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メグタン記念日

作者: ノリック

メグタンは五歳の女の子。

 ペガンはメグタンが生まれた時から一緒にいる黒い猫。

 メグタンとペガンは大の仲良し!

 何をするにもどこに行くにも一緒です。


 今日もメグタンとペガンは仲良く庭で砂遊びです。

「ペガン、そこのシャベル取って。この小山、もっと高くするの」

「うん!メグタン、もっと立派なお山を作ろうね!」

メグタンとペガンは大いに砂遊びを楽しみます。

 メグタンとペガンは砂と水でほこらを作ったり、泥だんごを作ったり、それらをペガンが壊してメグタンが「なにやってるのペガン」とおままごとをしたりと楽しい時間を過ごして、お昼から三時までたっぷり三時間も砂遊びをしました。

でも、メグタンとペガンは張り切りすぎて少し疲れてしまいました。

「メグタン、僕、ちょっと疲れちゃった」

「私も、ちょっと砂遊び張り切りすぎちゃったな」

 その時、ペガンが、あっとなにかに気付きます。

 ぐ~っ!

 ペガンのお腹が、音を立てて鳴りました。

「僕、お腹空いちゃった」

「私も、砂遊びして、お腹空いちゃった」

そこへ、メグタンのお父さんがふふふっと笑いながらやってきました。

「メグタン、今日はメグタンをビックリさせようと思って、メグタンにサプライズのプレゼントを用意したんだ」

「え?何を用意したの?お父さん」

「これさ!」

 お父さんが箱の中を開けると、中にはメグタンの顔ほどもあるでっかい生クリームの、上に飾られているイチゴを中心にふわふわのスポンジの中にはメグタンの大好きなフルーツがたくさん使われている、メグタンが一番お気に入りのとってもおいしそうなケーキが入っていました。

