ー【第4節】冷や汗をかきながらカフェオレを飲んだら謎の毛玉が現れ、アイドルの心の声(俺への崇拝)を暴露してくれたおかげでさらに混乱した
第4節 冷や汗をかきながらカフェオレを飲んだら謎の毛玉が現れ、アイドルの心の声(俺への崇拝)を暴露してくれたおかげでさらに混乱した
ふわふわは俺の肩に着地すると、俺が抱えていた「バレたら終わる」という焦燥感をパクパクと食べた。
心がスッと落ち着く。
そして、いつものようにミウの肩へと飛び移った。
ミウは俺の手を掴んだまま、まだ疑いの眼差しを向けている。
口では厳しいことを言っているが、その内心はどうなのか。
ふわふわが震え、翻訳音声が脳内に響く。
『(うそ……ありえない。今の何!? 鳥肌立ったんだけど!)』
ミウの表情は硬いままだが、心の声は絶叫していた。
『(適当? ふざけないでよ! あんな神アレンジ、プロの作曲家だって即興じゃ無理よ! しかも私の声に吸い付くような伴奏……気持ちよすぎた……!)』
俺は呆気にとられた。
彼女は怒っているのではない。感動しすぎて、感情の処理が追いついていないのだ。
『(まさか、ね。でもこの和音の選び方、ノイズ様の癖と完全に一致してた……まさか、この子が? いやいや、そんな漫画みたいなことあるわけない。でも……)』
ミウの手が、俺の腕を握る力を強めた。
『(もしそうだとしたら……私、神様に触ってるってこと!? キャーッ! 無理無理尊い! でも離したくない! もっと弾いて! 私のために弾いて!)』
心の声が暴走している。
俺はミウの手をそっと外し、一歩後ずさった。
これ以上ここにいたら、彼女の妄想(あながち間違いではないが)が加速して、俺の正体が確定してしまう。
「ご、ごめん! 用事思い出した!」
俺は早口で言い捨て、音楽準備室を飛び出した。
背後でミウが何か言おうとしていたが、振り返る余裕はなかった。
廊下を走りながら、俺は自分の心臓が早鐘を打っているのを感じた。
バレたかもしれない。
いや、まだ疑惑の段階だ。証拠はない。
だが、一つだけ確かなことがある。
俺の指は、彼女の歌声に恋をしてしまったようだ。
あんなに気持ちよく弾けたのは初めてだった。
俺の曲が、彼女の声を得て、初めて「完成」したような気がしたのだ。
「……くそっ」
俺は誰もいない廊下で悪態をついた。
こんなことなら、もっと早く出会っていればよかった。
いや、出会わなければよかった。
そうすれば、俺はこれからも「孤独な天才」気取りで、ネットの海に曲を投げ続けるだけで満足できたのに。
俺の中の「音楽」が、彼女を求めて疼き始めている。
それは、どんなエナドリよりも強烈な刺激となって、俺の全身を駆け巡っていた。




