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オープニング
勇者は現れた。
服はボロボロで、靴は泥まみれ、壊れた人形のようにふらついている。
心はすでに擦り切れている。
それでも、現れた。
「やっと来たか、勇者よ」
魔王は言った。
対称的に、格好の獲物でも見つけたような満面の笑み。
赤く鋭い目は光を放つ。
「勇者は遅れてやってくるんだ」
かすれた声で絞り出した。
喉の奥底から、岩でも取り出すかのように。
「そうか」
瓦解した街の上、風が吹き荒れる。
勇者の剣に刻まれた、竜の紋章が光を帯びる。
「最後に一つ」
勇者は言った。
剣先を相手に向ける。
かすかに震えている。
しかしその目は、誰よりも気高く。
「どうして」
「魔王になった?」




