婚約者(1)
私はサフィリア・リーレット公爵令嬢。
婚約者がいる。
そうだ、私には婚約者がいる。それも最愛の。
名前はスカイ・エリオンス。美しい金髪に、青空の色を映し出した瞳、整った顔立ち。性格は優しくありつつもちゃんと厳しく、私の行動について指摘してくれたり、忙しいであろうに、お出かけやお茶会の誘いも15回に1回は受けてくれる。
そんな最愛の婚約者。
その筈なんだけど…
(あれから1週間も経ったのにお見舞いの手紙すらこない…)
のである。婚約者なのに。でもまあ、忙しいのだろう。何で忙しいのかは知らないが。
それに、来ないのならこっちから招待すれば良い。今日にでも、アンナにスカイ様への手紙を出してもらうとでもしよう。
そんな事を考えていると、いつの間にか、もう昼食の時間が近くなってきていた。
最近は、まだ体が痛むので、部屋で食事をとる事にしている。
そろそろ昼食の支度を始めてもらおうと、リフィルを呼び出そうとした時、丁度、ノックの音の後にドアが開いて、アンナが入ってきた。
「あの…お嬢様…今、お時間いただいてもよろしいでしょうか…?」
「大丈夫よ。今呼ぼうと思っていた所だし。」
おずおずと聞いてきたアンナに優しく返すと、アンナは少し困惑気味の表情で続けた。
「昼食のメニューは何に致しますか?」
「今日は酸味のある、冷たい物が良いわ。冷製パスタとか?」
「了解しました。シェフにそう伝えておきます。」
最近メイド達は、急に態度を軟化させた私に、困惑している様だった。でも仕方ないじゃないか。なんだか、人を怒鳴ったりするのって、体力使うし、あまりいい気分じゃないと思うようになったんだし。
どうして当然そう思うようになったのかは、自分でも、理由は分からないけど。
そこで、私は婚約者の件を思い出した。
「アンナ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「は、はい、何でしょうか?」
ドアを開けて、部屋から出ていこうとしたアンナに声をかけると、少し上ずった声の返事が返ってくる。
「スカイ様に、手紙を出して欲しいの。私の家でお茶会しませんかって。」
「了解致しました。今日にでも、手紙をエリオット伯爵邸に送っておきます。」
そう返事をすると、アンナは今度こそ部屋から出ていった。
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