ー【第3節】帰り道、彼女は「ビジネスパートナー」として振る舞うが、謎の毛玉が翻訳する本音は「独り占め!愛してる!」と絶叫していた
第3節 帰り道、彼女は「ビジネスパートナー」として振る舞うが、謎の毛玉が翻訳する本音は「独り占め!愛してる!」と絶叫していた
帰り道。
すでに日は落ち、街灯が灯り始めていた。
俺とミウは並んで歩いていた。
学校での騒ぎがあったせいか、少し距離を置いて歩いている。
ミウは冷静さを取り戻したのか、ツンとした表情で前を見据えていた。
「勘違いしないでよね。これはあくまでビジネスよ」
彼女は髪を払いのけながら言った。
「君の才能が惜しいから、私がプロデュースしてあげるだけ。クラスでもベタベタしないから。私、アイドルとしてのプロ意識は高いんだから」
その言葉は冷たく、完全に「仕事仲間」としての線引きをしているように聞こえた。
さっきの熱烈なプロポーズは何だったんだ、と思うほどの変わり身の早さだ。
だが、俺はもう騙されない。
俺は自販機で買ったホットココアの缶を開けた。
甘い湯気が立ち上る。
一口飲むと、胃の腑に温かさが染み渡る。
そして、俺の肩にいつもの重みが乗った。
ボフッ。
白い毛玉、「ふわふわ」だ。
こいつは今日一日、俺が感じていた**「身バレの恐怖」**や**「将来への不安」**といった負の感情を、デザート感覚でペロリと平らげた。
そして、満腹になったふわふわは、夕焼け空に浮かび上がりながら、最後の仕事を始めた。
隣を歩くミウの心の声を、翻訳し始めたのだ。
ミウの口:「……まあ、たまには打ち合わせで家に行くくらいは、してあげなくもないけど」
その声は素っ気ない。
だが、脳内に響く翻訳音声は、爆音だった。
『(やったやったやったぁぁぁぁ!! 独り占め! 神様ゲットオォォォ!)』
俺はココアを吹き出しそうになった。
『(一生一緒! もう絶対離さない! 他の女なんて近づけさせない! リツ君は私のもの! 大好き大好き大好き愛してるぅぅぅ!!)』
ミウの表情はクールそのものだが、心の中ではサンバを踊っているようなお祭り騒ぎだった。
彼女の歩調が、心なしかスキップしそうなほど弾んでいる。
『(あー、早く家に帰ってリツ君の曲聴きたい。いや、本人が隣にいるんだから歌ってもらえばいいのか? でも喉を大切にさせなきゃ。プロデューサー(妻)として健康管理もしなきゃ! まずは手料理で胃袋を掴んで……ふふふ、新婚生活の始まりね!)』
妄想が暴走している。
妻ってなんだ。新婚生活ってなんだ。
俺は頭を抱えたくなったが、同時に口元が緩むのを抑えきれなかった。




