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現実のお話

影の天使と俺は人間で、

先輩は、ただの先輩だった。たれ目で優しい顔をした、お茶目な先輩だったんだ。この前までは。



今日は美術室が使えないから、1-5の教室を貸してもらった。教室に手洗い場なんて物はない。水を使うには階段を上り下りしなくちゃいけない。めんどくさいなぁ。下には新聞紙が敷いてある。足を動かすと、カサカサと音が鳴る。

そのとき、絵の具で汚れた手を洗いに行こうとしたのか、先輩が椅子から立った。そして扉に手をかけた。

「手洗ってくるね~」

「トイレ?」

「違う!」

そんなやり取りをしている先輩たちを横目に、俺はちらりと時計を見た。もうすぐ六時だ。そろそろ帰らなければ。絵の具で汚れたパレットを片そうと持って振り返り、俺も行きます。と言い放つ。

「俺も……」

ことはできなかった。先輩は、

「行ってくるね~」

といいながら手を振っていた。

その時――――――俺は天使を見た。

強い夕日の逆光で顔は見えない。くるり、と半回転。天使のスカートがふわりと揺れる。俺が手を振り返す前に天使は扉を閉めていった。

その日から、俺は天使の虜になった。

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