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忍者がブラック企業にやってきた

 俺の名は佐藤。


 ここは務めている会社「伊賀アニメーション」映像制作をしているどこにでもある零細ブラック企業だ。


 過剰労働が災いし従業員が立て続けに退職。残ったのが使えない社長を含めて3人になった。


 いつ過労死してもおかしくない。正直こんな会社無くなってしまえと思っていた。


 そんな当社に変なやつが面接に来た。



「よろしくお願いします。ジエイです」


「伊賀です。よろしくっ! さっそくですが、ジエイさん。履歴書に名字が書かれてないようですが……」


「はい。極秘情報ですので……」


「なるほど、面白いっ! すると――経歴も職歴も極秘だと」


「はい」


「特技に忍術とありますが、これは――?」


「はい、忍術ならだいたい何でも出来ます」


「よし、採用っ!」


 こうして、うちの会社に忍者が入社した。



「社長! おかしいでしょ! 新人が忍者って」


「なんだね佐藤君。私の目に狂いはないよっ!」


 いやいや、社長は目だけではなく全てが狂っている。


 しかし正直、猫の手も借りたい忙しさなのは否めない。


 偶然にも当社では新作の忍者アニメの制作を請け負っていた。



「新人君、資料ウェブで探して! 手裏剣! 早く!」


 彼女は3年先輩の横山さんだ。大体現場を仕切っていて仕事の早さに定評がある。


 新人の忍者はスッと懐から手裏剣を差し出した。



「ありがとう……って本物? 気が利くわね」


「あ、気をつけて下さい。毒が塗ってあるので……」


「そんな物騒なもんもってくるなよ!」


 思わず突っ込んでしまったが、こんな感じで忍者は案外役に立っていた。



 ――次の日。


 横山さんがいつもどおり慌ただしく指示を出している。


「納期は明日よ! 巻いて巻いて! このままじゃ間に合わないわ! ああ、分身とか出来れば……はぁ」


「自分、出来ますよ。分身」


「できんの!? てか、何で今まで言わなかったの!?」


 忍者は3人に分身して手分けして作業を手伝ってくれた。



「ふぅ、何とか間に合ったわね。次も新人募集は忍者にしましょう」


 徹夜明けで横山さんの頭もバグって来ている。



 そんなこんなで、制作していた忍者アニメは高いクオリティで仕上がり空前の大ヒット!


 格安の下請け案件ばかりやっていた零細企業は忍者の活躍により業界では一躍有名になった。


 俺も辞めようと思ってたのに……


 そんな時、伊賀社長が死亡したとの知らせが入った。死因は不明だそうだ。


 会社に行くと忍者のデスクに退職届が置いてあり、理由に一言こう書いてあった。



 “任務完了”



「犯人お前かい!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 深く考えないで気軽に読めて、短文ですが得られる満足感がすごいです。特に最後の二言。 [気になる点] 忍者さんが辞めちゃって佐藤さんと会社の後日談が少々気になるのは私だけでしょうかTT [一…
2020/12/20 16:49 木村 卯月
[良い点] テンポが良くて面白かったです! 忍者、ウチにも面接に来ないかなぁ。
[良い点] うまい! これはいいオチ! 面白かったです! [一言] 実は忍者がブラック企業で分身の術を使って活躍する話を考えたんです! ですがオチが思いつかず書きませんでした! すごいです!
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