act13.アンマンのお友達!
そろそろ事件起こさないと(使命感
ど、どういうことだ……。
なぜ俺は今こんな仕打ちを受けているんだ。
おかしい。掴みは完璧だったはずだ。今のガキどもにはこのインパクト重視の掴みはダメだったのか?
これがジェネレーションギャップというやつか。
うぐっ、クソッ!
だがまぁいい。俺のことはいい。アンマンが楽しそうに遊んでいるんだ。それだけで俺は満足だ。ふっ、真っ白に燃え尽きちまったよ。
アンマンはブランコで遊んでいたガキどもと砂場で遊んでいる。ガキどもがブランコを怖がったアンマンに気を使って砂場で遊ぶことを提案したのだ。ホント、よくできたガキどもだ。
俺はそんなアンマンたちを一人ブランコに揺られながら見ている。
ははっ、アンマンの奴楽しそうに笑ってるよ。もうお友達かな。あまり社交的な奴には見えないけど、子ども同士通じるものがあるんだろうか。
山を作ってトンネル開通かい。楽しそうだな、まったく。
「はぁー……お兄ちゃんはテンションだだ下がりだよ」
そんな独り言も誰も聞いていない。数分前とは一転、寂しい奴に成り下がってしまった。今更あの輪には入れない。俺も楽しく遊びたいのに。
いや、この思いは俺だけじゃないはずだ。柚希だってあの輪にいない。ということは柚希だって俺と同じ――って、なんだあの子供を見守るお姉さんみたいな姿は。
柚希は子供たちをベンチに座って見守っていた。母性溢れる眼差しで見守っているように、俺にはそう見える。
俺だけか? 俺だけなのか、惨めな思いをしているのは……。
ダメだ。あの山をぶっ壊してしまおうなんて考えちゃダメだ。楽しそうに遊んでいるアンマンたちに水を差すようなことをするなんて大人のすることじゃない。だがしかし、身体が言うことを聞かない。
身体が勝手に立ち上がり、アンマンたちのいる砂場へ歩み始める。
クソッ! 俺の中の悪魔が、目の前の幸せをぶっ壊せと囁きかける。止まらない。ダメだ! 誰か俺を止めてくれ!
……あぁだけど、あの山をぶっ壊したとき、俺にも仲間ができるんだ。げへ、げへへ、楽しく不幸になろうや、ガキども。
砂場へと到着するとアンマン含め、ガキどもが仁王立ちの俺を注視した。
ふっふっふ、目にもの見せてやる。
足に力を溜め、カッと目を見開き、一気に飛び上がって力の限り叫んだ!
「どあっしゃああああ!!」
アンマンたちが丹精込めて作り上げた山(開通済み)へとフライングボディプレスをかまして――
「ぎゃああああああああああ!!」
山だと思ったら暗闇でしたああああああああああアンマン様ごめんなさああああああああああああい!
そのまま急降下。
これどこまで落ちるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
と思った瞬間、地面に激突した。
つい先ほどの光景だ、少し視線は低いが。砂場のすぐ隣。アンマンとガキどもが俺を見ている。
「てへへ、ちょっとした茶目っ気さ」
「おにいちゃん!」
あぁ怒ってる。
「はい、申し訳ありません。ちょっとした出来心でして、どうかご容赦に願います」
地面に頭を擦り付けての土下座だ。謝るのならばこれしかない。クソッ、俺の中の悪魔のせいで飛んだ大恥だ。
五秒くらい経ったし、そろそろ顔上げていいかなと思ったら頭を何かで押さえつけられた。これは多分、足。
「ねぇ誠、何してるの?」
柚希の声がする。
「お前に踏まれてるんだよ!」
「……何しようとしたの?」
……それ聞いちゃうの?
「いや、それはですね。違うんです。一緒に遊ぼうとしただけなんです。決して砂山をぶっ壊して俺と同じ思いをさせてやるとか考えていませんですはい。だから足に力を込めていくのを止めていただけませんか?」
結構めり込んでるよ? めっちゃ痛いよ?
「おねえちゃん」
アンマンの声が聞こえて柚希の足がどけられた。毎度アンマンには助けられる。
恐る恐る顔を上げるとすぐそこにアンマンの顔があった。
信じていた者に裏切られたような切ない表情をしている。うぅ、胸が、心が痛い。
「おにいちゃん。あんまんがかなしいとおにいちゃんもかなしいっていったよね?」
「はいそうです。アンマンが悲しいとお兄ちゃんも悲しいんです。でもさ、アンマンだってそう言ったぞ。俺は寂しかった、悲しかったんだ」
そこでアンマンの顔がハッとした。アンマンだけ子ども同士楽しんで、俺だけ寂しい思いをしていたことを漸く知ったようだ。
「おにいちゃん、ごめんなさい。これからいっしょにあそぼ? はる、もも、いい?」
二人は俺を見て、アンマンを見て、同意してくれた。
春くんに桃ちゃんか。なんていい子たちなんだ。
「よっしゃ! それじゃあ四人で遊ぼうぜ!」
ケッ、柚希は仲間はずれだざまぁみろ!
「何からツッコめばいいかわからないけど。誠、何もかも大人がするようなことじゃない。人としてどうかと思う」
うるせえ! 言われなくてもわかってらぁ!
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