断罪王太子の日記・抜粋
小さい頃からつけていた日記の一部を抜粋した形式。
抜粋しないと絶対にだれるので。
ベタでお約束の、乙女ゲーメイン攻略対象の王太子。
が、ざまぁされる悪役令嬢もの。
それのベッタベタな典型的ざまぁされ王太子が、遺した日記。
という体のブツです。
改行した数でなんとなくの時間経過を表現してみましたが、伝わるでしょうか?
○月○日
もじのべんきょうになると、せんせいにいわれた。
さっそくかいてみようとおもう。
○月*日
せんせいにたくさんほめられた!
ぼくは、かしこくてつおいんだって。
えっへん!
○月+日
たのしい!たのしい!
みんなみんなほめてくれる!
ぼくつおい!
さいきょー!
*月*日
なんで!?
なんでなの!?
きのうまでいっぱいほめてくれたじゃん!
きのうと同じ位がんばったよ!?
せんせいがきゅうにこわくなった!!
でんかのためっておこるけど、ぼくわほめられたい!
ぼくのためなら、いっぱいほめてよ!!
*月∵日
もういやだ!
ほめてくれないべんきょうなんてやりたくない!
ぼくわいえでする!
日記わここでおわり!
*月%日
お父さまとお母さまからおこられて、しばらくとじこめられてた。
いえでしたときのこと、おぼえてる間にかく。
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いえでした。
お父さまからきいたぬけみちで、まちまで行った。
おいかけてくる人お気にして、たくさん走った。
それでぼろぼろのこやが一ぱいあるところまで走って、ころんだ。
いたくてなきそうだったけど、ぼくわ男だ。
なかずにかおお上げたら、そこに女の子がいた。
きたないふくの女の子。
でもたのしそうに笑う女の子。
ぴんく色したあたまの、ころんでいたかったあしおなおしてくれたふしぎな女の子。
なんで笑ってるの?
ってきいたら、あなたとあそんでいるからよ、だって。
最近のぼくのちかくわがみがみがみがみ。
なのに女の子わにこにこにこにこ。
ぼくわやっぱり、やさしくされたい。
やさしくしてくれた女の子が気に入った。
ぼくのはいかになれって言ったけど、分からなかったみたいでくびおまげられた。
言いかえてぼくのものになれって言おうとしたところで、へい士に見つかった。
見つかる前にへんじが聞きたかった。
ざんねんだった。
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いつかまた見つけて、今どこそ言ってやろう。
+月○日
いきなりこんやく者をきめるって、お父さまから言われた!
よ定より早くなったって言われた!
国のつごうと、何でかぼくのせいだって!
いえ出したのがだめだったって!
あの女の子となかよくしたのがだめだって!
お父さまのばか!!
∵月*日
あのこんやく者はなんだ?
大人とふつうに話してる。
お父さまもぼくには子どもとして話すくせに、あの女と話すときは大人と話すみたいに話す。
ぼくの先生たちが、ぼくおほめていたときより女おほめる。
先生になんでほめるのかきいたけど、おこるひつようがないからだって。
なんなんだよあの女!
気に入らない!!気に入らない!!
∵月%日
あの女と何日か一しょにべん強したけど、なんでか先生になってた。
べん強もまほうも、れいぎ作法も、ぼくよりできるんだって、お父さまから言われた。
∵月§日
先生になったあの女を首にした。
すごくうるさいから。
何が王子、もっとがんばりましょうねだ。
もっとがんばれじゃなくて、もっとほめてよ!
あの女の子と会わせてよ!
*月*日
王きゅうに入ったばかりのま道具を、おこってこわした。
今王子はぼくだけ、次の王さまはぼくなんだから、しっかりしなさい。
お母さまからしかられて、こわいお仕置きを知った。
王家だけ受けるお仕置き。
ランダムテレポート。
とぶ先が分からないワープ。
王は神様からみとめられたもの。
悪さばかりする王家のお仕置きは、神様が決める。
だから、とぶ先は神様に決めてもらう。
なかが悪い国、海の中、どこかの戦場、まものの巣、どうくつ。
考えるだけでこわいけど、一番こわいのは石の中だって。
どうくつやこう山とかで、たまに見るんだって。
石の中にこわいかおで固まって、入っているって。
でもぼくは良い子。
ぜったいにそんなお仕置きは受けない!
