表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

生き延びた少女

感じるのは、耳が痛いほどの沈黙。

それに熱。

戦闘でこの付近の温度が上がっているのだろう。

冷たい空気が、他のエリアから流れ込んでくる。


(あれ、この感覚は、確か前にも)


既視感を覚えながら、目を開く。

そこにはもう、黒き鱗も、巨大な爪もなかった。


──代わりに、細く、しなやかな腕。

──手には、血塗れの剣。


眼前には、倒れた火竜リリィ・バルガロスの亡骸。


(わたし)


手を見下ろす。

そして、気付いた。


寄生していた。

今度は、火竜を討った、あの銀髪の少女に。


小柄な冒険者の肉体に、リリィの意識は滑り込んでいたのだ。


「……あ」


喉から漏れる声すら、自分のものではない。

小さく、澄んだ少女の声だった。


(わたしは、また生き延びたんだ)


傷だらけの手で、剣を握り直す。

それは、確かな「生」だった。


けれど、この新しい生は、脆く儚いものだ。


火竜から人間へ。

寄生姫、リリィ。

彼女は、再び生きるために、新たな戦いを始めなければならなかった。


(今度こそ、静かに生きたい)


切なる願いを胸に、リリィはそっと剣の血をぬぐい鞘に収めた。

だがその背には、気付かぬうちに、小さな、黒き鱗の模様が浮かび上がっている。


寄生の痕跡は、決して消えることはないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