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ー【第4節】帰宅した推しが曲を聴いて号泣し、衝動的に始めたインスタライブで俺の曲を熱唱して伝説を作ってしまった

第4節 帰宅した推しが曲を聴いて号泣し、衝動的に始めたインスタライブで俺の曲を熱唱して伝説を作ってしまった


 その日の夜。

 俺は自宅で、いつものようにネットサーフィンをしていた。

 すると突然、スマホの通知が鳴り響いた。

 『奏音ミウがインスタライブを開始しました』

 俺は弾かれたように画面をタップした。

 画面に映し出されたのは、自宅と思われる部屋で、アコースティックギターを抱えたミウの姿だった。

 化粧もしていない、部屋着のままの姿。

 だが、その瞳には昨日のような絶望の色はなく、代わりに燃えるような決意の光が宿っていた。


「……こんばんは。急にごめんね」


 ミウの声は少し掠れていた。泣いた後なのだろうか、目が赤い。


「今日は、みんなに聴いてほしい曲があって配信しました。事務所には内緒だけど……どうしても、今歌いたくて」


 コメント欄がざわつく。「大丈夫?」「事務所に怒られるよ?」という心配の声が流れる中、ミウは深呼吸をしてギターを構えた。


「この曲は、ある人が教えてくれた曲です。誰が作ったのかも分からない、名もなき曲だけど……私の今の気持ちそのものだから」


 ジャラン、とギターがかき鳴らされた。

 俺が作ったロックバラードの、アコースティックアレンジだ。

 そして、彼女が歌い出した瞬間、俺は鳥肌が立った。


「♪――操り人形の糸を切って 私は私の足で立つ!」


 それは歌というより、魂の叫びだった。

 巧みな技術や、可愛らしい媚びなど一切ない。

 ただひたすらに、感情をぶつけるような歌声。

 昨日の音楽室でのセッションとは比べ物にならないほどの熱量が、スマホの画面越しに伝わってくる。

 コメント欄の流れが止まり、やがて爆発的な勢いで加速し始めた。

 『なんだこれ!?』『ミウちゃんどうした!?』『歌詞が刺さる』『泣ける』『神曲すぎる』


 ミウはカメラを見据え、涙を流しながら歌い続ける。

 その姿は、あまりにも美しく、そして痛々しいほどに力強かった。

 俺は画面の前で、震える手で拳を握りしめていた。

 届いた。

 俺の曲が、彼女に届いたんだ。

 そして彼女は、その曲を武器にして、今まさに世界と戦っている。


「♪――誰かのための私じゃない これが私の歌だ!」


 最後のフレーズを歌い終えると、ミウはギターを置き、画面に向かって深く頭を下げた。

 そして、一言だけ残して配信を切った。


「ありがとう。私、もう逃げない」


 画面が暗転した後も、俺の心臓は早鐘を打っていた。

 同接数は五万人を超え、SNSでは「#ミウの乱」「#神曲」というハッシュタグがトレンド入りしていた。

 世界が動いた。

 俺が深夜のテンションで書き殴った一曲が、彼女の運命を変え、そして多くの人々の心を揺さぶったのだ。

 俺はPCの画面を見つめたまま、呆然と呟いた。


「……やったな」


 だが、同時に背筋が寒くなるのも感じていた。

 あそこまで感情を込めて歌われたら、勘の良いリスナーなら気づくはずだ。

 あの曲が、ただのフリー素材なんかじゃないことに。

 そして何より、あの曲の構成やメロディラインには、俺の手癖(ノイズとしての署名)が色濃く残っている。

 特定される。

 俺の正体が、白日の下に晒される日は近いかもしれない。


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