ー【第2節】放課後の音楽室に呼び出され、鍵をかけられた密室で「あの曲を作ったのは君でしょ?」と詰め寄られた
第2節 放課後の音楽室に呼び出され、鍵をかけられた密室で「あの曲を作ったのは君でしょ?」と詰め寄られた
放課後の音楽準備室。
俺が入ると同時に、ミウは内側から鍵をかけた。
カチャリ、という金属音が、逃げ場のない檻の閉まる音に聞こえる。
夕日が差し込む部屋の中央には、グランドピアノが置かれている。
ミウはそのピアノの前に立ち、俺を迎え入れた。
「座って」
彼女は顎でピアノ椅子をしゃくった。
俺は大人しく従う。
ミウは俺の正面に立ち、腕を組んで見下ろしてきた。
その姿は、取調室の刑事か、あるいは異端審問官のようだった。
「単刀直入に聞くわ。あの曲、ネットで拾ったって言ってたけど……本当は君が作ったんでしょ?」
直球だった。
俺は心臓が早鐘を打つのを感じながら、必死にポーカーフェイスを保とうとした。
「いや、だから言ったじゃん。フリー素材だって」
「嘘」
ミウは即答した。
「私が検索した限り、あの曲はどこにも存在しない。それに、あの曲の構成、メロディの運び、転調のタイミング……全部、私の好きな『ノイズ』様の癖そのものだった」
「偶然だよ。世の中には似たような曲なんて……」
「偶然で、あんなに私の喉に合う曲が作れるわけない!」
ミウの声が荒げられた。
彼女は一歩踏み出し、俺の胸ぐらを掴む勢いで迫った。
「私、バカじゃないのよ。自分の声のことくらい一番分かってる。あの曲は、私のためだけに調整されたオーダーメイドだった。私の声域、ブレスの位置、一番響く音程……全部計算されてた」
彼女の瞳が揺れている。怒りではない。切実な問いかけだ。
「教えて。君は何者なの? ただのクラスメイトが、なんであんな神曲を持ってるの? なんで私の心を覗いたような歌詞が書けるの?」
俺は言葉に詰まった。
言い逃れは不可能だ。彼女は確信している。
だが、認めてしまえば、俺の「平穏な陰キャ生活」は終わる。
俺は視線を逸らし、ピアノの鍵盤を見つめた。
「……弾けないよ。俺は素人だ」
「弾いて」
ミウは譲らなかった。
「弾けないなら、適当に音を出すだけでいい。でも、もし弾けるなら……私に嘘をつかないで」
彼女の声が震えていた。
「私、自分の神様を見間違えたりしないから」
その言葉が、俺の胸に重く響いた。
神様。
またその言葉か。
俺はただの高校生だ。音無リツだ。
でも、彼女にとっての俺は、救い主であり、崇拝の対象なのだ。
その期待に応えることが、俺の役割なのか?
それとも、最後まで嘘を貫き通すことが優しさなのか?
答えが出ないまま、俺の手は震えていた。
喉が渇く。
極限の緊張状態。
俺は無意識に、ポケットに入っていた炭酸水のペットボトルを取り出した。




