不本意のデート
「遅いぞ、サフィリア。もう待ちくたびれた。さぁ、早く昼食を食べに行こう。」
只今、午後1時30分。私が杖の素材を選び終わり、呼び出されていた婚約者と合流した時の事。
「遅かったぞ。杖でそんなに時間がかかるものなのか?」
「すいません、遅くなってしまって。」
特に待ち合わせもしていなかったどころか相手側が勝手に取り付けた約束なのに怒られた。まあ、一応謝っておく。
「良いんだ。杖は魔法を使うにあたって、とても重要だからね。良い杖は見つかったかい?」
謝った途端態度が豹変した。
「見つかったと言うか、杖の素材を選んでて…私、オーダーメイドで作ってもらうんです。」
「そうなのか!?すごいな、サフィリアは。それにしても、杖をオーダーメイドか…なんで教えてくれなかったんだい?」
嫌な所を突いてきた。それはもちろんロリアさんにスカイを会わせたくないからだ。でも、本人の前でそんな事を言うわけには行かない。
「それは…ちょっと店主の方が気難しくて…気に入らない人だとちょっと…」
ロリアさんこんな事言ってごめん。許してくれ。
「そうなのか…??まぁ、サフィリアが言うならそうなんだろう。きっと。」
たった今婚約破棄の危機に瀕しているスカイは、もちろん変に詮索をして婚約者の機嫌を損ねるわけには行かない。あっさり信じてくれた。
「さて、昼食を食べに行こう。サフィリアは何を食べたい?」
「そうですね…最近は少し暑いので、冷たい物が良いです。」
「そうか…うーん…この街に詳しいのはサフィリアの方だし、サフィリアが決めてくれないか?」
リクエスト聞いておいてこっちに丸投げですか。それに、婚約者とのデートなら、前もって決めておいてもいいだろうに。
私はデートなんて気全く無いけど。
「じゃあ…パスタのお店はどうですか?冷製パスタとか、冷たいスープとかもあるお店です。」
「良いな!そこにしよう!流石はサフィリアだな!」
そんなこんなで私達は、ランチを食べに、その店へと向かった。
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冷製パスタのお店にて。
「やっぱりこういう日は暑いな。僕はやっぱり、家や自宅の庭でお茶会をしている方が好きかな。サフィリアもそう思わないかい?」
「ええ、まあ、スカイ様はそう思われるのですね…」
正直、私はこうして外で散策している方が好きだ。お茶会だって、好きな人とか気の合う人となら楽しい。だが、街の方が、色々な発見があったり、美味しいものに出会えたりするから。
「サフィリアは何にする?僕は、海老とレモンの冷製パスタ、アイスコーヒーにするかな。」
「私は、ミントティーと、トマトとナスの冷製パスタにします。」
「わかった。じゃあ、注文するか。」
そう言って注文し終わった後に、気まずい沈黙が訪れる。
ふと、スカイが口を開いた。
「その…サフィリア、婚約の事なんだけど…」
「はい。それが何か?」
何かと思えば、婚約破棄の話らしい。せめて、もっと別の場所にして欲しいのだが…
「い、今まで悪かったよ。ほら、色々あっただろう?」
「まぁ、そうですね。それで?」
「だから、あの話は無かったことにしてくれないか?その…婚約破棄の話。」
「考えておきます。」
そう返した時、丁度パスタが届いた様だった。
「取り敢えず、せっかくだからランチを楽しもう。」
「まぁ、はい。」
スカイの発言にそう答えて、パスタに手をつける。
角切りにされた生のトマトの爽やかな酸味と、ナスのとろっとした食感が、とても美味しい。ミントティーも、とても良い香りで、爽やかな気分にしてくれる。
でも、さっきの気まずい雰囲気のせいで、どことなく素直に楽しめない私がいた。
話したくもないし、話すこともないので、ただただ食べるのに専念していると、スカイが口を開く。
「その…美味しいな。パスタ。」
食べている時に話しかけられても、困るというのが本音である。
パスタを食べ切って、ミントティーを飲んでいると、スカイが「早くしろ」みたいな目で見てきた。
仕方ないから、急いでミントティーを飲み干すと、スカイが立ち上がる。
「さて、それじゃあ、街の散策に行くか。」
「……え?」
そんな訳で、私はまた婚約者に付き合うことになってしまったのだった。
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