03.晩夏の候、辺境にも面白いことはあるみたいです
それから10年の時が立った。24となり、一般的にはようやく入学準備を始めるかどうかの歳。
俺はと言えば...
「わあ、アルクス様、かっこいいです...!」
海に来ていた。
ここは男爵家所有のプライベートビーチ。というか小さめの惑星を丸っとビーチとして利用している場所だ。
この惑星、通称翠蒼海の星は海の割合が九割九分。正直居住には向いてない。なのでこうして基本的にはリゾートとして運用している。漁業をしようにもこの星、いまだに生物がアメーバ程度しかいない。環境改造してなお、なぜか生物の生育が良くないのである。
「そっちの水着も似合ってるぞ」
きらきらとこっちを見つめてくるリューに苦笑いしながら返す。
流石に200を超えているリューの容姿はさして変わらない。精々髪型が変わったくらいだ。まあ俺が変えたんだけど。何故かネットに転がっていたやたらと言うかもはや無駄にリアルなVR美容室シミュレーターで軽く練習した髪形を悪戯の一環で施してみたのだ。
まあ一応本気で似合うと思った髪型にしたとは言えその髪型で固定するとは思わなかったが。
それから割と表情が明るくなった。ウチの男衆は女性に下品な目を向ける者はいない。使用人にはそれなりに居るだろうが事情を聴いたセバスが清廉な者...というか彼女の周りを女性で固めたのである。あとは一日の殆どを俺と一緒にいたせいか、ある程度男性恐怖症はマシになったと言えるだろう。
まだ笑い方は変だが、かなり美人になった、様に思う。
まさか海に付いてくるとはな。人前で肌を晒すことに強い抵抗感を示していたので彼女の水着を拝むことは叶わないと思っていたのだが。
着ている水着はセパレートタイプ。曰くもう少し布の多い奴が良かったそうだがそう上手くは行かなかったらしい。まあ、その胸ではそういうのはなさそうだな。
「...揉んで良い?」
ばるんぶるんと揺れる乳に興味を惹かれて言ってみる。何度も言うが別に俺は興味がないわけではないからな。
「え...その...」
流石にエロいことに耐性はあまりつかなかったらしい。顔を真っ赤にして胸を隠している。
...変形する脂肪の塊。...すげえなおい。
「いい、いい。冗談だ冗談」
ひらひらと手を振る。
ああ、ちなみに俺はと言えば成長は当然したとも。
だいたい17くらいまでは古代世紀とそう成長度合いは変わらないからな。逆に言えばここからは殆ど成長も老化も200を過ぎるまでは無いが。
まず背が伸びた。元々低身長だったので敢えて何も描写しなかったが、この度めでたく190を超えた。よってリューとは約50センチ差である。
子供かな?
リューは「まだ…伸びる!」などとほざいているが10年前と比べて1ミクロンもプラスに転じていないのは明らかなのでアキラメロン。
あと、まぁ、思ったよりイケメンになった自覚がある。
主人公なんだから地味でいろって?HAHAHA、悪いね、俺はその幻想をぶち壊す!
残念ながら女顔の気は抜けなかったが。何となく髪伸ばして顔だけ出して黙ってればギリギリ深窓の令嬢って言われなくもなさそうな感じだ。まぁいい。肉体の方はバッキバキだからな。シックスパックだぜシックスパック。今日日軍属でもなかなかいないぜ?
