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【第4章】【第1節】ネット解析班が「例の曲は『ノイズ』の新曲だろ」と特定を始め、ミウも俺への疑惑を確信へと変えていた

第4章 逃げ場のない音楽室


第1節 ネット解析班が「例の曲は『ノイズ』の新曲だろ」と特定を始め、ミウも俺への疑惑を確信へと変えていた


 翌日、世界はミウの配信の話題で持ちきりだった。

 だが、その熱狂の裏で、不穏な動きが加速していた。

 SNSのタイムラインには、こんな呟きが溢れかえっている。


『昨日のミウちゃんの曲、ベースラインが完全にノイズ様じゃね?』

『コード進行の癖が一致。これ、未発表の新曲だろ』

『いや、フリー素材って言ってたぞ? でも検索してもヒットしない』

『誰かがリークした? それとも……?』


 ネット特定班の仕事は早かった。

 俺が深夜のテンションで書き殴ったあの曲は、数時間のうちに丸裸にされ、波形解析まで行われていた。

 そして導き出された結論は一つ。

 「作曲者は間違いなく『ノイズ』本人である」。

 俺は教室の席で、スマホを握りしめたまま冷や汗をかいていた。

 マズい。完全に特定されている。

 俺の正体がバレるのは時間の問題だ。いや、もうバレているのかもしれない。

 恐る恐る隣の席を見ると、ミウはスマホの画面を食い入るように見つめていた。

 その表情は真剣そのもので、時折眉をひそめたり、何か考え込むように唇を噛んだりしている。


「……おはよう」


 俺が声をかけると、ミウはゆっくりと顔を上げた。

 その瞳には、昨日のような絶望も、配信時のような熱狂もない。

 ただ、静かで冷徹な「探究心」だけがあった。


「おはよう、音無くん」


 ミウの声は落ち着いていた。だが、その落ち着きがかえって怖い。

 彼女は俺の目を真っ直ぐに見据え、静かに言った。


「昨日の曲、ありがとう。おかげで私、事務所に辞表出してきた」


「は!?」


 俺は思わず大声を出した。

 辞表? 国民的アイドルが?

 クラス中がざわめく中、ミウは悪戯っぽく微笑んだ。


「まあ、受理されるかは別として、自分の意志は伝えたってこと。これからは自分の歌いたい歌だけ歌うことにしたから」

「そ、そうか……それは良かったけど……」


 俺は安堵と焦りが入り混じった複雑な心境だった。

 彼女が自分を取り戻せたのは嬉しい。だが、そのきっかけを作ったのが「俺の曲」である以上、追求の手は緩まないだろう。

 ミウは俺の動揺を見透かすように、一歩距離を詰めた。


「でね、ちょっと話があるの。放課後、音楽準備室に来て」


 それはお願いではなく、命令だった。

 拒否権はない。俺は覚悟を決めるしかなかった。


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