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Galaxy Fantasia  作者: N-マイト
第一節 宇宙もまた海ゆえに賊もあり
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27.ピリオド、コレは一つの区切りの時

それから数日もの間、俺達は遥かに年上であるはずのお転婆な姫に振り回されることとなった。


”白”にお気に入りが出来たと言うことはどうやら国王陛下の耳にも入り、面白がってブランシェの外出許可を出しまくったのだとか。

いい迷惑...とは言わないが、何をしてくれてんだとは思っても仕方がないと思うのだ。

友人はそこそこ要るらしいのに、何故俺に、と思ったのだが、そうか、ボーイフレンド、ってことか。


ええい、余計なお世話だ。


楽しくなかったなどと言うつもりはないが、この星系の他の惑星に行く予定がおじゃんになったのは少々悲しい所だな。代わりにいい宿に泊めてもらったけど。


そして、今は帰宅するため、港に出向いた所だった。


「...何でいるんですか、ブランシェ様」


...そう、ブランシェは外出時の変装である”シェリー”の姿ではなく、王族としてのそのままの姿、”ブランシェ”としてそこに立っていた。


大勢いた取り巻きが一斉に俺を睨む。

感情は...嫉妬が七割、どこのアホがそんなフランクにと言うのが二割、面白がってるだけが一割か。...面白がってる奴は何なんだ?


「あら、新しい友人を見送りに来るのはいけない事かしらね?」


「恐らく王族がそれをやるのは前代未聞と思われますが」


ブランシェの横から付き人らしき男が突っ込む。だが本人はどこ吹く風だ。


「ふふ、だって、これから朋友、盟友となる殿方ですもの。お見送りぐらいは致しますわ」


爆弾発言極まれりである。ぎろりとした無数の眼が俺に向けられる。

そう。一致する思いはほぼ一つ。

”何でお前ごときが”白”様と仲が良いんだ!?”


見るからに俺より強そうな貴族たちから発せられる殺気ともいえる圧力に冷や汗をかいていると、ブランシェがさらに爆弾を投下した。


「あら、ご不満かしら。...なら、そうですわね、....わたくしの”騎士様”、とでもしましょうか」


ぎゃあ、と口の中で悲鳴が弾ける。

もう襲い来る圧力は最高潮である。クルスや桜といった歴戦の兵はおろか、機能すらない筈のプラチナムですら冷や汗を流している様に見えてしまう程だ。

「(どういうことだ!)」「(国王陛下(おとうさま)がある事無い事言いふらしたみたいでね。寧ろ、仲が良い事を見せないとまずい状態よ。...特にあなたが)」

暗殺っすか!?

どうもこうなるとただ同盟と言うか、仲が良くなっておくでは足らず、がっつり庇護下に入ってしまう必要があるとのこと。流れ的にそのうち遊びに来そうなんだが。...あの辺境に?


...つまりはもう逃げられない、と言うことだ。

国王陛下の考えは分からない。少なくとも暗君や暴君という噂は聞かないし、只の嫌がらせではない...と、思うのだがな。


腹をくくる。どうせ逃げられないのなら、英雄譚に描かれるくらい劇的に、ド派手な別れをしてやろうじゃないか。


すっと前に躍り出る。取り巻きが気色ばむが、気にしない。迷いなき歩みに戸惑ったのか、案外簡単にブランシェの傍へとたどり着いた。


何をするつもりかしら、とこちらを見ている。微笑んでやると微妙に頬が引き攣った。


「ええ、お請け致しましょう。私のお姫様(マイ・プリンセス)


