最弱の剣
※最初のほうは百合はありません
十剣物語 第1話
【1】
「俺は、お前が欲しい」
高校から帰る途中、俺は長髪イケメンに告白された。
冗談じゃない。俺は男だ。そんな趣味はない。
男に告白されて、OKを出せるはずがない。
「お断りします」と言いたかったが、唇がふるえて声が出ない。
なぜかって?
イケメンの右手には、刀がにぎられていたからだ。
そう、時代劇とかでよく見かける、あの刀だ。
夕焼けの赤い光をあびて、不気味に光るその刀は、いままで幾人もの血を吸ってきたのだろうか。
模造刀には見えない。ガチだ。本物の刀だ…。
もし告白を断ろうものなら、その刀でバッサリと…。おそろしい。声もでない。
「どうした? 返事をしろ」
イケメンは、一歩、二歩、と俺に近づいてくる。
俺は、一歩、二歩、とあとずさる。
周囲には誰もいない。助けてくれる人もいない。
絶対絶命のピンチ。どうしてこうなった。
俺はただの男子高校生なのに。
イケメン通り魔の餌食になるなんて、ほんの数分前まで考えたこともなかった。
ここで、人生が終わってしまうのか…。まだやりのこしたことは、いっぱいある。
くそ、死んでたまるか!
そのとき、どこからか女の声がした。
「和平! 帰りが遅いと思ったら、こんなところで道草をしていたのね」
通りの角から、少女が現れた。
少女は、怒った顔をしている。
そういえば、17時までに帰る約束をしていたが、いろいろあって1時間も遅れてしまった。
「あ、愛純…」
俺は、震える声で、少女の名を呼ぶ。
たすけてくれ、と言いたかったが、これ以上、口が動かない。
「和平、そこの男の人は誰?
…って、か、刀!? うそっ!?」
刀を持ったイケメンを見て、愛純の顔が、驚きの表情になる。
イケメンが愛純の姿に気づき、愛純に視線を向ける。
「…邪魔が入ったな。ふっ。今日はこれくらいにしといてやろう」
キザな感じで笑うと、イケメンは刀をおさめ、悠然と立ち去っていった。
【2】
「愛純、ありがとう。助かったよ」
「何があったの?」
「俺が聞きたいくらいだ。帰り道を歩いてたら、急にイケメンに声をかけられて
『俺はお前が欲しい』とか言われてしまって、刀で脅されるし、ワケがわからない」
「へ、へぇ……。たいへんな目にあったのね」
愛純は、俺の横から、少しだけ離れた。気まずそうな顔をしている。
なぜ離れる。なぜ引く。俺は被害者だし、そういう趣味もない。
「お、おい。何はなれてるんだよ。俺は、ただ事実を話しただけだ」
「あはは。冗談よ冗談。
さて、冗談はさておき、和平。
あなたに話したいことがあるの」
「話したいこと?」
「うん」
「なんだよ」
「私も、あなたが欲しいの」
「は?」
突然の告白に、俺は声が出なかった。
何を言っているんだ、こいつは。
仮にも、俺と愛純は双子なのに。気持ち悪い。OKするわけがないだろ!