女顔なのでウルフカットにしてみている。赤と黒の入り交じる髪だ、多少野生的な方が映える。
「いいわねぇ…アルクス様…」
「そう言えば先輩は貴族出身でしたね」
「辺境男爵の7女だけどね。暮らしぶりは平民とはいえ男だけなら色々見てきたけど、いいわぁ。今日日絶滅危惧種な童貞ってのもいい」
「まぁ貴族は…あれですもんね…」
「庶民の方が貞淑って割と狂ってるわよね。ホスト通いの私が言うことでもないけど」
「それはそう。…でもほんと、あそこまで綺麗だと逆に女あてがっとかないと幼年学校で危険じゃないです?」
「むしろそっちが逆。複数と関係持つのが当たり前なんだから女居たら殺到するわよ。ただでさえエロガキしか居ないんだから」
「成程…」
「…ちょっと味見できないかしら」
「気持ちはわかりますけど次期当主に粗相となると首飛びますよ!」
ま、さっきから聞こえてきてるメイドの話からして見目がいいのは明らかだ。それはそれとしてあいつらは減給。
「…さて、今日から暫くは海を使って訓練をするよ」
「押忍」
リューに、"師匠"に言われて俺は気を引きしめる。
師匠としてのリュー。俺からの評価は100点満点だ。
正直小さい子供に教えるにはあまり向いてないが、学校とかの教師であれば向いてるかも…いや、猿回しの腕はなさそうなので無理か。
となると、現状向いている教育対象は俺一人かもしれない。ある種運命的なベストマッチであった。
俺の実力はメキメキ伸びた。
それは例えば。
「じゃーまずは海割ってみよっか」
「おーけー。[リム・リネット・セオル・ハンクト・モールゼ]!!…[イア]!」
大型の魔法陣が出現、ぴいっ、と光線が放たれ、広がる大海原にくっきりと線が引かれる。
そして数瞬の後。
ゴゴゴゴゴゴゴ!
「「「「ええええええええ!?」」」」
メイド達が驚愕する中、海が真っ二つに割れた。
【海割り】。文字通り、海割りの神話を再現する、攻撃系を除けば水属性の最高位に位置する魔法である。
「どお?」
「余裕」
気絶癖が治った結果、俺の魔力量は人類最高峰だということが発覚した。成長期に鍛錬しまくった上、どうもたまたま俺の子供部屋は星の地脈の結節点の真上だったらしく、気絶式魔力鍛錬法(俺命名)の効能が非常に良く発揮されたらしい。
結果、俺の魔力は天変地異級を連射してもケロッとした顔で居れるレベルだ。
そして、主に我が師匠が教えてくれたこと。
魔力操作と詠唱短縮、さらにその応用。
「9重奏式・反復詠唱!」
ヴンッと同じ魔法陣がもうひとつ現れる。
所謂"初めに戻る"処理を差し込んだのだ。天変地異級の難易度となると、俺でも一門を完璧に放つだけでそこそこ大変だが、ある日リューが唐突に思いついた、「同じのを繰り返させるだけなら多少制御手放しても行けるんじゃない?」というアイデアのおかげで、1度放った「後」ならば増やせるようになった。その分大量に魔力を食われるが…俺ならば物の数では無い。
ヴンヴンと魔法陣は数を増やし、合計で9個になる。ぴぴぴ、と新たに線が走り、断層が増える。
最終的に最初のも合わせて十の切れ目が海に走った。
「おお…さすがに壮観だね、神話の御業×10って…」
「…多分非常識だよな、これ」
「それはそうでしょ」
やっておいてなんだが馬鹿馬鹿しい光景なことこの上ない。
「…とはいえ別に生物もいないし面白そうなもの…は無さそうだが…」
「でも別の魔法の維持の練習にもなるから行こう」
「へいへい。[フリューガル]」
詠唱短縮で唱えると、俺の体がふわりと浮き上がる。
リューはぱちんと指を鳴らしただけで飛び上がった。…すごいよな、ほんと。
俺は魔法の"式"をできるだけ簡略化して使っている。式は言わば魔力操作の手順だ。実は"海割り"も本当はもっともっと複雑な式と詠唱で、非常に効率が悪いのだ。この辺の簡略化はリューが得意で色々と教えてくれた。
だがリューが使う式は俺の逆で、態々非常に複雑化してある。
