ー【第2節】推しの苦しみを救うため、深夜にエナドリをキメて覚醒し、怒りと悲しみを全部ぶち込んだロックバラードを書き殴った
第2節 推しの苦しみを救うため、深夜にエナドリをキメて覚醒し、怒りと悲しみを全部ぶち込んだロックバラードを書き殴った
その日の夜、俺は自宅の防音室に籠城した。
机の上には、カフェイン含有量MAXの「激強炭酸エナドリ」が三本並んでいる。
時間は深夜二時。
明日も学校があるが、知ったことではない。
俺の中には、昼間に見たミウの涙と、彼女を追い詰めた大人たちへの怒りが渦巻いていた。
プシュッ。
俺は一本目のプルタブを開け、一気に喉へ流し込んだ。
強烈な炭酸とカフェインが、脳の血管を拡張させる。
視界がクリアになり、指先が熱を帯びる。
そして、いつものように右肩に「重み」が乗った。
「……食えよ」
俺は小さく呟いた。
ふわふわが現れ、俺の頭上に漂う**「推しが苦しんでいるのに何もできない無力感」**と**「大人たちへの殺意に近い怒り」**を、掃除機のように吸い込み始めた。
ズズズッ、という音と共に、俺の中のドス黒い感情が浄化されていく。
だが、今回は完全に消えるわけではない。
ふわふわは、吸い込んだ感情をエネルギーに変換し、俺の脳内に直接語りかけてきた。
《描け。彼女の叫びを音にしろ。お前の音で、彼女に牙を与えろ》
その言葉は、俺の本音そのものだった。
俺はDAWソフトを立ち上げ、キーボードを叩き始めた。
ジャンルは、ミウが好きな激しいロックバラード。
BPMは180。疾走感のあるドラムビートに、歪みきったギターのリフを重ねる。
そして、歌詞。
普段の俺なら、抽象的で難解な言葉を選ぶところだが、今回は違う。
ストレートに。泥臭く。
ミウが今、心の中で叫んでいるであろう言葉を、そのまま歌詞にする。
『操り人形の糸を切って 私は私の足で立つ』
『愛想笑いの仮面なんて 今すぐアスファルトに叩きつけろ』
俺の指は止まらなかった。
まるで何かに取り憑かれたように、メロディと言葉が溢れ出てくる。
これは俺の曲じゃない。
ミウのための、ミウによる、ミウだけの曲だ。
気づけば、窓の外が白み始めていた。
俺は完成したデータをUSBメモリに移し、大きく息を吐いた。
タイトルは『Unmask(仮面を外せ)』。
まだデモ段階だが、魂は込めたつもりだ。
俺はフラフラになりながら、ベッドに倒れ込んだ。