「なんだよ、愛純まで。気持ち悪いぞ。冗談はよせ」
「くすくすくす」
なんで笑う。笑ってごまかすつもりか。
うーむ。前から変な奴だと思ってたけど、ついに頭のネジがいかれたか。
「詳しくは、帰ってから話すね。和平。大事なことだから」
【3】
自宅に帰った俺と愛純。
さっそく、愛純が真剣な表情で、話を切り出してきた。
「あのね、和平。あなたは狙われているのよ」
「狙われている? なんで?」
「あなたの身体に大事なものがついているからよ」
「俺の身体の大事なもの…」
俺の身体の大事なもの? 知らんがな。股の間しかないではないか。
「あ、でも、お●んちんのことじゃないよ?」
「おいこら」
愛純はさらっと、規制音の入りそうなセリフを吐く。
俺はすかさず突っ込みを入れておいた。
「ここだよ」
愛純の小さな手が、俺の手をぎゅっとにぎってくる。
お、おい。いきなりなんで手をにぎるんだ。
恥ずかしいので、愛純の手を、はらいのける。
「い、い、いきなり何をするんだよ。俺の手が、なんで大事なものなんだよ」
「和平。私たちの住むこの島に、『十剣の伝説』があるって聞いたことあるよね?」
「…知ってるよ。郷土史の片隅にちょろっと載ってたな。
十本の剣を集めると願いが叶うんだろ? うそくせー話だな」
「嘘なんかじゃないよ。
その十本の剣のうちのひとつは、あなたが持ってるんだし」
「……なんだよ、それ。俺は剣なんて持ってないよ」
「だから、さっき、にぎったでしょ。手。その手が、あなたの剣なのよ」
「どういうことだよ」
「手刀…。それがあなたの持つ剣の名前よ」
【4】
「あっはっはっは! 手刀だって? なんで手刀が剣なんだよ。
おかしいだろ! 切れ味もないし、ただの空手チョップじゃないか」
また、愛純のタチの悪い冗談が始まったぞ。
俺の手を剣に見立てて、手刀とか言いやがった。
だいたい、手刀とか、何も切れないだろ。変なことを言うな。
「残念だけど、本当よ。
当真家…つまり私たちの家系の男子で16歳になるものは、
ごくまれに手刀を持つことがあるの」
「……そんな話、聞いたことないぞ」
「そうだよね。私も最近知ったばかりなの」
「信じられないな」
「嘘じゃないよ。だって、今日、イケメンに告白されたでしょ」
「そ、それは…」
「イケメンさんは、和平の手刀を狙ってたんじゃないの?
『俺はお前が欲しい』とか言ってたんでしょ」
「狙うって…。だいたい、手刀なんて、どうやって狙うんだよ。
人体とくっついてるんだぜ?」
「人体から切り離せばいいじゃない。手刀を」
「うっ…マジかよ。
もしかして、あのイケメン、刀で、俺の手首を切り…」
そこまで言いかけて、ぞっとした。
手刀は、腕から離れようがない。奪うとしたら、切り離すしかない。
マジかよ。手が、手首から離れた状態って、どんな気分なんだろう。
痛い、では済まないと思う。
「怖いでしょ?
そうならないように、私が守ってあげる」
「守るって、どうやって」
刀を持った相手に、女の子ひとりで、どうやって俺を守るというのだろう。
愛純は剣などというものは持っていない。エプロンの似合う、ただの料理好きな女の子だ。
あまりに無謀な戦いのように思える。
「……これで、和平を守ってみせる」
愛純は、どこからか、包丁を取り出すと、俺の目の前にちらつかせた。
【5】
愛純は、包丁で、日本刀に勝つつもりでいるらしい。
嘘じゃない。目がマジだ。長年一緒に過ごしてきたからわかる。
このとき俺は、怒りも、悲しみも、あきれも通り越し、無の境地にいたっていたのかもしれない。
なんというか、いろいろなことが起こりすぎて、逆に冷静になってきた。
「愛純。包丁で刀を持った相手を倒せるのか…?」
「大丈夫だよ」
「どこが大丈夫なんだよ」
「この包丁は、普通の包丁と違うよ」
「どう見ても普通の包丁にしか見えないが」
愛純の包丁は、料理でよく使う、一般的な包丁だ。
主婦(または主夫)が持っていてもおかしくない。
「何を隠そう、この包丁はね、十剣のうちの一つなんだよ」
「なんで包丁が『剣』なんだよ…。おかしいだろ」
「おかしいでしょ。でも、れっきとした剣なんだよ。
十剣というのは、昔は普通の剣だったけど、年数を経るにつれて、どんどん名前や形を変えてきたの。
剣だって寿命があるからね。さびるし。
この包丁だって、もとはかっこいい『剣』だったんだから」
「そ、そうか…」
愛純の言うことを半信半疑で聞く。