"魔導兵器"を積んだ自律機械を相手にする上では"読まれにくい"式を使った方が対応しづらいとか。暗号化と言ったか。
それを無詠唱かつ並行で使いやがるからとんでもない。
器用さと魔力量で上手くゴリ押すのが俺なら、演算速度で畳み掛けるのがリューである。
魔法陣を弄り回すという考え方は俺が発案だが、今じゃ師匠たるリューの方が使いこなしている。俺ほどは大胆に弄れないらしいが、その分使い方が巧い。
同じ魔法を後から増やす、というのを同時に幾つもやりやがる。
そうなると出来上がるのが"十の魔法が十ずつブッパなされる"という珍事である。流石に暗号化との併用は無理だそうだ。さらに言えばに中級上位(これでも人間が携行できるバズーカ程度の威力はある)程度ではあるものの、まぁヤバい。
今も戦闘経験のない俺がケガしないように色々な魔法を使っている。俺はヤバい師匠を発掘してしまった様だ。これ学会とかで発表しても例外扱いされそうだな。
当然ここまでくるには血を吐くような努力が不可欠であった。この世界ののんびりさを考えると異常どころでは無い。触発された師匠まで何度か死にかけていたが…まぁその結果が化け物×2なのだから笑えない。
機動兵器や宇宙戦艦の存在がある以上1人で戦争に勝てることは無いが…歩兵中隊くらいは置き換えられるかもしれない。
ふよふよと飛んでいく。
微生物しかいない海だ。水質こそ最高レベルに良いが、その分水底は殺風景だ。黒灰色の岩がごつごつと広がっているだけの非常につまらない場所。
余りにもつまらないのであくびを一つ。...その時
「あっ!」
「へびゅおおおおおおお...」
「あ、ごめんなさいーっ!」
唐突に声を上げたリューのせいで舌を噛んだ。
ええい、縋りついて死にそうな声で命乞いをするんじゃない別に殺したりしないから。
「[エクサ・ヒルトル]」
リューが俺の舌に【回復】を掛ける。回復魔法は”変性属性”。複合属性、人が使うにはそれなりに難度が高い魔法だ。水と毒属性から生まれる属性。毒から回復魔法に使う属性が飛んでくるのは中々に興味深い話だ。毒も薬も量次第という訳だな。
「いちちちち...で、何を見つけたんだ...」
【回復】特有の塩素っぽい匂いを発する口元をさすりながらリューに問いかける。
すると彼女はあ、と言って遠く、海底が大きく陥没している方を指さす。
「あれ、沈没船ではないですか?」
「は!?」
ありえない、という思いと共にそちらを見る。
確かこの星は6代前くらいから領地だった場所だ。当時には当然既に今の惑星探査技術はあったはず。
怠けなければ、だが...
はたして我らが先祖は怠惰であったらしかった。
そこに会ったのは半ばから割れた遥か昔の宇宙船。未だ水上船の意匠を色濃く残した...4万年近く前の、非常に古い大型船であった。
がこお...ん。
【炎熱切断】の魔法を用いて瓦礫やらを切り開き、俺とリューは船内に乗り込んだ。
「...きれいに残ってますね」
無詠唱で【灯光】を指先に灯し、リューが感嘆する。
「まー生物という生物がほとんどいないからな。防錆もきちんとしてるみたいだし、こんなものだろ」
船内は多少の塗料禿げをはじめとした劣化が見られるものの、ほぼ当時の面影を保っていた。
「ええと、損傷してたからちょっとはっきりしないけど、多分星宮シリーズ、補給艦の天秤宮級...ってところか」
四万年近く前、まだ”人類”に他文明が含まれなかった頃。星宮シリーズと呼ばれる軍用艦たちがあった。かつての故郷から見えた星々を名前に持つ軍用艦たちだ。今ですら名機と言われる程度には優秀な設計で、今もたまにリバイバル艦が設計されることもあるシリーズでもある。
いやはや、正直に言って大興奮だ。名機の一隻に乗れたこともさながら、何せ、初めての”冒険”だ。憧れてやまなかった冒険。未知の遺骸への探索。
ワクワクするなと言う方が難しい。
「前に設計図見たことあるから...艦橋はこっちだ」
