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魔王298円  作者: のこ
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act1.魔王が安い!

 日曜日の午後六時。もうすぐ休日が終わってしまう。明日になったらまたいつものように働かなきゃならない。


「はぁー」


 社会人になって一年目、五月病発症だ。会社行くのだるいし、風邪だって連絡して休もうかな。あぁ、でも今のプロジェクトで回ってる仕事休んだら、後々響くなぁ。

 なんで入社してすぐにプロジェクトに配属されて仕事バンバン回されるかなぁ。もうちょっと新人を育てるとか考えてほしい。こんなはずじゃなかったのになぁ。

 いっそのこと会社ごと吹き飛ばないかな。そうすればこんなに悩まずに済むんだけど。そういうコマンドとか探したら見つかったりしないかな。お手軽に会社吹き飛ばすことできればなぁ。


「ん?」


 トボトボと買い物帰りにそんなことを考えていると変な看板が目に留まった。看板には『広告の品:ただいま魔王が安い! なんと今なら二九八円!』と書かれていた。胡散臭いフォントで書かれた看板だ。って、魔王ってなんだよ!

 魔王ってあれか? ゲームや小説とかで世界の半分をやるから仲間になれとか、バイトしてたり、ペットになってたりしている魔王のことか? まさか魔王が二九八円で手に入る時代になるとは、時代は俺の知らない間に斜め上に進んでいたんだな。……は?

 いやいや、魔王が売ってるって意味わからんし。なんで魔王が売られてるんだよ。二九八円って子どもでも買えるぞ。もしかして近所のガキどもは魔王を戦わせて遊んでいたりするんだろうか。……なんだそれ、面白そうじゃん! いやねーよ。なんだよ魔王を戦わせるガキどもって、どこにそんなのが存在すんだよ。


「あ! お前それレア魔王じゃん! いいなぁ。帰ったら俺の破壊魔王バーガルゴと戦わせようぜ!」


「うんいいよ! 僕の爆発魔王グリセロンで今度こそ勝つからね!」


 変な看板の前にある店から出てきたガキどもから変な単語が聴こえた。破壊魔王? 爆発魔王? ここは違う世界ですか? いや待て、もしかしたらカードゲームとかそういうやつかもしれない。最近のカードゲームはやたら名前が派手だからな。全カードに魔王という単語が入っているカードゲームなのかもしれない。スケールでかそうだな。


 はははーああああええええええええ!?

 目の前の物に思わず笑いから驚愕にシームレスで移行してしまった。

 ガキどもが持っている虫かごに、見るからにどす黒いオーラを発している小さな生き物がいた。あ、あれが魔王ですか。へ、へー、魔王って虫かごに入るんだ。

 爆発魔王とか言っていたガキの虫かごにはダイナマイトを体に巻き付けている、どこかの鉄砲玉みたいな生き物がいる。ヤ○ザじゃん!

 それが出て嬉しいのかガキどもは。

 嬉しそうに走り去るガキどもを見てそんなことを思ってしまう。


 ボンッ!


 走り去ったガキどもの方向から爆発音が聴こえた。


「あ! 僕のグリセロンが!」


「あーあ持ったいねー。安いかごだったからなー」


 魔王が逃げ出した!?

 振り返ると小さな生き物がこちらに走ってくるのが見える。ヤバイ、爆発魔王グリセロンがこっちに向かってくる!

 あんな量のダイナマイトが爆発したら大怪我じゃすまないぞ!


「おやおや逃げちまったかい。よいしょっと」


 店から出てきた婆さんが黒い虫かごを持って入り口を開いた。

 するとグリセロンが吸い込まれるように虫かごに入っていった。なんだこの婆さん、魔封○が使えるのか? もう何がなんだかわかんねーよ。


「お婆ちゃんありがとう」


「ひっひっひ、グリセロンに逃げられないかご、五百円だよ」


「ちぇっ、五百円もするのか。でもしょうがないか」


 ガキが五百円玉を婆さんに渡すと、婆さんはグリセロンの入った黒い虫かごをガキに渡した。


「毎度あり。また来な」


 田舎の駄菓子屋みたいなノリだな。そんな気軽に魔王を売買できるのかよ。

 気になるな。

 破壊魔王とか爆発魔王とか、おっかないけどもしかしたら会社吹き飛ばしてくれる系な奴じゃね?

 ニッキュッパだし、変なのだったとしても痛くはないか。

 ものは試しで買ってみるかな。

お読みいただきありがとうございます。

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