もう何を言われても驚かないぞ。
「和平の手刀も、もともとはかっこいい刀だったと思うよ。たぶん」
「……それはいいけど、本当に包丁で俺を守れるのか?」
「大丈夫だよ。この包丁は毎日料理に使っているから、使い慣れてるよ」
「料理と戦闘行為は別物だと思うんだけど…」
「細かいことを気にしてると、ハゲるよ!」
「うるさい! ハゲ言うな!」
「さて、ハゲないように、おいしい料理を食べましょうね。
夕食、もうできてるから。持ってくるね」
そう言って、愛純はイスから立ち上がり、キッチンのほうへ向かっていく。
「今日の夕食はなんすか」
「今日は、カレーだよ♪」
にっこり笑いながら、愛純は、カレーの入った鍋のフタをあける。
「きゃああああああ!?」
キッチン中に響き渡る、愛純の悲鳴。
何があった? 俺は、愛純の隣に駆け寄る。
【6】
「どうした、愛純!」
「わ、和平…! これ見て、これ」
そう言って、愛純は鍋の中を指差す。
『当真和平。お前が欲しい。今夜中にお前を頂く。
ついでに、カレーも欲しいので、先に頂いておいた。満腹だ。
日本刀の達人 by佐藤隆弘』
鍋の中には、カレーの液体で、そう書かれていた。
きっと、俺を襲ったイケメンが、カレーを食したあと、残ったカレーで文字を書いたんだろう。
器用な真似をするものだ。
っていうか、どうやって、俺の家に侵入した!?
…知らないうちに、俺の個人情報を調べられているのだろうか。怖い。ストーカーだ。
「和平! これはきっと、果たし状よ。
日本刀の達人、佐藤隆弘…! こいつが、さっきのイケメン通り魔ね」
「……なんか頭が痛くなってきた。
イケメンに襲われるし、俺の手が手刀だし、愛純の武器が包丁だし、
夕食のカレーを食われるし、今夜またイケメンに襲われるし」
頭を手でおさえる。ずきっとした鋭い痛みが、やがてじわじわと広がっていくのを感じる。
もう、今日起きたことをふりかえるだけで、本当に頭が痛くなってきた。
今日はなんなんだ。厄日だ。災難だ。
ピンポーン。
頭を抱えていると、玄関のベルが鳴った。
誰だろう。また変な奴が来たんじゃないだろうな。カンベンしてほしい。
今日はもうお腹いっぱいです。
「誰だよ、こんな時間に。また変な奴が来たら最悪だ」
「もしかして、佐藤隆弘さんかな?」
「バカ言うな。まだ夜じゃないだろ」
「私が開けてくるね」
愛純はエプロン姿のまま、ゆっくりと玄関ドアを開ける。
「どちらさまですかー?」
「佐藤隆弘です」
【7】
愛純が玄関ドアを開けると、そこには、さっき俺を襲ったイケメン――佐藤隆弘がいた。
腰には、日本刀を差している。
佐藤は、黒い長髪を手でかきあげると、愛純と俺を見て、言い放つ。
「くっくっく…。俺は今夜、当真和平を襲うつもりだった。
しかし夜まで我慢できなかった。
たえがたい欲求だ。俺は、今すぐお前が欲しい」
イケメン特有の、耽美な音声を発しながら、俺を指差す。
欲求というのは耐え難いものだが、少しは我慢してほしい。獣じゃないんだから。
「まだ夕方18時30分なんだけど…早すぎない?」
愛純は、携帯電話の時計と、佐藤をチラチラと見比べる。
俺も、来るのが早いと思う。
さっき、カレーの鍋には「今夜来る」みたいなことを書いていたのに。
矛盾している。
「ふっ。予定と異なる行動をとり、相手の心をかく乱させる…。
これも作戦のうちだ」
「本当に作戦なのだろうか…。というか、作戦をばらしてどうする」
「そんなことより、和平。あぶないから、うしろに下がっていて」
愛純は、どこからか包丁を取り出し、佐藤につきつける。
佐藤は、包丁を見ても、微動だにしない。無表情で、包丁の刃先を見つめ続ける。
不動の心というか、さすがに動じない。修羅場をくぐりぬけてきたのだろう。
「和平は渡さない。私のものよ」
いや、俺は愛純のものじゃないから。
「ふっ。気丈なことだな、少女よ。俺を誰だと思っている。
日本刀の達人で、まだ負けたことはない。
素人の包丁など、赤子の手をひねるようなものだ」
佐藤はそう言って、刀の柄に手をかける。
抜刀するつもりだ。俺は恐怖を感じ、うしろにあとずさる。
本当に、愛純の包丁なんかで、俺を守れるのだろうか。
仮にも日本刀の達人相手に、どうやって勝とうというのだろう。
「ごたくはいいから、さっさと刀を抜きなさいよ」
愛純は、自信まんまんの強気な調子で言い放つ。
その自信はどこから来るんだ?