この頃の軍艦は外から見える位置に艦橋を置かない。艦後方にあるはずだ。
狭いうえに傾いているので非常に歩きにくい通路を何とか進み、俺達は艦橋に辿り着く。
「えい」
がこん、と接合部を切り飛ばした扉を蹴り倒し、艦橋に踏み入る。
奥の方を見ると、多少禿げてはいるが明確に艦の名前が書かれていた。
「...『Libra』ですか。...一番艦ですかね?」
「確かに一番艦リーブラは行方不明ってあったけどさ...」
まさか有名な星宮シリーズ、それも補給艦とは言え艦級の由来になった艦がこんなところに沈んでいるとは思わなかった。
「...あ、データカード」
「何!?」
データカード。まあ文字通りデータが詰まったカードである。10×15cm、厚さ0.03mmの中に...このモデルであれば32エクサ(10の18乗)バイトが入る優れもの。今は64ロナ(10の27乗)バイトのものが開発されている。...まあ廃れ気味だけど。
この頃のだと本来は専用の機械が必要だが、現代は投影式計算機で解析できる。
拾い上げたリューからひったくる様にしてカードを受け取り、浮かび上がったホロソケットにカードを置く。
暫くすると音声と映像が再生され始める。
既に沈没した後なのだろうか、鳴り響くサイレンと傾いた物資が目についた。
『私はリューズ・カンタック。リーブラ級一番艦、特務補給艦リーブラの艦長だ』
最初に映った、スマートな印象のナイスミドルそう名乗る。銀髪に碧眼と冷たい印象を受ける男だが、その左目は大きな傷に埋もれていた。応急治療もされていなさそうなところを見ると沈没時に負った怪我なのだろうか。
『異星人め、こんな辺境に網を張っているとは思わなかった。残念ながらリーブラは任務中に敵の奇襲を受けて沈んでしまったことになるな』
自嘲気味に彼は笑う。
「そっか、異星戦争時代の...なのか」
ぼそり、とリューが呟く。
そうだ。人類が宇宙に飛び出して、始まったのは他の星から飛び出してきた連中との泥沼の戦争だ。
それの最後にして最大の異星文明間戦争が、この時代。通称”大銀河大戦”である。
『この毒沼の星に墜落して早三日。真っ二つの船体の修理なんぞ望むべくもないし無事に脱出する方法もない。急いで水質浄化装置を働かせているが...我々が死ぬ方が先だ。だからこれは遺書だよ。悲しいがな』
毒沼...?と驚いたが、続く言葉に察しが付く。
水質浄化装置。文字通りにどんな毒沼の水であろうと奇麗な水に変える装置だ。人が宇宙に住み始めたころには既に完成し、いまも殆ど構造が変わっていない。最大の特徴はその頑強さと寿命で、最初に作られたものは8万年後も現役であるそうな。
そしてなかなか効果も強力であるがゆえに、最大稼働のまま放っておけば四万年もあれば星一つ分の浄化も十分可能だ。...当然生物種が生育するためのあれこれも片づけてしまうため、ほんの少しを除き生物が進化することも、持ち込んだ生物が生き残りもしなかったのだろう。この機械、塩分等のミネラル分だけは取り除けないので、海水に違和感を覚えられなかったのも当然か。
『これを誰が拾っているかは知らぬ。もし渡ったら、と言う恐怖はあるが...その場合も時間の問題だろう』
ヴ、と地図...恐らく船内の地図が表示される。赤い点が光った。
『この点の場所に我々が運んできた”モノ”をしまってある。奴らの手に渡らなければ最悪良い。拾わずとも構わんが...もし、この大戦が終わった後であれば、願わくば”良い事”に使ってくれ。あれは...あれは、そういうものだ』
ぴちゅん、と地図を残して画面が消える。
「...どうします?」
「行くしかないだろ」
我らが祖先が勝利し、かつて異星人と呼ばれた連中は既に亜人として同化している。どうあっても”異文明”には渡らんしな。
地図の好転が示す場所。
「...はあ、はあ、はあ...随分な場所ですね...」
「ふー、ふー、まさか砕けているのを利用して辿り辛くするとは。考えたな...」
