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散々悪女として踊らされた人生は突然終わりを告げた〜舞台飾置の少女は幸せを見つける〜

作者: もち美

カタカナで表されたものは前世視点

例:(かれ・カレ)

主人公(彼女)は世界で一番、幸福な人間だった。


道を歩くだけで人々は笑顔になって、


どんな問題も解決してしまって、


ワタシを蔑んでいた弟とも仲良くなって、


冷えた両親の関係も取り戻して……


醜子と揶揄う婚約者とも仲睦まじく、

将来側近となる者たちからすら少し熱を帯びた視線で見られていた。


そんな彼女と違って哀れで無様な悪女(ワタシ)

何度も繰り返して、今までの生活で手に入れることも叶わなかった願いはたった1つの想いで容易に叶ってしまった。


「この世界から消えてしまいたい」


『ワタシと言う人間を消して欲しい』


屋敷で孤立し始めたある日に裏町で手に入れた濃い()()の宝石がはめ込まれたの不思議なペンダント。

「どうしようも無く辛いのなら握り締めて」「心の中で願えば叶うから」と、手に取った瞬間にその言葉が流れ込んできた。


それから家に帰っても、ワタシが居なくなった事も探されてすら無かった。


幾度目かの婚約破棄。暗闇と呼べる曇天の空を見上げながら遠くで肉を断つ音が微かに、紅を眺め滑るように暗転する視界。これが走馬灯なんだと落下していくような感覚の中、何故か最初の人生で拾った大きな卵を思い出した。下手に服を汚してしまえば何を言われるか分からないからと家にこっそり持ち帰ることも出来ず、毎日あげれるだけの魔力を注ぐ以外できる事が無かったが…いまになってどうして思い出したのだろう。



意識が浮上しいつもの事かと瞼を開くといつもの風景とどうやら違ったらしい。

随分と部屋は狭くなっており、それどころか今寝ているベッドもそうだが随分と安物になっているようだった。ネグリジェの着心地もそうだがそれより一体ここが何処なのか検討もつかない。


ガチャりとドアが開く音がした。思わず隠すように目を閉じ寝たフリをしてみる。

心配そうな声と共に名前を呼ばれた。


聞こえてきた言葉私じゃない、あの女(彼女)の名前を指しして呼ばれたのだ。


思わず叫びそうになったが寸前で言葉を飲み込み声のした方を見る。

優しげな顔立ちの侍女とパチリと目が合うと突然飛び上がるほどに驚くとドアの方に駆け寄り「お嬢様がお目覚めに!!」と声を荒げながら駆けていった。

扉の方からドタドタ複数の足音が聴こえたと思ったら涙ぐみながら私の手を握っている。多分この館の主人で彼女の両親だった人だろう。でもこんなに私の事を想ってくれていると感じるとこんなにも、違うのかと…。胸の辺りが感じることも無かった温かさを覚えて私には今まで味わうことのなかった思いが込み上げてきて酷く動揺してしまった。


あれからと言うもの周囲は目覚めて直ぐに私が気が動転してしまったと思ったらしく、しばらくは家で療養という形で留まっていたがやはり男爵家に召し上げられる程の豪商。外出が出来るようになったと判断されてからは各地を飛び回りながら過ごす日々だった。でもついてまわる中で様々なもの学び、触れて公爵家で勉強していたあの時よりずっと有意義でいて楽しかった。もちもん商会を引き継ぐ勉強だってしてはいるがそれでも失敗して鞭で打たれる事も弟と比べられるとこも無かった。褒められた、励まされた。…それだけで泣いてしまいそうだった。



悪女(ワタシ)主人公(彼女)と成ってしまってから数年経ってから気づいたが、どうやら少しづつズレが生じてしまっているみたいだった。

15歳で高等学園への編入してきた男爵令嬢。それも授爵したのが長年の孤児院等への多大なる献金により…と、理由が理由の為かようやく目を瞑れる程のマナーが身についたからとかで正式に入学したらしいが、その授爵したと思われる予想範囲の年になっても一向に手紙が来ないのだ。


多少ズレがあったもしても不名誉だが何回もやり直してきた人生という名の試行回数でおおよその範囲は絞れてしまう。……しかし気にする間もなくまた諸外国への商談に行く事になり頭からその話題は抜け落ちてしまった。


