act12.アンマン怪獣大地に立つ! が、失敗!
必要な買い物も終わり、アンマンにあんまんを買ってやっているときに、そういえば朝飯食べてなかったと思い出した。
今更だなとは思う。もうすぐ昼だしな。
それで昼飯も食べたのだけど、まぁそんなことはどうでもいい。
それよりもさっさとアンマンを見せびらかさなければならない。お昼時、結構見られていたけれども……。
まぁそれで、どこで、誰に見せびらかすかというと……特に考えてはいない。見せびらかすような相手なんて最初からいなかった。
てへへ。
はやる気持ちが目の前のことを忘れさせる。あると思います。
それでもやはりこの可愛い生き物を見せびらかしたい。そう思った俺が向かった先はここ。
公園です。
アンマンの公園デビューです。
公園デビューが今後の人生に関わってくるという話を、何かよくわからないマンガで読んだ覚えがある! 俺は公園デビューなどした覚えはない。きっとそれが会社をクビになった根源だろう。
うへ、うへへへへ、アンマンと一緒に楽しく遊んじゃうもんねー。
なんて思っていても一切顔には出していません。だから柚希、ケツを蹴らないで。変なこと考えた俺が悪いってのはわかってるからさ。
いやマジでいつまで蹴ってんの?
「やめろっての!」
「戻ってきた」
「最初からどこにも行ってねーよ!」
ったく、困った妹だ。早く帰れっての。
俺は楽しくアンマンと遊んでるからよ。
「よしアンマン! まずはブランコで華麗に公園デビューを飾るぞ!」
「うん?」
よくわかっていないようだな。よし、ここは俺に任せてもらおう。
アンマンを肩車したまま全力でブランコまで走る。
「オラァ、クソガキども! アンマン様のお通りだあ!」
ブランコで遊んでいるアンマンと同じくらいのガキども二人に威勢よく挨拶をかましてやった。最初が肝心だからな。
だがガキどもはキョトンとした顔でこちらを見ている。
座ったまま遊んでいるとはいい度胸だな、このクソガキが。
「よしアンマン! 俺が手本を見せるからブランコで遊ぶぞ!」
アンマンを降ろしてやる。ふっふっふ、アンマン怪獣大地に立つ! だな。ガキどもの視線はアンマンに釘づけだ。
だがここは俺に注目してもらおう。俺は空いているブランコに飛び乗った。
男は黙って立ち漕ぎだぜ!
「いいかアンマン。ブランコはな、こうやって膝を使って体重をかけてやるんだ」
勢いをつけまくって地面と平行になるくらいまで漕ぐ。
そして最後はそこからジャンプして見事に着地!
「どうだ! 最高にカッチョいいだろ!」
バッと後ろを振り返ると、ギシギシ音を立てて揺れまくるブランコを見てアンマンが震えている。
「ぶらんここわい……」
そ、そうか。ちょっとやりすぎちまったかな。
「だ、大丈夫だってアンマン、今のは一例であって、あそこのガキどもみたいに座ってこいでもいいぞ」
「うん……」
アンマンは恐る恐るという感じにブランコに手を伸ばした。
シャリンと金属の鎖が音を鳴らす。それにビクッと反応するアンマン。
俺の遊び方がインパクトありすぎたか。失敗だな。
「ほらそこのガキども、アンマンと遊べ!」
ビシッと指差して指名してやる。
子どもは子ども同士遊んだ方がいい。俺の出る幕は最初からなかったんだな。
「うごぁ」
突然の後ろからの衝撃に対して前のめりに倒れてしまった。
「誰だこのやろう!」
「子どもが困ってる」
柚希だった。こんなことするのはお前だけだろうからわかってたけどさ。
言われてもう一度ガキどもを見るとキョトン顔から困惑顔になっていた。
なんでだよ! 俺のブランコ捌きに沸き立ってもおかしくないんだけどなあ。
お前らの感性を疑うぜ。
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