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ー【第4節】圧倒的な演奏を目の当たりにした推しがその場にへたり込み、「やっぱり私の神様は君だったんだ」と腰を抜かした

第4節 圧倒的な演奏を目の当たりにした推しがその場にへたり込み、「やっぱり私の神様は君だったんだ」と腰を抜かした


 最後の音が消えるまで、どれくらいの時間が経っただろうか。

 数分だったかもしれないし、永遠のようにも感じられた。

 俺は最後の和音を静かに響かせ、鍵盤から手を離した。

 肩で息をする俺の背後で、巨大化したふわふわが満足げに霧散していく。

 静寂が戻った音楽室に、夕日が赤く差し込んでいた。


「…………」


 ミウは何も言わなかった。

 いや、言えなかったのだ。

 彼女はその場にへたり込み、腰を抜かしたように床に座り込んでいた。

 瞳からは大粒の涙が溢れ、頬を伝って落ちている。

 だが、その表情は悲しみではない。

 歓喜と、畏怖と、そして深い納得に満ちた笑顔だった。


「……あはは」


 彼女は乾いた笑い声を漏らした。


「勝てないや。本物だ」


 ミウは震える手で顔を覆った。


「ずっと探してた。画面の向こう側にいる、顔も見えない神様を。まさか、こんな近くにいたなんて」


 彼女はゆっくりと立ち上がり、俺に歩み寄ってきた。

 その足取りはおぼつかないが、目は真っ直ぐに俺を射抜いている。


「ねえ、音無くん。ううん、ノイズ様」


 彼女は俺の前に跪き、俺の手を取った。

 その手は熱く、汗ばんでいる。


「やっぱり……私の神様は、君だったんだ」


 その言葉には、絶対的な確信と、揺るぎない崇拝が込められていた。

 俺は観念したように溜め息をついた。

 もう、逃げられない。

 俺の「空気」としての高校生活は、完全に終わった。

 これからは、「国民的アイドルの神様」として、彼女の重すぎる愛を受け止め続けなければならないのだ。

 だが不思議と、嫌な気分ではなかった。

 俺の曲をここまで愛してくれる人間が、目の前にいる。

 それは、作り手として何よりの幸福なのかもしれない。

 俺は彼女の手を握り返し、小さく頷いた。


「……バレちゃあ、仕方ないな」


 俺がそう言うと、ミウは花が咲くような満面の笑みを浮かべた。

 その笑顔は、アイドルとしての作り物ではなく、一人の少女としての、心からの笑顔だった。


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