これを運命の強制力と言うのか。15歳の誕生日にお父様からの大事なお話と、食事の席で高等学園からの編入だと言われてしまった。平民からの特待生枠との事。

貴族だけではなく平民から優秀な人間を引き抜く為に今年度から設けられたのだと。


考えたのはワタシ…では無くおそらく彼女。


建国以来きっての才女だと囃し立てられているらしく、今までは国から国へと飛び回る日々に過去()では考えられない温かさで忘れていたが、たまたま訪れた地で彼女についての記録や見た事のある品や偉業…と呼ぶべき発明を見た。


長時間の船旅による壊血病

それに対する特効薬(予防策)


高度な魔法使いなら転移の魔法でなんの問題も無いが商船やそれを扱うことの出来ない大多数の人間には死活問題だった。

だが領内にある港町で酸っぱいだけで何も使えないと腐らせるほど余っていた果物を活かし、そこから噂が広まって行ったと云うのだ。「壊血病の治る町」と。


その偉業の主だと知られるのはまだ後にあるが、それを皮切りに大きなモノでは上下水道の整備や流行病の特効薬と国を超えた大偉業を成し遂げた……隣に婚約者(協力者)の名前を添えて。

…その文字を捉えた瞬間、呼吸の仕方を忘れそうになったが、しばらく目を閉じて数回ゆっくりと深呼吸をし彼女について綴られた本を読んでいた。


前例あっての今回の事が採用されたのだろうと話を置き、20名の推薦と5名の特待生。頭脳や魔法について秀でており、大半がが大雑把に区分けされた場所にある国営の学校の推薦でその枠に入った者。中には冒険者をしていて力で捻り取っただとか、気まぐれに披露した魔法が目に止まったとか。

そうして入学式が始まり、生徒会長の挨拶を読んでいたのはかつての婚約者。役員の紹介で副会長として隣に居たのは、仲睦まじく見つめ合いながら話しているワタシ(彼女)だった。


……昔はあれだけ苦しんでいた心もどうやら軋むことすら亡くなったらしい。


学園生活はにマナーについての勉強から始まった。

私はワタシとしての知識があった為、そつ無くこなせているが、フラットな視点…つまり平民視点で言うなら「無理」だ。

一つ…そこに理由が凝縮されているが貴族の中でもマナーも然り、歩き方やカーテシーにも厳しいとこで有名な女史を教師として招いているようだ。確かに損は無いが、余程の功績でも挙げなければ平民如きに国王との謁見するレベルな教師は要らないと思うが……。

周りを見れば崩れ落ちるように大号泣している者がちらほら。そんな中で平然としているのが多少アンバランスさもあるようで、着いてこれている私に先生からの質問(疑問)が飛んできたが商会の名前を出すと納得したらしく無慈悲にも平民(初心者)に優しさの欠けらも無いレッスン2が始まった。



太陽の日差しが身に染みる頃、テスト結果が張り出されていた。順位は生徒会への招待状が来ないギリギリの調整。

上から下へ視線を落としていくが、まぁ納得というか順当というか…なんて面白味のない並びだった。ヒソヒソと陰口を叩くような声が聴こえるが、「平民の分際で10位近くの点数が出せるはずない」との事。…確かに。やはりミスっていたようだった。


逃れられる運命なのかただの興味なのかその後数日、元婚約者周りの人物らが私に話しかける為なのか出待ちをされた。「私は自慢では無いが名のある商会の娘として家庭教師は付けて貰えていたから話をするなら彼の方へ」と言う内容を告げ、おそらく自力で平民ながらに1桁の順位に座っていた人物へと興味を逸らすように促した。

だがなんの嫌がらせか私へ突っかかって来るからと困惑していると彼女が来てくれたお陰で助かった…が、


目の前でイチャつきを見せつけられそのままフェードアウトして行ったが、なんだか助かった感じはしなかった。



そんなこんなで適度な距離感を保ちながら時間は流れていき2年の秋、今までの展開とは確実なズレが顕になってしまった。


学園での授業は多岐に及んでいるが、最近は山の麓まで降りてくるはずのない魔物の群れや特段凶暴な『混じり』と呼ばれる他の魔物を喰らった事による討伐の厳しい個体すら現れ始めたのだ。その為休日に家に戻るついで話を聞いて回ると、ロクに戦う術の無ち人々は不安の声が漏れていた。

そして、今すべきでは無いのでは…?と訝しんだが去年と同様に学園祭は開催された。まあ、イベント事として魔物の討伐をプログラムに組み込んである程度のフォローはされていたから良かった…のか??

