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魔王298円  作者: のこ
9/13

act9.アンマン大変身!

 柚希が戻ってこない。未だせっせと服選びをしている。

 お前のセンスなんてたかが知れてるだろうに。何を迷っているんだか。


「妹さん、何にするか迷ってるみたいですね」


「可愛いのを買うって言ってたんですが、あいつセンスないんで理想と現実の狭間に迷い込んでいるんですよ」


「見てて何となくわかります」


 それはセンスがないことか、それとも理想と現実の狭間で迷っていることか。


「……妹さん、可愛いですね」


「あぁ、見た目はいいですがやめておいた方がいいですよ、暴力女なので。今日も朝に組み伏せられて腕極められましたから。ギブアップしてるのに放してくれない鬼ですし」


「仲がいいんですね」


「人の話聞いてました? 全然仲良くないですよ」


「あはははは」


 あはははは、じゃないよまったく。


「ぎゃうぎゃう」


「ひゃー」


 アンマンもサンドラちゃんも言ってやれ!

 と、二匹を見ると、サンドラちゃんがアンマンをかじっていた。


「おわあああああ何してんのサンドラちゃああああん!」


「あぁすみません! こらっ、サンドラちゃん! 仲良くできない子はオヤツ抜きだよ!」


「ぎゃうぎゅぅ」


 金井さんに叱られたサンドラちゃんはアンマンを放してくれた。


「アンマン無事か!?」


「うぅ、おにいちゃんこわかったよぉ」


 優しくアンマンを掬い上げると、アンマンはブルブルと身を震わせた。

 こんなに震えちゃって。この怖がりさんめ。まぁでも、どこも怪我はなさそうだ。よかったよかった。


「本当に申し訳ありません」


 金井さんが頭を下げて謝ってきた。


「アンマンも怪我はなかったですし大丈夫ですよ。これでお互い様ってことにしましょう。魔王のやったことですから」


 するとすごすごと金井さんは頭をあげてくれた。


「そう言っていただけると助かります。サンドラちゃんには後でしっかり言い聞かせます」


 できた飼い主さんだ。

 サンドラちゃんもしゅんとしている。反省しているようだ。

 俺も帰ったらアンマンに、無暗に暗闇に閉じ込めてはいけませんって叱らないといけないかな。

 くふっ、無暗なのに暗闇だって。


「どうしました?」


「え? あ、いや、何でもないです」


 金井さんは真面目に対応しているのにくだらないことで笑ってる場合じゃないな。


「誠!」


 柚希に名前を呼ばれてそちらを向くと、柚希が手招きしていた。

 どうやら決まったみたいだな。


「一緒に行きますか? 折角ですし試着室で着替えさせるんで変身した姿見れると思いますよ」


「いいんですか!?」


 前のめりですごい食い掛かってきた。

 顔が近い。男に顔を近づけられても嬉しくない。


「行きましょうか。ほら、アンマンも行くぞ」


 まだ手の中で震えているアンマンに声をかける。


「……どこいくの?」


「着替えに行くんだよ」


 うーん、さっきのでテンションが一気に落ちてるな。どうにかしてやらないと。


「ほら、可愛い服が待ってるよ! 俺アンマンの可愛い姿見れたら嬉しいな!」


「……あんまんかわいいと、おにいちゃんうれしいの?」


「あぁすっごい嬉しいぞ!」


「うー、あんまんもかってくれる?」


 またそれかよ!


「わかったわかった買ってあげるよ」


「あんまんあんまん!」


 簡単にテンション上げちゃって。アンマンにとってあんまんは特効薬だな。

 金井さんもアンマンの変わり身に笑ってるよ。


「あはは、アンマンちゃんはあんまんがすごい大好きなんですね。あのときに買ったあんまんもアンマンちゃんが食べたんですかね?」


「そうですよ」


「すぐに大好物がわかっちゃうなんて流石ですね。おっと、早く行きましょう。妹さんが呼んでますよ」


 たまたまわかっただけなんだけどね。

 二人と二匹で柚希のところまで行く。


「何選んだんだ?」


 柚希の掴んでいる物を見ると、そこには子供用の怪獣のキグルミがあった。


「これ絶対可愛い」


「お前なんてもん選んでんだ! こんなの可愛いに決まってんだろ!」


「え?」


 金井さんの疑問の声が聞こえたが、俺と柚希は止らない。

 幼女怪獣とか最高じゃねーか!

 金井さんを置いて、そのまま試着室へ向かう。


「アンマン、可愛くなるんだぞ? ほら柚希!」


 アンマンを柚希に差し出す。

 流石に俺が着替えさせたらまずいからね。

 柚希はアンマンを受け取ると試着室に入ってすぐにカーテンを閉めた。

 だがすぐに開けられた。


「誠、パンツ買ってきて」


 それだけ言ってまたカーテンが閉められた。

 難易度高ぇなおい!

 だがアンマンのためだ! いや俺のためだ!

 女児用下着売り場へ向かう!


「どこ行くんですか?」


「パンツ!」


「え!?」


 途中で追いついた金井さんに一言で目的を言うがうまく伝わっていないようだ。

 だがそんなこと気にしている場合じゃない。急がねば!

 女児用下着売り場に着くと目の前のパンツにとりあえず手を伸ばしたがこれではない。くまさんパンツを履いたアンマンが見たいんじゃない。

 くそっ、どこだ!

 取っては戻して取っては戻してを繰り返していく。

 そして漸く――


「あった! あったぞ!」


 白いパンツにちっちゃなリボン。これだ。

 すぐさまレジに飛び込む。

 店員に変な目で見られても気にしない。

 会計を済ませると試着室まで急いで向かった。


「柚希! 買ってきたぞ!」


 カーテンの隙間から柚希の手が伸びる。

 その手にパンツを託す。


 しばらく中で衣擦れの音が聴こえ、チャックの開閉音が聴こえた。

 とうとうお披露目か!

 ちょうどよく金井さんも到着した。


「もう、青葉さん走り回らないでくださいよ」


「そんなこといいじゃないですか。それよりアンマンの可愛い姿のお披露目ですよ」


 シャーっとカーテンが開かれた。

 現れたのは着慣れないものに身を縮ませている幼女姿のアンマンだった。恥ずかしいのか、チラチラモジモジと俺を見てくる。


「おわああああああああああああああああああ可愛いぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 あまりの可愛さに場所も弁えず大音量で叫んでしまった。

お読みいただきありがとうございます。

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