破断部、その瓦礫やら歪みやらで入り組んだ先の先。そこが目的の場所だった。
鍛えているとは言え貴族の子供の道楽で何とかなる程度の俺、生粋の魔法使いのリューでは中々な大冒険であった。
というかリューは魔法でズルしていた。おい、俺はまだ身体強化系は使えないんだぞ(肉体的な問題)、ズルい!...いやむしろこの場合ズルした癖にへとへとになっていることを突っ込むべきかも知れんが。
そこは小さな倉庫であった。墜落後に入ったせいか扉は開いたまま。未だ海水の香りを濃厚に放つ部屋の中、鎮座していたのは...。
「刀、か?」
ガラスケースに収められた、漆黒の刀であった。
「ええ、と...?なんか金属部分だけに見えますけど...わっ」
まだ濡れていたのかつるっと滑るリュー。
「...微妙に水着ズレてるぞ」
「え、きゃっ」
わたわたとトップス部分を直しているのを尻目に俺はガラスケースに近づく。刀はリューが言った通り、刀身だけの状態だった。
「ヤバいモノっぽく言ってたから、機動兵器か、せめて爆弾の類だと思ったんだけどなぁ」
言いつつ手を掛けると、思いのほかあっさりと開く。恐らく通電していないと作動しないタイプの鍵だったのだろう。
刃渡り約210cm。分類するなら大太刀か。だが確か大太刀と言うのは茎(柄に収まる部分)が短く、何かに乗って片手で操る武器じゃなかっただろうか。この刀の茎は長い。反りの感じこそ大太刀だがこれでは打刀を大型化したものである。
そう言えば親父がカタナは定期的に流行ると言っていたから当時のミーハーが作った適当な品か?
...いや、それにしては重要物品として戦時中に運ばれているのが気になるし。何より。
「...魔剣ですよね、これ...それも相当な」
魔剣。文字通り魔法のかかった、もしくは魔法の力を宿した剣。言わば剣型の魔導兵器。
だが魔剣と言ったってピンキリだ。というか今日日大概の剣は同時に魔剣である。ビーム状の刃を持つ剣や、超音波振動で切り裂く剣など、持ち主や作る者によってさまざまな魔剣が作られている。だが、この魔剣は...確実にそれどころの品じゃない。最高位魔法に匹敵するほどの魔力が漏れ出しているのだ。そう、漏れ出す魔力だけで、だ。振れば恐らく...いや、確実にそれどころではない。
「...凄い拾い物かもな」
裏返してみれば、茎に銘が入っていることに気付く。
「開闢刀[森羅神彌霧羽刃斬]...なんともまあ、大げさな名前だな...単純に長いし」
神だろうと万物を霧の中だろうと空へ逃げようと時を超えようと切り裂く...といった所か。うん、アホな名前である。
だがまあ、確実に協力な武器であるために拾わない選択は俺には無い。
その後親父に沈没船の話をしたら大々的に褒められた。なんでも歴史的な価値があるために高く売れたらしい。博物館が超高額で買い取ったのだとか。
せっかくあるんだからウチで使えばいいのにと思わなくもなかったが、流石に輸送艦の設計図は残っておらず、作り直しに近い金がかかるんだとか。そこまでして昔の輸送艦を使いたいかと言えばNOなので仕方のない話だ。
因みに刀の話は両親にも内緒だ。セバスに頼み込んでこっそり拵えを用意させた。だがなんでも普通の拵えでは刀身の威力に負けるとかで、とんでもない素材を使われた。ミスリルやアダマント、ヒヒイロカネ辺りはそういうもんかとも思ったが、世界樹より希少な偉大なる金星黒檀や”宇宙船殺し”の宇宙雷鮫とか、逆にセバスは良く秘密裏に素材を扱える職人と接触出来たな。...まあセバスだしいいや。
だが使い道が無かったとはいえ貯金していた小遣いの7割を持っていかれた。
ううむ、株に手を出すべきだろうか。
そう思いながら、俺はこの初めての冒険に、思い出としての終止符を打った。
これが、俺が”子供でいられた”最後の冒険とも、知らずに。
開闢刀[森羅神彌霧羽刃斬]........いや名前ナゲーヨ!ではあるけどまあいいやと採用。