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異世界は突然に!


「突然ですが、私は死神です。あなたが今日、死ぬのを防ぎに来ました。」


突然、引き篭もりの俺の前に死神を名乗るちんちくりんな少女が現れて言う。


「…は?」


俺は全く意味がわからなかった。


「だーかーらー!あなたが今日、事故死するのを防ぎに来たんですよ!」


少女が聞こえてなかったのかと言いたげに声を大きくして言う。


「あのなぁ…俺は一人暮らしでそのうえ、引き篭もりなんだぞ?そして、なんて言ってもホームワーカーだし、何で俺が事故死するんだよ。こんな大通りから外れた場所で車が突っ込んでくる訳もねぇし、この家だって、まだ建ててから四年しか経ってねぇんだぞ?漏電火災が発生するにしても、壊れてる所なんて何処にもねぇし、この家はオール電化住宅だから、ガスに引火して爆発するとかもしねぇんだよ。」


俺は捲し立てる様に早口で言いきる。


「その余裕が死を招いてしまうんですよ!良いですか?これから、私が言うまで絶対に玄関に近寄らないでくださいね!言う通りにしないと本当に死んでしまいますからねっ!あてっ!」


俺は少女が言い切るのと同時に少女の頭に軽くチョップする。


「ここは俺の家だっつぅの!なんで俺が起こる訳もない事の為にお前に従わなければならないんだよ。それに、お前みたいなちんちくりんなガキが大の男の家に来るもんじゃねぇよ。」


俺は暴れる少女をつまみ上げて玄関に向かう。


「いや、ちょっ!服が伸びてしまいます!て言うか!そっちはダメですってば!本当に死んでしまうんですよっ?!」

「はいはい。死神ごっこなら、他所でやってくれ。」


俺がそう言いながら玄関のドアを開けた瞬間…


「あぁぁぁぁぁぁっ!」




気がつけば俺は暗闇の世界に居た。


「なんだここ…」


暗闇に声が響く…


「ここは狭間の世界です。あなたは死んでしまったんですよ。」


先程の少女が俺の前に現れる。


「はぁ…またそれか?いいから、早く元通りにしろよ。俺にはまだ仕事もあるんだよ。」


少女が首を振りながら言う。


「それは出来ません。あなたは死んでしまったんです。いくら、私が生命を司る死神と言えど、死者を蘇らせることは出来ません。」

「ふざけんなよ?いくらお前がちんちくりんなガキでもそろそろ怒るぞ?」


俺が少しキレ気味に言うと少女が真面目な顔で真っ直ぐ俺の目を見て言う。


「本当なんです。あなたはあの時、私を追い出そうと玄関の戸を開けました。そこに一台の大きなトラックが突っ込んできたのです。その衝撃であなたは即死でした。家は半壊し、あなたが仕事場として使っていたあのお部屋は何とか持ち堪えていました。私があなたを止められなかったがばかりにこんな事になってしまったんです…ごめんなさい…」