日本刀に、どうやって包丁で勝つんだ?
「ふっ…」
佐藤は、刀の柄をにぎり、そのまますらりと抜く。
まわりが少し暗いなかにも、刀身だけが、きらりと不気味に輝いていた。
「娘よ、後悔するなよ。行くぞ!」
佐藤は、刀を構え、こちらに向けてダッシュしてくる。
佐藤の長髪がゆれる。長髪が風の吹くままに流れていく。
「愛純!」
思わず愛純の名前を叫ぶ。
愛純は、死んでしまうかもしれない。
だって、日本刀と包丁で争い、包丁のほうが勝利するなんて、誰が考えるだろうか。
それでも、他に方法がない以上は、愛純を信じるしかない。
死なないでくれ、愛純――
「えい」
「ぐふっ!?」
愛純の包丁が、佐藤の胸部につきささった。
【8】
勝負は、あっさりとついてしまった。
包丁が勝ち、日本刀が負けた。俺も、何が起きたかよくわからなかった。
気がついたら、佐藤はぶったおれていた。
「単純な切れ味なら、日本刀のほうが強いでしょうけど」
愛純は勝ち誇ったように続ける。
「包丁は投げることができるもんね」
愛純は、包丁を、佐藤に投げつけたのだった。
日本刀がこちらに近づくより前に、包丁を投げ、佐藤を突き刺した。
接近戦になる前に、包丁を投げてカタをつけたのだ。
もし接近戦になれば、愛純は、日本刀で真っ二つだっただろう。
「日本刀、回収っと」
愛純は、倒れている佐藤に近づき、日本刀を拾い上げる。
「おい、愛純。日本刀なんて拾ってどうするんだ?」
「この日本刀は、十剣のうちのひとつよ。
もともとはこの島に伝わる剣だったんだけど、無断で持ち出されて、
島外に保管されてたみたいね」
「そうか」
「それに、十剣を集めると、願い事が叶うって言ったでしょ。
私の包丁と、和平の手刀と、こいつの日本刀で、計3本。
あと7本集めれば、願い事が叶えられるってワケ」
「うーん、願い事が叶うなんて、オカルトすぎて信じられないな」
「信じる・信じないは自由だけど、どうして佐藤が、和平を襲ってきたのか
よく考えたほうがいいわね」
「……」
俺は何も言い返せなかった。
普通、人を襲うということは、たいへん難しいことだ。
返り討ちにあうかもしれないし、警察沙汰になるし、面倒なことになるはずだ。
それだけのリスクを乗り越えて、俺を襲うということは…。
十剣の伝説について、願いごとが叶えられると、信じられているということか。
「それに、剣を十本集めないかぎり、和平はこれからも狙われるのよ?
それでもいいの?」
「それは困る」
「でしょ。だったら、私たちで十本集めるしかないの。
それで、剣を十本集めて、願いごとを叶えるしかないわ!」
「願い事を叶えるって…愛純の願い事だろう?
