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置き去りの少女

「……ひどい、よ」


か細い声が、石壁に反響する。

深く、暗く、じめじめとしたダンジョンの中。

血と泥にまみれた小さな影、リリィは、ひとり座り込んでいた。


理由はわかっている。

スキル「寄生」

生まれたときから宿していた、不吉な名前の力。

使い方も効果もわからない。

不審がられると思い隠していた能力。

けれど、それが原因で今日、彼女は捨てられたのだ。


『寄生スキル持ちなんて、信用できるか』


『なぜ隠していた』


『隠れてパーティーの経験値、吸ってたんだろ?』


『気持ち悪いんだよ、化け物が!』


罵倒され、怒声され、突き飛ばされた。

最後は誰もいなくなった。


仲間たちの影はどこにもない。

代わりに、ダンジョンの奥から這い寄ってくるのは無数のモンスターたちだった。


「い、いやっ!」


小柄な身体で必死に走る。

牙を剥く狼型魔物、粘液を撒き散らすスライム、鋭い羽音を立てるコウモリ。

それらを必死に避け、逃げ、ただ生き延びるためだけに進んだ。


しかし。


轟音と共に前方から吹きつける熱風に、足が止まる。

壁を溶かし、石を焼くその中心に、いた。


紅蓮の鱗をまとった巨竜。

火竜、バルガロス。


(こんなの、無理だよ)


手も足も出ない。

出す気にもなれない。

手が震え、持っていた短剣は地に落ちる。

許してほしかった。

見逃してほしかった。

だが、炎と殺意を湛えた瞳は、リリィを見下ろして。


「あ……」


咆哮とともに、視界が真っ赤に染まった。

見えるのは火竜の顎のみ。


リリィはあっさりと。

あっけなく。

無残に噛みつぶされ、飲み込まれてしまった。


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