サバイバル・ゲーム
テーマは『サバイバル』
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』の対象となる超短編作品です。
「よし! サバイバルキットを買いに行こう」
「……はぁ? 突然何言ってんの?」
困惑をあらわに言われる。
気持ちはわかる。
「防災グッズ揃えとくのも悪くないだろ?」
「それは……いいと思うけど。なんで?」
「なんとなく、冬になると災害が多いような気がして。そういうのにも備えとかないといけないなって」
そう言うと怪訝そうに目を細められる。
わかっている。
言っていることが正しいのはわかるのだろう。だけど本当のところどうなのか真意を測りかねているということだ。
「なるほど。また何かに影響でも受けたってこと?」
「それは否定しない」
「それでサバイバルキットが欲しくなったんでしょ」
「いいだろ。あって困るものでもないし」
そう言うと大げさにため息をつかれる。
その子供じみた単純な欲求に心底呆れているのだ。こういった気まぐれはいつものこととはいえ、理解してても素直には頷き難いというのはよくわかる。
「……まぁいつものに比べれば変なものではないけど。でも、本命はサバイバルの方なんでしょ?」
「そうだけど」
それは正しい。
もっともらしい理屈は述べたものの、実のところそれはあまり関係ない。
「水とか非常食とかは確かに備えておくべきだけど、そんな道具って実際使わないんじゃない?」
「まぁはっきり言ってただのロマンだな。でも男の子はそういうのが好きなんだよ」
「何が男の子なんだか……」
仮に災害にあったとして、何かがあったとして、サバイバルキットを使う機会などないだろう。まして素人ができることなどたかが知れているのだから。
「あれでしょ。授業中にテロリストが入ってくる妄想とかでしょ」
「あー、まあ違うんだけど、それでいいよ」
「何が違うの?」
「本気かそうじゃないか」
「……どういう意味?」
ただの妄想であればよくある話だ。だけど、本質はそれに備えるかどうかなのだ。
学校で異常事態が起きた妄想をするものはいても、本気でそれが起こったときのことを考えるものはいない。だけど、たとえば非常口、非常経路を把握することくらいは誰にでもできるはずなのだ。
「……はぁ」
うんざりしたように睨まれる。
つまりそれはそういうことなのだから。
自分はただ何か起こったときの妄想をするわけじゃなくて、本気で備えてサバイバルをするということなのだから。