最後の方には泣きそうになりながら、頭を下げる始末だ。

あまりの必死さに俺は少し冷静に考えてみる。


そうだ…あの時、玄関を開けた俺の前にあったもの…

俺を目がけて進む鉄の塊…


「わかった。とりあえず、お前の話は信じてやる。だから、頭上げな。」


俺は出来るだけ優しく言う。


「ほんとですか…ほんとに信じてもらえるんですか?」


少女が顔を上げて目に涙を浮かべた状態で震える声で言う。


「お前が信じろって言ったんだろ?それともなんだ?今更、ウソでしたとか言うんじゃねぇだろうな?そんな事になったら、今度こそ俺は怒るけどな。」


俺が真面目な顔でそう言うと少女は少し涙目のまま言う。


「そのような事は決してございません!死神として、嘘は吐いてないと誓いますっ!」

「ふっ…ほんとに、死んじまうなんてなぁ…情けねぇ…」


俺が遠くを見る様な表情で言うと少女が「ごめんなさい」と俯いて言う。


「んや、俺が死ぬ訳ねぇってお前の言う事を聞かなかったからだ。お前は悪くねぇよ。」


俺は俯いたままの少女の頭を撫でて顔を上げさせる。


「でもよ、俺、これからどうなっちまうんだ?生き返れねぇんだろ?やっぱ、あの世とか行っちまうのか?」


俺がそう言うと少女が少し考える様にして言う。


「そうですね…ちょっと待っててもらえますか?異界の同僚に相談してみます。」


少女は涙を拭きながらそう言うと俺の前から消える。


「…ほんとに死んじまったんだな…俺…」


暗闇に俺の声が虚しく響く。


しばらくして、少女が嬉しそうに戻って来て言う。


「聞いてください!あなたに新しい名前と贈物(プレゼント)をつけると言うビックサービスつきで、なんと!」

「なんと?」

「ビックリしちゃうと思いますけど…!」

「なんだよ、もったいぶらずに教えろよ。」

「驚かないでくださいよ?」

「驚かねぇから早く教えてくれよ。」


次の瞬間、少女が驚きの一言を放つ。


「なんと!異世界に転生しちゃいますっ!」


しばらくの沈黙が場を支配する。


そして、俺の脳がそれを理解した瞬間…


「い、異世界に転生するだとぉ?!え?俺が?何でだ?!おおおっ?!」

「だから、驚かないでくださいよって言ったじゃないですか!」

「いやいやいやいや、これで驚くなってむちゃくちゃだろ!たくっ…心臓止まるかと思ったぜ…あ、もう止まって死んでたか…」


少しの間が空いて落ち着きを取り戻したところで、本題に入る。


「でもよ?なんだって、俺が異世界に転生する事になったんだよ?しかも、新しい名前やら、プレゼントやら、なんか凄いオマケもついてるし。もしかして、結構やばい世界だったりすんのか?」


俺が少女にそう尋ねると、少女は少しだけ言いにくそうにしながら言う。


「実は今その世界は邪悪な魔王とドラゴンによって世界の殆どが支配されている世界なんです。そこで、僅かな土地に残った人々の願いを聞き入れて、何とかして、世界を救う希望の光を与えようと考えたそうです。その希望の光となるのが私たちです。」