その日は貴重な回復魔法が使えるから森の中であっちこっちと引きずり回されて知らなかったが、なんだか拍子抜けというかなんとも呆気なく親玉と推測されていた『混じり』の王、キマイラが討伐されてしまったというが…


今回の目的だろうおめでとうのキスを頂いて誇らしげ(恥ずかしそう)に笑っていた。



3年の冬…の話より少し前の事。凱旋するほどの勢いでキマイラ討伐の事を話し、魔物の暴徒化は治まったのだと吹聴して回っていた。が、たった数ヶ月経てばすぐに至る所で見かけるようになってしまった。幸いにもまだ負傷者も死亡者も出ていないが、結局は変わらずに緊張の糸を張り巡らされたまま町全体は過ごしていた。

そんな周囲とは打って変わって彼女らは能天気な雰囲気を撒き散らしていたが、その様子を見て他の生徒が不満を持たない理由が無く。…その結果起きてしまった暴動。


平民と貴族という簡単な対立では無く下級貴族&平民と貴族だなんて鎮圧するのも容易ではない構図。私としては勝手に争ってろと傍観の姿勢に入っているが、たまに「前にあいつらに難癖付けられてただろ」とか同調を誘って来るから面倒くさい。興味無いと一蹴出来ればそれまでだが、座学も魔法もひっくるめてこっち側(平民と貴族)では自慢では無いが私が首位の成績だ。多分それを旗印にして扇動でもしたいのだろう。

私は家のために励んでいるだけで…ただ。



そうして対立という名の諍いは鎮まることなく来てしまった『聖女生誕の日』。

世界が魔物に脅かされた時、清き乙女が…とかで救ってくれた事を感謝する日であり学園では冬の長期休み前、最高学年の3年生にとっては卒業パーティーの意味合いがある。


ああ…憂鬱。叶うなら休みたい……。


これでも強い魔法適正での特待として在籍しているし、座学で下げようにも嫌味の応報がウザったらしい事間違い無しでどうしようもない。最近では高位派閥が私がリーダー動いているだとか王位政権に楯突くレジスタンスを主張してくる。昔は弟だった存在にも敵意剥き出しステルス魔法弾撃たれたりとか私が何をしたんだ…。憎悪の視線向けられたとて今更傷つく心なんて持ち合わせていないが…私はただのしがない商会娘で、この国は大口とはいえ1つのマーケット会場にしか過ぎない。


しかしこの日の為にお母様が張り切って仕立ててくれた淡い水色のドレス。首周りが花柄のレースで飾りだてられて後ろに流すようにフリルを付けてボリュームを少しだしているがこちらでは珍しい膝下丈である。お父様からは手紙を貰って聞いてはいたけど最近取引を始めた工房から直接買い付けたんだろう小さな宝石が散りばめられた金細工のブローチ。これだけ力を入れただろう品々を間近でみてるどれだけ愛されているのかがまざまざと実感する。いつもは死んでいるとまでクラスの人間評される程のポーカーフェイスが崩れそうなのを鏡を見て慌てて治して…あれ?。


最後に目に付いたのはドレッサーの上にポツンと敵な置かれた最近入った「素敵な方からのプレゼント」と貼られた小さな箱。『素敵』と褒めるだなんて人事面を支えるお母さまが言うとは随分優秀な人なんだと感慨深い。

そんな事を覚えながら目の前の箱のパカッと開く方を持ち上げて見ると小ぶりながらも思わずため息を漏らしてしまうほどの美しさを放つ澄んだ()()のピアス。鏡をよく見て耳に付けて見るが、私には不釣り合いなのでは無いかと思う程の輝きを魅せている。

より近くで見るため立ち上がったがそれと同時に音は聴こえないが会場が少し揺れた。それのせいで思わず転けそうになったが寸前でもち堪えられた…危なかった。

気を取り直し、キラキラと輝くピアスに触れてみて気づいたが余程魔法を扱うことに長けていないと感じ取れない程に微かな魔力痕。鏡を前に左右に揺れるように手慰みに弄りながら、遠い日を感じた懐かしさは一体何なのだろうか……?そう考えた。


コンコンとノックの音が鳴り、自分らがパーティー会場への入る番が回ってきたらしい。しかし随分と長い間待たされている気がした。今は公爵家の令嬢ではなく、豪商とは言えどただの平民だから当たり前と言えばそうだ。この身に成ってから15年近くも経つのに感覚が抜け切れて無かったらしい。