胸に手を当て、にっこりと今度は分かり易く笑いかける。


ぴしり、とブランシェを含むその場に居た全員が凍り付いた。


そのまま俺は呆然としているブランシェの手をとり、出来る限り優雅に跪く。


「アルクス・ヴァン・オーレン。非才の身なれど、御身の為とあらば、たとえ辺境のその先...未開の宙域からであっても駆けつけましょう」


手の甲に口付けを一つ。


温度が下がる空気の中、ぽんとブランシェが赤くなる。


性に奔放なこの国ではあるが、故にこそいくつかの”行為”の権威が妙に高い。

手の甲への口付けは、古代世紀などにおいては尊敬だとか、そのくらいであったと言われているが。

”騎士の誓い”の伝承化と合わせて、”私を捧げる”の意味を持つ。

その意味は重く、これだけの衆目の元に行えば、鎖は一生俺を縛り付けるだろう。

だが、まあ。


「はわわ...」


銀河に轟く”白”様の赤面とこの表情を視れるのなら、やった甲斐もあろうと言うモノか。


「ではこれで。...我らが運命の元に、遠からず」


「え?あ、はい」


くすりと笑い、鷹揚に一礼。踵を返して船へと乗り込む。

仲間の視線が痛いが気にしない。

兎も角、そうして俺は惑星を去った。



「「「「「何してるんですか!!!??」」」」」


帰りの船の中。俺は留守番をしていたセバスを含む五人に激詰めを喰らっていた。

プラチナムが声を荒げている当たり相当焦ったらしい。

はは。


「いや、まあ調子乗ったのは否めないけど、あれくらいしないと決闘だのなんだの言われて撤退不可能になってたと思うけど...」


「そういうときの為に護衛が居るんですよ!城の中でもそうでしたけどこちらの対応前に突飛な行動をしないでください!」


正論です。はい。すみませんでした桜さん。


「まぁ、暫くは王都に近づく予定も無いんだし...このまま逃げちまえば良いだろ。辺境までやってくる奇特な奴はそう居ないだろうし」


「それはそうですけれど。感情論で交易を断られる可能性を考えておかなければなりませんが」


「うぐ」


じとぉ、っとした目をプラチナムに向けられて思わずたじろぐ。

実際領地のみで発展を続けるのは不可能である以上どうしても他の領地との交流は必須だからな。

そうなれば致命傷になりかねないのも事実だ。


「ついでに言えばあの姫さんは他国でも人気だからねぇ。下手すりゃ全世界から爪弾き者だ...ですよ?」


うぐぐ。


「ええと...あー、その...私は、かっこいいと、思いましたよ?」


リューがそう慰めてくれる。最初は彼女も詰める予定だったみたいだが、思ったより刺されているのを見て擁護に回ったらしい。...君だけが癒しだよ...。


「そもそも別段女性経験がある訳でもないのに気障を気取っても悲しいだけでは?」


ぐはぁ!?


他の四人が”それを言うんですか!?”という驚きの顔を向けるが当のセバスはどこ吹く風だ。


「女性関係に堅いことはこの国の貴族にはないある種美徳ではあります。私もその点は良いとは思います。が、女性遍歴の無い身で王女に手を出そうとするのは愚の骨頂かと。幾ら好ましい特徴とはいえ、他の貴族が狂っているとは言え、文化は文化。抱いた異性の数を価値とする者も多い以上、寧ろ軽んじられブランシェ殿下に迷惑がかかる可能性もございます」


...正直に言ってそれを忘れていた。

そうだ、この国の貴族からしてみれば、例えば俺がブランシェにアプローチを掛けて彼女が絆された場合、「誠実でなければ靡かない」ではなく、「クソ童貞にすら靡く尻軽」とされかねないのである。

実際我が母は一部では童貞食いの趣味悪などと言われていたのだから、それは明らかである。

...不味かったか?


「軽率な行動であったのは間違いないかと。ただし、単独で複数国家を悩ませた宙賊を撃破したと言う圧倒的な功績が大多数の貴族を黙らせているようですが。ネットワークでもさしたる炎上はしていない様ですし」


プラチナムが腕を組む。


「...まあ、殿下に多少の悪評が付いたことは否めませんが、それはあの状況に陥った時点でも付いてしまうモノですし。年下好きもまままある嗜好でしかありませんしね...」


生後6歳までしか愛せないとか言う狂人もいるからなこの国。ギリギリ子供が生める年齢なのが恐ろしいったらありゃしないが。


「活かすしかありませんね。アルクス様はこれで”ブランシェ様の騎士”となったわけですから」


うむ...本物の騎士を部下にして騎士を名乗る羽目になろうとはな。


「訓練を見ている限りは私を超えられるポテンシャルは十分にあると思いますよ?」


...え、そうなの?


「私とて騎士としては中堅くらいですが」


いや、それでも騎士のお墨付きをもらえるとはな。

桜の強さは騎士の伝説に恥じない物なのは間違いない。


「ってことは、実力を合わせる必要があるのか」


「そうですね。今なら多少は”子供だから”で誤魔化せる部分がありますが。先ほどはああ言いましたが自領に引きこもっている分にはさしたる影響はないでしょう。そも、他領との交易は殆どがあくまでも”商人との取引”です。寧ろ感情論で切る様な商人とは付き合わない方が良い、と考えることもできますから」


プラチナムの言説に皆が成程と頷く。

商人であれば確かに金の匂いの方を優先してしかるべきだよな。...経済基盤の方は食を中心に発展を続けている。そのうちに工業にも手を出したいが、それが当たるか、かなぁ。


「経済については問題は........もんだいは」


「あるよな?貰った所領でいくつか面倒なものが」


「う”」


プラチナムが頭を抱える。...こいつ微妙にブランシェと会った後から感情が豊になりつつあるんだよな。...なんでだ?


「それについては、お助けをいただきたいところではありますが。それ以外についてはこちらの想定内ですので恙無く」


「ええと、アルクス様の騎士の再来、としての噂はすでに上がっているらしい...です。今回の事では...どうでしょう?」


他人の事を推し量るのが苦手なリューが、他国を回り見識のあるクルスに助けを求める。


「あた...私は加速すると思いますがねェ。大々的に格好つけて見せたうえで、嘘だと言うにはでかい証拠と王様のお墨付きがある訳ですしね。まぁつまり、必要なのは武力ですねぇ」


...成程。


「武力、か。現状では足らないか」


「所詮は辺境の下級貴族ですからね。アルクス様の実力も年齢に比しては驚異ですが、まだ上は多く居る。...今の成長速度のままではいずれ...」


ううむ、そうなるのか。相手は超高級な身体改造その他まで使って強くなるような連中だからな。俺も身体改造は施すことになるかもしれないが、寧ろ抜きで迫らなければ”騎士”にはなれない、と。


「そういうことですね。ビシバシ鍛えますよぉ~」


桜が微妙に怖い笑顔で張り切る。...うう、俺の生活はどうなるのだろうか...。

なんか間延びしましたが第一部終了です。

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