俺はなるほどなと頷きながら聞いていたが、一つの疑問が湧いた。


「アレ?でも、お前、今、私たちって言わなかったか?」


少女が不思議そうに首をかしげながら言う。


「えぇ…そうですよ?」

「俺とお前だよな?」


俺は自分と少女を交互に指さして言う。


「はい。私とあなたですよ。」

「俺は別に良いとして、なんでお前もなんだ?」


俺がそう聞くと少女は理解した様子で苦笑いして言う。


「つい勢いづいてしまいまして…」

「あー…納得した。」

「どう言う意味ですか?!」

「気にしたら負けだ。とりあえず、お前の名前と俺のは…新しい名前でいいのか?」


俺がそう尋ねると少女はハッと気づいた様に言う。


「はわっ?!そう言えば、私、まだ自己紹介してませんでした!」


また沈黙が場を支配する。


「まあ、良いや。とりあえず、俺はリアだ。元の名前の竜胆(リンドウ)灰鳥(アスカ)からリアだ。」

「私はリリア・ヘルライトから、リルラと申します。リアさん、よろしくお願いしますね。」


丁寧にお辞儀をするリルラに俺は笑いながら言う。


「おう、よろしく!リルラ、俺の事はリアって呼びな。敬語も無しだ。俺は堅苦しいのが苦手だからさ。」

「なら、二人きりの時はそうさせてもらうね。」

「お前たち、そろそろわしの世界に連れて行っても良いか?」


少し年老いた女性の声が響く。


「はい!レグラス様!準備出来ましたよ!」

「では、連れていく前にひとつだけ聞いておくぞ。お前たちは何を望むのじゃ?」


リルラが元気よく言う。


「はい!私は死神なので、死の魔法とか使ってみたいです!」

「リリアはアホじゃから、剣士の方がよっぽど向いておるぞ?それこそ、死神とらしいカッコイイ鎌とか、闇の斬撃を飛ばしたりなんて出来るのじゃが、本当に良いのか?」


リルラは俺を見て即答した。


「やっぱり、私、剣士になります!」

「チョロ過ぎかっ!」


俺がそう突っ込むとリルラは何故か嬉しそうにニコニコと笑っていた。

褒めてるつもりは無いんだがなぁ…まあ、良いや。


「俺は魔剣士とかなれるなら、そっちの方が良いのだが…レグラスさんよ、それはダメかい?」

「いや、全然大丈夫じゃ。お前は頭も良いしのぅ!」


リルラが何か言いたそうにしていたが、レグラスが既に詠唱を始めていた。

足元に不思議な力が集まって俺たちの身体を包み込む。

そして、視界が真っ白に染まる。



目を開けてみると、広大な草原が広がっていた。

俺はいつもの様に立とうとして、身体に変な違和感を感じた。

気になって、身体を撫で回していると、レグラスの声が聞こえた。


「ハッハッハ!お前の身体をわしの好みにいじらせてもらったぞ。リリアはいじらせてくれなかったのでなっ!」

「いやいや、勝手にいじんなよっ!まあ、いいや。」


改めて姿の変わった自分の顔を見てみると、なんか狐みたいな大きな耳が頭から生えてて、近くの水辺に映った顔も心なしか女の子っぽくなってた。

後ろは猫みたいな細い尻尾が生えていた。

最後に、身体を見てみると、なんか胸に男らしからぬ、膨らみがあった。

念の為にアレの在処を確認したが、あるべきブツが無かった。


「レグラスさん…まさかとは思うけど…」

「グッジョブ!リアちゃんっ!」


そう言うとレグラスが消えた様な感覚がした。


「レグラスのヤロー!今度あったら、ぜってぇぶっ飛ばす!姿見てねぇけど!」


俺が?そう意気込んでいるとでかい鎌を担いでる少女が駆け寄ってきた。


「すみません。この辺りでリアって言う人を見ませんでしたか?」

「あ?リアは俺だが、お前もレグラスの知り合いか?」


少女は驚いた様に目を見開いて言う。


「え?!あなた、ほんとにあのリアなの?!女の子みたいになってるんだけど?!」

「って事は、お前はリルラか?あっちに居た時はわかんなかったが、思った通り、綺麗な絶壁だな。見直したぞ。」

「お前の胸もぎ取るぞっ!」

「口調変わり過ぎだろ!」


俺たちがそんな漫才をしていると遠くから子供(?)がこちらに向かって走りながら言う。


「助けて〜!ドラゴンが〜、侵略してきたよ〜!」


俺はリルラと顔を合わせて言う。


「おっしゃ!最初の仕事だぜ!リルラ、行くぞ!」

「それはいいんですけど、リアは剣は何処へ置いてきたのですか?」


俺はそう言われるとと思ったが、刀の様なものをイメージしながら魔力らしき力を使うと…

しゃきんっ!とまるでキー〇レードが出てくる時の効果音みたいな音と共に闇色の刀が俺の手に現れる。


「こいつで斬れば問題なかろう?」


ニヤリとリルラの目を見る。


「ふふっ…そうですねっ!」


俺とリルラはドラゴンがいると思われる方向に向かって走る。

少しすると俺は嫌な予感がして止まれとリルラに言う。


「何よ。今更、怖気付いちゃったわけ?」

「リルラ!避けろっ!上だ!」


空からドラゴンが雷のブレスを吐きながら俺とリルラが居た場所に降りてくる。


「サンダードラゴン…と言ったところか…」


俺はそう呟いてドラゴンに向けて一直線に駆ける。


「ぎゃあ!ぎゃおー!」


ドラゴンもブレスで応戦するが、俺は長年ゲームとアニメで鍛えてきた妄想を忠実に再現して攻撃を避けながらドラゴンの足に斬り込む!


「ぎゃああああ!ぐるるぎゃおー!」


ドラゴンが痛みに悶えてよろけながら俺の方に向く。


「チャンスですねっ!シャドースライサー!」


いつの間にかドラゴンの目の前に現れたリルラの鎌から黒い斬撃が発生し、ドラゴンの角を叩き斬る。


「ぐるるっ!ぎゃおー!」


角を折られたことによってドラゴンが激昴して(イカヅチ)を全身に纏わせる。

俺はアニメで見た知識を応用して、魔力を高めながらより具体的に(イメージ)する為に詠唱をする。


「一気に決めるぜ!爆ぜろ大地の(ツルギ)よ!我が眼前(ガンゼン)の敵を貫け!」


俺の周りに土の力を感じた。

俺はさらにそこに闇の力を意識してみる。

闇と土の力が混ざった感覚がした。


「そして、覚めぬ悪夢の中で死を見るが良い!ナイトメアグラビトンソード!」


闇色の大地の剣が出現し、飛び退こうとしたドラゴンをずたずたに引き裂く!


