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家出した魔王の息子、勇者一行に入る 〜最強メンバーで憎き父に復讐したい〜  作者: 谷 風汰


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最終話 「そして伝説へ」

 魔王城、謁見の間。

 元のものとは比べ物にならないほど質素だが、見て分かるくらいには再現できているだろう。

 あまり入ることはできなかったが、重要な催しが行われるときには俺もここに呼ばれた。

 

 昔の父を思い出し、椅子にふんぞり返ってみる。

 勇者一行を待ち受ける魔王の気持ちがよく分かった。

 

 だから何ということはない。

 一度やってみたかっただけだ。


「正直、悔しいよ」


 カインは言った。


「何が?」

「たったこれだけで気持ちが揺らいでる。

 あのときの悔しさ、仲間の血の匂い、死への恐怖。

 全てが現実のように思えてくる」

「効果があって良かったよ」

「だけど」


 カインはこちらをまっすぐと見た。

 気高く、強い目だった。


「お前を倒せば、それも消えてなくなる」

「どうかな?」


 俺は手をかざした。

 人差し指を上に向ける。


 地面が盛り上がり、先の尖った土の柱が現れる。

 串刺しにするように下から飛び出す。


 二人は躱した。

 しかし、その着地点にまた現れる。

 また躱し、さらにその着地点へ。


 それでも着実に距離を詰めてくる。


 流石の連携だ。

 お互いの方を向いてないのに、避ける方向は常に一緒。

 決して離れることはなく、守り、守られの関係を崩さない。


 高い音が鳴ったと思うと、こちらに柱が飛んできた。

 俺は首を倒し、避ける。

 背後で恐ろしい音がした。


 カインが弾いたのだ。

 面白いことをするな。


 趣向を変えよう。


 アリアが前へ飛び出した瞬間、俺は壁を操作した。

 今度は針のように細くなった土塊が射出される。

 巨大な矢だ。


「アリア!!」


 カインが飛び出した。 


 土の針が肩を貫く。

 血しぶきを飛ばしながら反対側の壁に激突し、粉々に砕けた。

 残骸が床に散らばる。


 俺は舌打ちをした。


 血が出ているのは、カインの方だった。

 肩を抑え、こちらを睨んでいる。


 そして、アリアが即座に魔法を唱えて治療する。

 穴は塞がれ、元通りになる。


 だが、かなり強力な回復魔法だったのか、アリアの顔にもかなりの疲れの色が見えた。

 

 俺は指を下にかざした。

 天井から針が現れ、落雷のように落ちる。


 聖剣が弾いた。


 針は真っ二つに折れ、後ろに散らばる。


 もう小細工は通じないか。

 

 俺は立ち上がる。

 剣を両手で握り、前方に飛び出した。

 

 カインに肉薄し、横に薙ぎ払う。

 聖剣とぶつかり、鋭い音を立てる。

 火花が飛び散った。


 まだ補助魔法が残っているか。

 重い。

 が、


 聖剣を右に払い、片足を踏み込む。

 そのままの流れで左手をかざし、土魔法を射出する。

 ほぼ密着して放たれ、カインの腹に食い込んでいった。

 

「あ゛ぁ!!」


 カインの顔が歪み、静かに痛みを叫ぶ。


 しかし回復魔法。

 緑の光がカインを包み、その表情は元に戻っていく。


 丸い土塊は勢いを失い、床にぼとりと落ちた。


 先ほど払った聖剣が、気づけば下から追い上げてきていた。


 咄嗟に後ろに跳ねる。

 腹に痛みが走る。


 血が床に垂れていた。

 ポツ、ポツ、と、浅い、しかし確実な一撃。


 こちらに回復魔法はない。

 一撃一撃が命取り。

 

 考えている暇はない。

 

 踏み込んだ。


 火花が散る。

 横に、縦に、相手を揺さぶるように剣撃を加えるが、カインも見事に対応してくる。

 最初に比べて明らかに動きが変わっている。

 名工が剣を研ぐように、次第に洗練されていく。


 距離を取ると見せかけ、大きな一撃を叩き込んだ。

 

 しかし、さらに大きな力で返される。

 俺は剣の操縦を失い、必死に構えの位置に戻そうとするが、遅い。


「くっ⋯⋯」


 まっすぐと聖剣が振り下ろされ、今度はさらに深い一撃を食らった。

 

 距離を取る。

 ゆっくりと、手の感触を確かめる。

 動きに違和感はないか、まだ全力を出せるか、確かめる。

 問題ない。


 いや、問題は相手。

 着実に、一歩ずつ、力が上がっている。


 補助魔法ではない。

 何度も重ねることはできないはずだ。

 

 相手の息遣いがこちらに伝わる。

 少し乱れを見せた俺に対し、美しいリズムを保った呼吸。

 それは、一呼吸経るごとに鋭さを増していき、洗練されていく。


 そんなはずは⋯⋯。


 そこで気づく。


 ⋯⋯あの聖剣、何かが違う。

 少しだけ、青みを帯びている。

 

 竜の紋章か⋯⋯?


