入学準備(3)
いつもよりかなり長いです。スイマセン。
入学まで後2ヶ月。
今日は、1人でロリアさんの魔道具店に行って、自分専用の杖を作ってもらおうと思っていた。しかし…
「奇遇だな、サフィリア。この街では質のいい魔道具が買えると聞いたから、杖を買いに来たんだ。えっ、サフィリアも杖を買いに?いいじゃないか!同行しても良いか?よしわかった!では早速向かおう!」
みたいな感じで、親と一緒に街に来ていたスカイと鉢合わせしてしまい、一緒に行く事になってしまった。
こいつ、私に婚約破棄したいって言われてんの忘れてんのか?
ちなみに、スカイの親は別行動にするらしい。
でも、どうしよう。ロリアさんにスカイを会わせたくない。でも、杖はロリアさんのお店で作って欲しい。
私があれこれ考えている内に、スカイはどんどん足を進めていく。
慌てて付いていくと、1つの大きな魔道具店に辿り着いた。
ここは、とある商会が運営する、多数の支店を持っている魔道具店の、本店だ。
ここで買える杖目当てに、様々な人がここに立ち寄るのである。
もちろん、王立学園に入学する貴族もだ。
「ここの店で杖を買おうと思うんだ。サフィリアもそうだろう?」
「いえ、あの…」
「そうだよな!じゃあ入るか!」
「あのっ、違うんです…」
そんな私の言葉も無視して、スカイは店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ。予約していたエリオンス様ですね。あら、そちらの方は…?」
「僕の婚約者のサフィリアだ。サフィリアも予約していたと思うのだが…」
「ええと…されていませんね。予約がないと、杖のご用意は出来ないのですが…」
「えっ!?サフィリア、ここじゃなかったのか!?言ってくれたらよかったのに…」
「言おうとしてましたよ…」
本当に人の話を聞かない人である。
「そうか…どうするか?サフィリアは元々行く予定のある店があったのか?」
「はい、そうです。だから、そちらに行きたいのですが…」
「そうか、わかった。じゃあ行ってくると良い。その代わり、終わったら、大きな噴水の広場に集まろう。その後、一緒に昼食でも食べよう。」
そんな訳で、私はロリアさんのお店へと向かった。
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「あら、それは災難だったねぇ。貴族って大変なもんだねぇ。そうだ、クッキーを焼いたからいるかい?」
ロリアさんに、予定より遅れてしまった経緯を話すと、あっさり納得してくれたようだった。
「それで、今日は杖を作りたいんだったね。さあ、こっちにおいで。どの素材がサフィリアに合うのか、しっかり確かめるよ。」
そう言って、ロリアさんは大きな倉庫へと向かう。
「杖は、核、核を包む魔宝石、それを更に包む透魔石から成る魔晶石と、芯、芯を包む素材、それらを包む外殻から成る魔力引導杖の2つから成っている。」
そう言いながら、ロリアさんは棚から大きな箱を次々と降ろしていく。
「核に使うのは主に、自然形成された魔塊だね。使えば使うほど持ち主に馴染みやすいし、自然の魔力から作られているから、何かの色に染まっているという事もない。」
そう言って開いた箱には、透明の、歪な形をした石がたくさん入っていた。
「それを包む魔宝石は、大体は持ち主の誕生石に、魔力を込めたものになる。でかい店では元々魔力を込めているものを使うけど、うちでは持ち主本人に魔力を込めてもらう。そっちの方が馴染みやすいからね。」
そう言いながら開けた箱には、宝石がいくつも入っていた。
「透魔石は、それらをコントロールしやすくする為のものだ。単体だと強い魔力が飛び散ってしまうのを、抑えるために付いている。」
そう言って開けた箱の中は、透明な石がたくさん入っていた。
「まずは魔晶石の素材決めから取り掛かろうか。サフィリアは風属性だから…風龍の谷辺りで取れた魔塊が良いかな。サフィリア、誕生日は何月何日かい?」
「9月24日です!」
「ふうん。名前通りだな…じゃあ、サファイアにしよう。ほれ、持っといてくれ。」
ロリアさんはそう言って、サファイアを私に渡す。
「透魔石は…どのデザインがいい?風属性向きならいくつかあるが…」
そう言って渡された紙には、5つ程の種類の、魔晶石のデザインが載っていた。
「えーと…じゃあ、このデザインが良いです。」
そう言って、四角錐が2つと、立方体が組み合わさった様な形の物を指差す。
「わかったよ。じゃあ、そのサファイアに魔力を込めといてくれ。さて、次からが本番だ。魔力引導杖の素材探しだよ。」
ロリアさんはそう言って奥へと引っ込んでいった。
手ぶらで戻って来たロリアさんは、やる気に満ちた様子で、魔力引導杖の、芯の素材が入った箱を漁り始めた。
「杖の芯に使われるのは、大体は針状の魔結晶だったり、グレートウルフやブラッドキャットの髭や毛だったり、良いものだと、竜の角を細くした物だったりする。だが、うちは更に良いものがあるんだ。世界にこれを使った杖は数本しかない。」
鳳凰の羽根さ。
ロリアさんは、にやりと笑って、伝説級の神獣の名を口にした。
「ほっ…鳳凰!?あの!?」
「あぁ。若い頃、会ったことがあってね。その時に3本ほど貰った。今日は、その内の1本をお前さんの杖に使おうと思ってね。」
「嘘ぉ!!!い、いいんですか!?大事な物なんじゃ…」
「大丈夫さ。ぶっちゃけ、会おうと思えば会えるんだよ。」
「え、えええ……」
ロリアさんって、何者なんだろう…
「さて、じゃあ持ってみて。」
渡された鳳凰の羽根を手に取ると、ふんわりと軽いようでいて、それでいてずっしりとした重厚感が感じられた。
魔力が、流れるように通っていくのを感じる。
「うん。大丈夫そうだ。魔力を込めて、振ってみて。」
言われた通りに羽根を振ると、先から光が、パチパチと音を立てながら溢れてきた。
「おおおおっ」
「流石は鳳凰だね。さあ、次はそれを覆う膜の素材決めだ。これは2パターンあって、溶かせる固体を溶かして、それに浸けて膜を作るか、それとも龍の皮膜や魔力を帯びた布で包むかだ。鳳凰と竜は相性が良くないから皮膜は無いとして…こればっかりは実際に試してみないと分からない。」
そう言ってロリアさんは、箱から色々な素材を取り出す。
「今から色々渡して行くから、しっくり来たものを言ってくれ。何となくしっくり来るって感じでいいから。」
そんな感じで、ロリアさんはどんどん物を手渡してくる。
私は、必死に「しっくり」を探し求めたのであった。
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「ふうん、マロウのエキスが混じったロウかい…中々面白いじゃないか」
あれから結局私が選んだのは、マロウと言う花のエキスが混ざった、濃い青のロウだった。
「何だか手に馴染んたような気がしたんです。しっくり来たと言うか」
「それで良いんだ。じゃあ、後は外殻だね。これなら、金属の物が良いだろう。何かデザインのリクエストはあるかい?」
「うーん…特に無いです。ロリアさんのセンスに任せます!」
「ははは、責任重大だね。良い感じになるよう、精々頑張るとするよ。」
ロリアさんは、そう言って笑う。
「さて、杖を作るのにサフィリアがやらなきゃいけない事は全て終わった。後は私に任せておくれ!」
「ありがとうございます!頼もしいです…!」
そう言って、私は深くお辞儀をする。
そんなこんなで、私はやっと杖の素材選びを終えたのだった。
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