ー【第3節】翌日、ネットで拾ったフリー素材だと嘘をついてUSBを渡すと、推しは怪訝な顔をしながらも受け取ってくれた
第3節 翌日、ネットで拾ったフリー素材だと嘘をついてUSBを渡すと、推しは怪訝な顔をしながらも受け取ってくれた
翌朝、俺は重い頭を抱えて登校した。
睡眠時間は二時間。カフェイン切れで頭痛がするが、不思議と気分は高揚していた。
教室に入ると、ミウは昨日と同じように机に突っ伏していた。
俺は深呼吸をして、彼女の机の端にUSBメモリを置いた。
「……なにこれ」
ミウが顔を上げ、気だるげに俺を見た。
その目は相変わらず死んでいるが、俺の行動には少し驚いているようだ。
「曲」
俺は短く答えた。
余計なことは言わない。言い訳を考えすぎてボロが出るよりマシだ。
「ネットで拾ったフリー素材なんだけど。ミウちゃんの声に合いそうだなと思って」
嘘だ。
この世のどこにもない、昨夜生まれたばかりの新曲だ。
だが、今の彼女に「俺が作った」と言っても信じてもらえないだろうし、逆に警戒されるかもしれない。
ミウは怪訝そうに眉をひそめた。
「フリー素材? どうせ素人が作ったボカロ曲とかでしょ。私、今そういう気分じゃ……」
「いいから聴いてみてよ。損はさせないから」
俺は強引にUSBを彼女の手に握らせた。
ミウはしばらく俺の手を見つめていたが、やがて小さく溜め息をつき、USBをポケットに入れた。
「……ありがと。気が向いたら聴くわ」
その態度は素っ気なかったが、拒絶されなかっただけマシだ。
俺は自分の席に戻り、心の中で祈った。
頼む。聴いてくれ。
そして、感じてくれ。
その曲の中に込めた、お前へのメッセージを。
《お前は一人じゃない。戦え》という、俺からのエールを。