 カインが迫った。


 俺は片手を地面につき、土魔法を使用する。

 轟音を立て、二人の間に壁が現れた。


 カインの姿が消え、俺は呼吸を整える。


 瞬間、壁が爆散した。

 カインが真正面から突破してきたのだ。

 聖剣を地面と水平に構え、大砲のように迫る。


 崩れた構えを戻そうとし、遅れた。


「ッ!!!」

 

 躱すのも間に合わず、脇腹を聖剣が貫いた。

 全身を焼けるような熱が覆う。


 痛みを振り払い、剣を振り上げた。

 カインの頭上に叩き込む。


 聖剣は引き抜かれた。

 お互いの距離が空く。

 

 視界が少しふらついた。

 足に痺れが駆け巡る。

 

「降参する気になったか?」

「馬鹿言え」


 全身に力を入れた。

 あと一撃、これほどの攻撃を食らえば終わりだ。

 もう後はない。


 何とか⋯⋯。


 カインが飛び出す。 

 剣と剣がぶつかり合い、戦いのリズムを刻む。

 相手のペースに押し切られる。


 ジリジリと押されていく。

 同時に右に流されていく。


 気づけば、玉座から見て右の壁、その近くにいた。

 膨れ上がっていくカインの力に耐えきれず、後ろの空間を失っていく。


 背中に壁がついた。


「終わりだ」


 見事なまでの剣速で叩き込まれた。


 何とか受け止める。

 しかし、もう後がない。

 このままでは、力負けして真っ二つだ。


「オオオォォォォォ!!!!」


 カインが叫んだ。

 更に力が増した。

 聖剣に刻まれた竜の紋章が、輝きを増す。


 瞬間、俺は片手を離した。

 

 刹那の勝負。

 壁に手をつける。


 背中に密着した部分が湾曲し、俺の体を吸い込んだ。

 ベッドに飛び込んだときのように体が沈む。


 聖剣は振り下ろされた。

 

 しかしそこには俺はいない。


 カインのバランスが崩れた。

 虚空を掠ったように前のめりになる。


 俺は、剣を水平に構えた。

 反発するように前方へ飛び出す。


 突き刺した。


 カインの胸の近く、剣の根本まで押し通す。


 緑の光が現れた。

 体を包んでいく。


 しかし、カインは口から血を吐き出し、床にぶちまけていた。


 剣を抜き、脇腹に強烈な蹴りをねじ込んだ。

 体がぐにゃりと曲がり、カインは右に吹き飛んだ。


 分断した。


 前方で移動しようとするアリアに迫る。

 僧侶では決して反応できない速さで、成す術もない力で。


 剣を上に構えた。

 

 アリアは片手を突き出す。

 冷静さは失っていない。


 想定通りだ。


 俺は肉薄し、剣から片手を離す。

 アリアが突き出した腕を取る。


 ぶん投げた。

 カインの反対側、玉座がある方の壁に激突する。


「ガッ⋯⋯!!」


 アリアのものとは思えない声と、鈍い音が部屋に響く。

 壁に亀裂が入る。

 ドサッという音とともにアリアは床に落ちた。


 立ち上がる隙も与えない。


 俺は剣を握り、跳んだ。

 大上段に剣を構え、振り下ろす。


 鋭い音が鳴る。

 

 アリアは辛うじて片手を突き出し、防御魔法を発動していた。

 魔法陣が薄れて消えていく。


 シールドに、全体重をかける。

 腕力で押し切ろうとする。


「立ち上がっ゛て!!!」


 アリアが叫んだ。

 顔面から血を流し、苦痛に歪んだ声だった。

 

 その瞬間、青い光が視界を覆った。

 直感的に何かを感じ、アリアの目前から離れ、上に跳んだ。


 岩が砕かれるような衝撃音が鳴り響き、爆風が走る。

 吹き飛ばされる。


 壁に激突し、上を見ると、天井が崩れていくのが分かった。

 いや、ズレていっている。

 綺麗に、斜めに。


 やがて空が現れた。

 快晴だった。


 先ほど蹴り飛ばした所に、勇者は立っていた。

 口から血を流し、体に穴が空き、それでも立っていた。

 ちょうど、この部屋の入口付近。

 

「カイイイィィィィン!!!!」


 俺は立ち上がり、叫んだ。


「終わりにしよう」


 カインは静かにそう言うと、聖剣を空に掲げた。

 竜の紋章が青く輝く。

 眼球を突き刺す光がほとばしる。


 さっきまで快晴だった空に、憤怒の雷が渦を巻き始めた。


 視界が純白に染まる。

 重低音が爆ぜる。

 

 青い雷が、聖剣の上に落下した。

 刀身が稲光を帯びる。


 雷を有しているようで、いや、その刀身自体が雷なのだ。


 俺は痛みを堪え、走り出した。


「オオォォォォォオオ!!!!」

 

 同時にカインも走り出す。


 お互いに天高く振り上げた剣撃は、大地を切り裂くように真っ直ぐと伸び、やがて交差し火花を散らす。


 押し切られ、右手ごと剣が吹き飛んだ。

 壁に激突した高い音が聞こえた。


 左手をカインに向ける。


業火(ボルケーノ)


 巨大な炎が放たれる。

 轟音を響かせ、空気が熱し、カインを呑み込んだ。


 しかし、黒い人影が映る。


 あっという間に業火は青く染まり、中から聖剣を振り上げたカインが現れた。

 

 それを、ゆっくりと見上げていた。


 俺は魔王。

 人族を滅ぼす存在。


 これが、定められた物語。


 こんなにも、悲しい時間はなかった。

 こんなにも、楽しい時間はなかった。


 魔王になって良かったよ。


 また、お前に会えたから。


 聖剣が眉間に吸い込まれる。

 青い光が視界に灯る。

 目と目が交差した。  


 ああ!!



 カインよ!!!!



 お前こそが!!!!!!!!!!!



 



 伝説だ。

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