同伴する相手はいない。というより知らないフリをした。両親にはちゃんと居るからと嘘をついて独りでにコツコツとヒールの音だけを響かせて廊下を歩く。

無機質な顔をする給仕達が扉に手をかけて開くと、おそらく既に私以外の生徒達はここに通されており内輪で盛り上がっていた者らは私が到着した事を確認すると一斉に静まりこちらへ視線を向けた。1人で来たことを非常識だと嗤う者がいれば異様な雰囲気に困惑している者もいる。カツカツとしっかりした足音を踏み鳴らしながら、とりわけ存在感を示す群れが割れる人並みを進み歩んでくる。

「卑しい愚民の分際で遅れて登場するなど随分と生意気な事だな」と傲慢な物言いで扉の前にポツンと立つ私へ向けてそう言い放った。やはり遅れていたのかと周囲の状況に比べて妙に冷静な心境で目の前のその人らと相対していた。


昔の私が心の底から好いていた人はフィルターを外してしまえばこんなにも凶悪な顔をしていたのかと改めて恋という名の病の恐ろしさを実感した。「何度も同じ人に恋をした」と、そんな風に書出せばロマンティックに感じられるが実際のその後は断頭台や毒に衰弱、特殊なものと言えば『黒の地鳴り』と呼ばれるものの贄に捧げられる等の多彩な死の末路に行き着くだけなのだ。今更ながら何度も自分を殺した張本人をずっと慕っていたと考えると随分と私は正気を失っていた。もしくは強迫観念といったものだろうか。


ほとんど名指しでこの国の王子が貶しているという現場に周囲はこれでもかとザワついている。特に接点があった訳でもない、素行が悪い、後暗い者らと関わりがあるとか自身ら周りに擦り寄ってきて迷惑を人物だとかそんな理由がある訳でもない、あちらからすれば冴えない地味な平民なのだ。それを何故、殺さんとばかりの表情で見ているのか。


「お前だな、ガドナー・アンジェル。このような惨事招いたのは」


そう言われて、声にならなかったただの空気が喉を通り過ぎて行った。

あの人は、いま、何と……?。

「野生動物の騒ぎはあのキマイラを討伐を完了しだい、鎮静化しているはずだったのだ。それを事を荒立てる為に、貴様が有している『光』の力を使い脚光を浴びる為に仕組んだのだろう?。あたかもイザベラがしたかのように見せかけてな」

ゴミを見るかのような目と怒りをにじませた口調で今回の卒業パーティーをぶち壊してまでの告発…断罪をするかのような発言を王子は言い出した。


光魔法は別名聖魔法と呼ばれ、瘴気を纏った魔獣にはとてもよく効く。しかし5大属性とは違って光魔法は先天性な素質でしか扱う事のできないものだ。もちろんその対と為す闇属性もだ。もちろん精神を操る事のできる闇魔法を装って自分が目立つなどと考えた事が無い。

卒業したら商会の本格的に手伝いをしていずれは継いだら優しい人と結婚して…。5歳の誕生日を迎えて人が代わったかの様な子を気味悪いと避けたりもせずに育ててくれた両親にめいいっぱいの感謝を送りたいのだ。散々貴族の汚れた()部分なんて見飽きているし、むしろ生徒会(そちら)とできるだけ関わらないように過ごしていたので身の潔白は自分自身が1番よく知っている。


でも、声が出なかった。

初めて味方だと思っていた婚約者に突き放され沢山の人の前で堂々と断罪されたあの時。

今ではその人生でのワタシが酷い人間であった事を認めれるが、結果として善悪関係無く『悪女(ワタシ)はその様にされなければならない』と、まるで(ロール)が決まっていると言わんばかりに何もしてなくとも誰かがした悪事がワタシの元へ収束し断罪(ころ)された。


絞り出すようにか細い声で否定するが、嘘をつくなとは王子(かれ)非難し続けざまに周りが同調する。

その様子は味方の居ない裁判で傍聴席に居るみたいな周囲は巻き込まれたく無いからか、それとも平民だからなのか……結局は皆が持っていない必要じゃ無かった特別な『力』が有ったから嫉妬を買っていたのかもしれない。別に自慢とかは全く無いけれどずっと過ごしてきた人生で、今は隠れてて姿は見えないけれど公爵家の令嬢で王子の婚約者だった時も人としての粗を探されていたのだろう。