どんな願い事を叶えるつもりなんだ?」
「うふふ」
愛純は何も答えず、笑ってごまかす。秘密、ってことか。
うーん、こいつはどんな願い事を考えているんだ?
愛純は、双子で、長くつきあっているけど、何かを願っているのを、俺は見たことがない。
「ところでその…佐藤さんはどうしようか。
包丁がつきささったまま倒れているけど、普通、どう見ても殺人事件だよね…」
俺はこのあとのことを考えると、かなり面倒だと思った。
自己防衛のためとはいえ、人間を包丁で突き刺したのだ。
警察や救急車が来るに違いない。
事情聴取もされるに違いない。
なんと弁明すればいいのか。十剣の話を持ち出したところで、信じてもらえるのか。
「あ、それは大丈夫だから。ほら、もうすぐ起き上がるよ」
愛純はあっけらかんと言う。
起き上がる? どういうことだ?
包丁があんなに刺さっていたら、普通は起き上がるはずが…
「うぐぐ……おのれ、よくもやってくれたな」
起き上がっちゃってるよ!
うわ、どうしよう。佐藤は思ったよりタフだった!?
佐藤はフラフラと立ち上がる。足をひきずり、こっちに近づいてくる。ゾンビのように。
「う、うわ! 近寄るな!」
「佐藤隆弘。もう勝負はついているわ。日本刀は、私が回収したし、
これ以上戦っても無意味よ」
「…ふっ。今日は少々、調子が悪かったようだ。また来る」
「ま、また来るって、お前、包丁が刺さっているはずじゃ…」
「ふっ。たしかに包丁は刺さった。だが、俺の胸をよく見てみろ!」
佐藤は、シャツのボタンをすべてはずし、がばっと、裸の胸を見せ付ける。
そこに、包丁は刺さっておらず、どこかへ消えていたし、傷口もない。
え? たしかに包丁が刺さっていたはずだ。俺が見たのは幻だったのか。
「十剣同士の戦いでは、傷口は残らないし、死なない。ダメージは負うがな」
「な、なんだって……」
あまりのことに、俺は口をぱくぱくさせる。
「当真和平よ。
これは生存競争ではなく、願い事を賭けたゲームということだ。
…俺は日本刀を失ったが、いずれ取り戻し、お前をもらう」
「和平は渡さないわ! 和平は私のものよ」
愛純はすかさず、佐藤に反論する。
いや、俺は、愛純のものになったつもりはないんだが…
「ふっ。まあ、この十剣の結末は、神のみぞ知ることだ。
さらばだ。また会おう」
もう会いたくないです。(きっぱり)
佐藤は、シャツの胸ボタンを開けたまま、立ち去っていく。
裸の胸を露出したままなのだが、このまま外に出て、大丈夫なのだろうか。
イケメンなら許されるかもしれない。
考えても仕方ない。佐藤が通報されるかどうかは、神のみぞ知ることだ。
【9】
「明日からは、ずっと和平の側にいてもいい?」
遅い夕食をとっていると、愛純がそう切り出してきた。
「な、なんでだよ…。気持ち悪いから、やめてくれ」
「いいの? 和平の手刀を狙ってくる人たちが、どこにいるのかわからないのよ。
学校かもしれないし、通学路かもしれないし、トイレかもしれないし、お風呂かもしれないよ」
「さすがにトイレやお風呂はおかしいだろ!」
「うふふ」
「…笑ってごまかすな。
俺を守ってくれるのはうれしいけど、プライバシーも守ってくれ」
「ワカッテルワヨー」
「棒読みはやめい!」
まったく、これからどうなるのだろう。
襲ってくるほうも、守ってくれるほうも、変人しかいない。
変なことをされないだろうか。なんだか不安になってきた。
俺は天を仰いで、ぼんやりと天井を見つめるしかなかった。
<続く>