬉しそうに笑いながら言う。


「今日は遠慮しとくぜ。一応、今はうちも仕事中だからな。」


うちはマスターにそう言って、掲示板を見る。


「やっぱ、出てねぇよなぁ…」


うちが見ていたのはクエストボードの平原之悪魔(グランドサタン)の討伐クエスト(報酬金:15000000J)のZ級クエストの依頼書だった。


クエストにはF~Zの難易度があって、一番低いのはF級で通常はA級が一番高く、それより危険なクエストはS級、さらに危険なクエストにはZ級、さらにさらに危険なクエストには50年クエストと呼ばれる何年もクリア出来る者が居ないクエストになる。


〜年クエストになると流石に国王の許可が無いと受注すら出来ない難易度である。


その報酬額は100000000Jを下回る事はまず無いそうだ。


平原之悪魔は平原の夜の悪魔とは別物で主に土の魔法を使う魔王種の一種で、冒険者のクラスでは最強クラスのS級冒険者でさえ、8人がかりで立ち向かわないと倒せないと言われているほど、強力かつ凶暴なまさに巨悪の根源とも言える力を持っているのだ。


「あぁ、嬢ちゃんの親父さんはあいつに殺されちまったんだったな…」


「うん…だから、うちはもっともっと強くなって、あいつを倒さなくちゃいけないんだ…」


うちはその為にただひたすらに戦う事を決めたんだ。


いつか、あの猫をも超えて強くなるためにパーティーに入ったんだ。


それがうちの使命なんだ…


うちは酒場を出て街の中へと消える…





気がつくと辺りは夜の闇に包まれていた。


俺は風呂に入ってたはずなんだが気がついたら、裸のままでベッドにナディーと寝ていた。


「さみぃ…とりあえず、服着るか…」


俺はそう言って、部屋のタンスにあったダボついたシャツを着て、あっちで使っていたトランクスを履く。


そして、ジャージのズボンを履いて羽織(ジャージ)を着ようと思ったが、ふと気づく。


「そう言えば、ナディーのやつ、服着てなかったよな…ジャージ貸してやるか…」


俺は余計なお世話と知りつつもナディーの身体を起こしてジャージを着せる。


「うん。これで身体も冷えねぇだろうし、大丈夫だろ。」


俺がそう呟いたところで、ナディーがむにゃむにゃと寝ぼけ眼で言う。


「う~ん…それは駄目…むにゃ…」


「おーい!ナディーさーん?おきてくださーい。おーきーてーくーだーさーーい!」


俺が耳元で言うとナディーが眠そうに目を擦りながら起きる。


「…リア…おはよう…?」


「おはよう。出る準備するぞ。クラリスの長城まで行かないといけねぇんだからよ。」


「…リアの服…いい匂い…ナディー…幸せ…」


そう言いつつ、ナディーは脱ぎっぱなししていた服をバッグにしまう。


俺もポーチに脱いだ服と財布を入れて腰につける。





俺たちが街の門に着いた時には皆集まっていた。


「待たせたな。それじゃ、クラリスの長城まで行くぞ!」


俺たちはクラリスの長城を目指して街を出る。


その先に強敵が待ち受けていたなんて、この時は誰も思わなかった。


それほど、穏やかで静かな風が吹いていたのだ…


とてもあんな敵が居るなんて思えないくらいの静けさだった…

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― 新着の感想 ―
[一言] 恐らく作者が少しくどいと感じるくらいの描写が最適 服装や髪色などにももう少し細かく言及すると読者の頭の中にその登場人物のイメージが出来上がり、読みやすくなる。
[良い点] 作者の頭の中で登場人物の設定がしっかり考えられている点。 [気になる点] 登場人物の設定が長すぎる点。よほど読者がこの文章に興味を持っていない限り読む気にはなれない。読者に設定を伝えたいな…
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