「メグタンの大好きなケーキだよ!」

「わぁ~!」

 おいしそうなケーキに、メグタンは大喜びです。

「ありがとう、お父さん!」

「さぁ、ペガンの分もあるよ。みんなでケーキを食べよう!」

 おいしそうなケーキを囲んで、二人と一匹は甘くておいしいひと時を過ごします。

 だけどペガンが、にやにやしながら何か呟いていました。

「うっしっし、ビックリサプライズは、とっても喜ばれるんだな。いいことを覚えたぞ」


ある日のことです。

メグタンは砂遊びをしようと思って、ペガンを呼びました。

「ペガン、砂遊びしよう」

 でも、ペガンの返事はありません。

「ペガン、どこにいるの?」

 メグタンはペガンを探して、家中を探しました。だけど、ペガンはどこにもいません。

「もう、私に黙って、一匹で出掛けちゃったのね」

 メグタンは諦めて、一人で本を読むことにしました。

 それから五時間が経ちました。

もうすぐお夕飯になるというのに、まだペガンは帰ってきません。

 メグタンは心配になって、家の近くを探しました。だけれど、それでもペガンは見つかりません。

「ペガン、ペガン!どこにいるの!?」

 メグタンはペガンを心配して、家の近くをさらにくまなく探しました。

 そこへ、メグタンのお母さんが、メグタンを心配してやってきました。

「メグタン!もうお夕飯ですよ!!それにもう遅いんだから、家の中に入るように!」

「えっ、でも、ペガンが……」

「ペガンは猫なんだから、一匹でも大丈夫です!家の中に入らないと、お母さん怒りますよ!」

 メグタンのお母さんはすごい剣幕です。

 メグタンはしぶしぶ家の中に入りました。すごくペガンを心配していました。

 お夕飯を食べた後も、メグタンはペガンを心配していました。でも、ペガンは帰ってきません。

メグタンはペガンを心配しすぎて、疲れて寝てしまいました。

明くる日、メグタンは目が覚めて、ペガンはいないかと家の中を探しました。だけれど、ペガンはどこにもいません。

「もう、ペガンったら!帰ったら、なんでいなくなったのか問い詰めてやるんだから!」

 しかしペガンは、次の日も、その次の日も帰ってきませんでした。

 メグタンは、ペガンに会えない日が続くことが、だんだん不安で怖くなっていきました。


 ペガンがいなくなってから数日のことです。メグタンの元に、一通の手紙が届きました。

「ペガンからだわ!」

 手紙にはこう書いてありました。


 メグタンへ。今日の夜に、町の広場に来てください。なぜかは聞かないでください。メグタンにぜひ今日、町の広場に来てほしいのです。僕からのお願いです。

ペガン


 メグタンは急いでお母さんに伝えました。

「お母さん、ペガンから、手紙が来たの!今日の夜に町の広場に来てって!!どうしても行きたいわ!お願い、お母さん!」

 メグタンはどうしても行きたいと、必死でお願いしました。

 メグタンの懸命なお願いに、お母さんは胸を打たれます。

「分かったわ。メグタンがどうしてもっていうんなら、今日の夜に、お父さんとお母さんとメグタンで、町の広場に行きましょう」

「ありがとう、お母さん!」

 お母さんは、メグタンのお願いを聞いてくれました。メグタンは大喜びです。

 そうして、メグタンは今か今かとその日の夜を待ちました。

 ――夜になりました。メグタンはお父さんとお母さんと共に、町の広場に行きました。

 町の広場は、静かで、ひっそりとしているように見えます。

 すると突然、町の広場の高台から、ペガンが姿を現しました。

「メグタン、来てくれてありがとう!僕からのサプライズプレゼントだよ!」

 ペガンはそう言うと、手を上げて合図を送りました。

 その時です!

 ドーン!パンッパン!パラパラパラパラ!!

 ペガンが合図を送ると、、町の広場の外から、大きくてとてもきれいな花火が上がりました。

 パーン!パンッ!パララララ!!

 花火は次々と上がって、メグタンの頭上でキラキラと輝きました。

「メグタン!誕生日、おめでとう!」

 ペガンはメグタンに近づくと、大声でメグタンの誕生日を祝福しました。

 さらにペガンが、メグタンに大きな声で話しかけました。

「メグタンの誕生日を祝うために、町の人たちに頼み込んで花火を上げてもらったんだ!メグタンへの、サプライズプレゼントだよ!そしてメグタン、もう一つプレゼントだ!」

 ペガンは後ろに隠していた箱を、さっと前へ出して開けました。

「メグタンの大好きなケーキだよ!さぁ、食べて、メグタン!」

 ペガンはとってもおいしそうなケーキをメグタンに差し出しました。

 ペガンはメグタンが笑顔になって、とても喜んでくれるものと思っていました。

 だけど、メグタンは目に涙を浮かべると、そのままわんわん泣き出してしまいました。

「どうしたの、メグタン!サプライズプレゼント、嬉しくないの!?」

 ペガンは、メグタンが泣き出してしまったのに驚きました。

 メグタンは、泣きながらゆっくりと話し出しました。

「ううん、嬉しいわ!ペガンが私のためにプレゼントを用意してくれて……。でもね、私、なによりペガンが無事でいてくれたことが嬉しいの!何も言わずにペガンがいなくなって、私二度とペガンに会えなくなるんじゃないかって、私不安だったの!怖かったの!ペガンが無事でいてくれて、私嬉しい!」

 メグタンの意外な言葉に、ペガンは目を白黒させてメグタンに聞き返しました。

「えっ!!じゃあメグタン、僕のサプライズプレゼントより、僕が無事でいたことが嬉しくて泣いているの!?」

 メグタンとペガンの様子を見ていた町の人たちが、ペガンに話しかけました。

「なんだ、ペガン。メグタンに黙って家を出て行ったのかい?」

「ペガン、大事な人を心配させちゃいけないよ。じゃないと、もう協力してやらないぞ」

 ペガンはきょとんとしてその場にたたずんでいました。とっても意外そうです。

「メグタンは、……僕が無事でいてくれたことが………嬉しいのか……」

 メグタンのお父さんとお母さんが、笑いながら話しかけてきました。

「何だペガン、そんなことも分からなかったのかい?」

「あなたは、メグタンの大切なお友達なのよ」

 メグタンは泣き止んでくると、ペガンに頼み込むように言いました。

「ペガン……、私、あなたがとっても大事なの。だから、いくら私のためでも、急に私の前からいなくなったりしないでね、……あなたを心配するのは、とっても苦しいの」

 ペガンは、しゅんとして言いました。

「分かった。ごめんよ、メグタン」

 でも、ペガンはそう言って謝ると、気持ちを切り替えてはっきりと言いました。

「僕、今回のことで、メグタンがどれだけ僕のことを大事にしていたのか分かったよ。でもね、僕にとっても、メグタンはとっても大事な友達なんだ。僕、メグタンの前から急にいなくなったりしない。僕も、メグタンを大切にしたいから!」

「うん、約束よ!ペガン!」

「うん、メグタン!」

 メグタンとペガンは、指切りをして約束しました。

 風が、メグタンとペガンをやさしく包み込むように吹きました。

メグタンとペガンは、目と目を合わせて微笑みあったのです。

「さぁ、ペガンも、何か学んだようだし、家に帰るとするか」

「そうね。もう夜だけれど、とってもおいしいケーキもあることだし」

 そして三人と一匹は、仲良くおうちに帰りました。

 今日はメグタンとペガンが〈友情〉という何かを学んだ、とっても大事な記念日となりました。


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