そんな事を考えていたらミシミシと心が折れそうな音がする。パラパラと何やら小石と砂が舞い散る音がして……


バンッ!と、開け放たれる扉に慌てた様子の兵士が王子に駆け寄る。突然只ならぬ空気が入り込んで来て傍聴席から立つ皆はざわめきを取り戻した。大急ぎで会場から離れるようにと指示が出されていが、もう遅いらしい。



大きな生物(もの)から爆撃を喰う音と共にが会場半分を瓦礫山の様にした。鈍い足音と砂煙の中に浮かぶシルエットがコチラへと近づいてくる。

誰もが足を動かすことが出来ない。

未知の恐怖に支配され足が竦んでいるのだ。


距離がこちらへ近くなるにつれ小さくなってゆき人型までになるとその姿が顕になった。

この世ものとは思えない程の美貌の持ち主。緊張感に包まれていた雰囲気は彼の姿に息をでどうやら私を視界に捉えた瞬間に笑みを浮かべている。チラリと周りを見ていたら私からは遠すぎて顔はぼんやりとしか確認する事はできないが、彼女はどうにもその目の前に現れた人物に動揺(歓喜)しているようだった。そうして(ソレ)は見つけたと言わんばかりに、フワリと、そよ風をはためかせた。


「見つけた。僕の天使(イザベラ)


その後の出来事は何も覚えてない。



…気がついたら商会が最近拠点にしている国へと戻って来ており、めちゃくちゃ号泣している両親の顔にほっとしたのか思わず笑ってしまった。


何故海と1つ山も国も越えた距離にある場所に居るのかと聞いてみたらどうにもピアスを贈った将来有望な職員が魔法が得意とかで国に居た時に森の動物や渡り鳥に話を聞いて森の様子がおかしい事に気がついていたとか。

結果的に『黒の地鳴り(魔物の氾濫)』は起こってしまい今は王都は壊滅的状況に陥っているらしく、その原因は土地の主である竜が溜め込んでいた瘴気が森へ拡がり爆発してしまった末路。普通なら瘴気を浄化することの出来る光魔法の使い手が山々を巡回していれば終わる話だが今回はそうもいかないレベルの濃さと範囲でそれに加えてどうやら被害の大きさにはほかの原因があるらしい…憶測の域を出ないが。



あれから数年が経ち私はガルズと言う青年と結婚をした。そこに至るまでの理由とか詳細は省くが、やっぱりお母さまの見る目はもはや才能の一種だ。グングンと成績を伸ばし結果的に3年も経たず商会の会長をしていたお父様の右腕的ポジションまでになっていたような人だ。


「ガルズくらいの能力があれば商会に留まらずに自分で新たに立ち上げた方が良かったと思うけど…」


「僕がここに入ろうと決めたのはアンジーが居たからで、自分の商会を造る為に学ぶだとか思いもしなかったさ」


「そうなの?」


もちろん最初っから才能があるだとか自覚することも覚悟ほぼ無いが…。と言うより「私が居た」って、こっちに戻ってからの初対面だと思うけど?。

私が疑問に思っている事を感じ取ったのか彼はふんわりと笑みを浮かべた。


あれ、この笑顔どこかで………


何か喋ろうと口を動かすより前に彼は瞳の色と同じ、濃い()()のネックレスを私の首にかけこう言った。


「ずっと前にキミに助けて貰ったから」

大型の生物が飛び去ってから数時間後__


意識が浮上し無理やり身体を起こすと広がる世界は無惨な光景となっていた。

綺麗だった王都は瓦礫と魔物が蔓延るだけの無法地帯と化し、遠くの方で一般市民が襲われてる姿が見える。近くで倒れていた側近の2人と愛しい彼女を起こして近くを探索しようと決意した。が、


「だから言ったんだ!あんな無謀な事をするのは辞めるべきだって!!!」


「散々功績をあげていたんだ。確かに俺たちの代で黒の地鳴りが起きるなら、聖女という目をそらす事の出来ない立場が出てくるからこそ手を差し出すべきだった……!」


「ご、ごめんなさい…わたしが、わたしが不安がったせいで……」


それぞれが違う形でボクを責めてくる。


何がいけなかった?


彼女が零した不安に便乗してしまったせいか?

それともあの子を見た瞬間の胸の苦しみを、謎の感情を無視したせいか?


必死に考えた。


後ろから迫り来る大型の魔物の気配に気づかず3人が悲鳴をあげ逃げ出す音が聴こえない程に。


微かに走った小さなノイズ



あぁ…そうだ。あの子は___

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