「ぎゃああああ!」


ドラゴンが鮮血を巻き散らせながら断末魔をあげて絶命し、その死体が地を揺らす。


「ふぅ…何とか、勝てましたね。」


リルラが安心した様子で俺に言う。


「まあ、俺の引き篭もり生活で培ってきた知識が役に立って良かったよ。いやぁ、外の世界って怖いね。」


俺が空を見ながら、リルラと笑っていると…


「情報によれば、この先にサンダードラゴニックがいますよ!」


距離はかなり遠い様子だったが、かなり速い速度で移動している様だ。

おそらく、秒速300m…ほぼ音速だ。


「なんか、やばい速度でやって来てるやつが居るんだが?どうするよ?」


俺は別に逃げるにしても、この場にいるにしてもどっちでも良かったが…


「んー、相手がこちら側っぽかったら、街か村に案内してもらおうよ。私、お腹すいてさ…」

「そう言えば、俺も朝飯食ってねぇからなぁ…てか、こいつ、食えねぇのかな…」


俺はそう言って適当に地面に刺さってた奴の角を引き抜いて齧ってみる。


「…硬ぇ。」

「いや、そりゃ、そうでしょうよ!」


俺がリルラを見ながら言うとリルラに突っ込まれた。


「うん。お前、漫才の才能あるぞ。」

「いやいや、私たちがやらなければならないのはこの世界を救う事なんですからね?!漫才じゃないですからね!!」


俺のボケに凄い勢いで突っ込むリルラの後ろから火の玉が飛んできた。

火の玉はリルラの真横スレスレを通り抜けてリアの背後の木に当たって爆裂する。

跡形すら残ってない木の跡を見てリルラが言う。


「ひっ!」

「いや、火なのは分かってる。」

「そうじゃなくて!あー!もうっ!」


俺たちは続く奇襲がないか当たりを見回して警戒する。


「リルラ、7時の方向から火球が500、510、520と3発、3時と9時から雷球が525の2発だ。そっちは頼んだぜ!」

「任せて!私が華麗にぶっ壊してあげましょう!W.Dシャドースライサー!」


リルラの振り下ろした鎌から二つの闇の斬撃が発生し、大地を砕きながら、突き進んでいき、火球にぶつかり爆裂して相殺する。


「からのっ!シャドーフレアスラッシュ!」


先程と同じように振り下ろした鎌から闇色の炎の斬撃が大地を砕きながら、突き進み火球を破壊する。


「おいおい、もっとスマートに出来ねぇのかよ…たっく…ナノスライサー!」


俺が手を振り払うと同時に無数の風の刃が飛んで行く。

俺のでかい耳が遠くの声を拾う。


「おい!レイチェル!話が違うぞ!どうなってやがる!」


野太い男の声の様だ。


「知らねぇよ!ラフィーがサンダードラゴニックだって言ってたんだからよ!」


口調こそ、男勝りだが、声は女の様だった。


「すみません。どうやら、今のは二人の人形(ヒューマノイド)みたいです。私は一時撤退します。」


小さな少女の声が聞こえる。

一人の足音が遠ざかるのを確認する。

俺は相手はこちら側の人ではないかとリルラに言う。


「なるほど…なら、迂闊に反撃しない方が良さそうね。様子を見てみようか?」


俺はリルラと背中合わせになって言う。


「一応…な…どうなるかはわかんねぇから警戒は怠るなよ?」


俺たちは見えない相手を待ち構えていた…

超速の何者かが飛び込んで来るまで…

読者様からの要望で2019/05/11に戦闘描写を詳しくしました。

追加で少し書き方を最近のものに合わせ、内容を若干変更しました。

この先の物語には変化はありません。

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