∵月§日
今までの日記を読み返していたが、こん約者を先生から首にしてもう5年。
あれからイライラする事がよく起きる。
勉強の先生は10回位で入れ替わる。
最初の7回位までは沢山ほめてくれるのに、それからはしかってきたり、ネチネチうるさい事を言ってくるから。
それでいやになって、首にする。
首にしたのを注意してくるやつらも、おこって一緒に首にした。
一度ずっとほめてくれる先生が居たのに、その先生はお父様が首にした。
勉強があまり進まないからだって。
僕の勉強はまだ4年はかかるだろうって。
あのこん約者は今も僕がしてる勉強を、2年前に全部終わらせたらしい。
ついでに王太子ひ教育も。
それと勉強だけじゃなく、食文化の向上、品種改良と言う技術、農業効りつ化、物流向上、画期的な服、えい生面の向上、ご楽のそう出、民の生活が良くなる安くて良いま道具の売り出し。
王宮のおしゃべり侍女から聞いただけでも、こんなに。
何でもかんでも関わって、国力を思いっきり上げた化け物。
ま法の力もすごくて、王国一だとか。
お母様からもあの女を気に入ってて、仲良くしなさいってしつこく言ってくる。
うるせーよばーか。
僕にあんな上から言ってくる女となんか、仲良く出来るかよ。
僕はあの仲良くしてくれた女の子が良いんだよ。
こん約者としてのぎむも、上手くやってと侍従に任せきりだ。
○月○日
今日から私は貴族学園に通う事となった。
あと4年かかると言われた勉強はまだ終わらず、5年目。
学園卒業までに、絶対に終わらせろとお父様から言われた。
学園は3年間。
一緒に入学した婚約者とは出来るだけ関わらず、だが正式に王太子となったし、堂々たる態度でいよう。
あの女はいつも誰かに囲まれている。
私も側近候補の友人達や、私と繋がりが欲しい者達に囲まれている。
あまり顔を合わさずに行けそうだ。
+月+日
どうでも良い話を取り巻きにされて、腹が立つ。
婚約者は既に卒業資格を得たそうだ。
それで貴族子女達との交流の場でもある学園を度々休み、実家の商会を手伝っているらしい。
侯爵家のくせに、貧乏貴族か? と笑いかけたが、実際は新商品の開発主任でもあるとか。
商会のみならず、領地経営も絶好調。 貧乏である訳は無く、侯爵領は様々な物の最先端を行く地。
取り巻きから遠回しに「婚約者で王家だから、新製品は最優先で入手出来るんだろ? ねたましい」と言われているだけだと分かった時は、殴ってやろうかと思いもした。
学園で使われている魔道具のほとんどが、かの商会が扱う商品。
商会が無ければ、ここまで豊かな生活になるまで何世代も重ねる時間が必要だろうとまで、学者達に言われる始末。
とどめにおしゃべりから「権力であんなすごい令嬢を囲えるんだから、王家は良いよな」と受け取れる事を言われ、殴った私は悪くない。
○月○日
学園2年目。
婚約者サマは相変わらず精力的に動き回っている。
おかげで学園の空気が悪い。
よくお出来になる婚約者様と、お飾りの王太子だとさ。
お母様もしきりに婚約者サマをほめる話ばかり。
うんざりだ。
○月○日
奇跡が起きた。
これは昔からやらされてた家での勉強を終わらせた、私へのごほうびなのかもしれない。
幼いあの日、王宮から抜け出して一度しか出会えなかった、あの女の子と学園で知り合えた。
あの後も何度か抜け出したり、公式に城下の様子を見回る機会なんかでも、見付けられなかったピンク頭の女の子と。
当時はお互い名乗り合いもせず、ただ遊んでいた事を思いだしたので、改めてあいさつから。
向こうは小さい頃に会ったのを覚えていないようだ。
それでも女の子はコップフ男爵家のローザと名乗った。
男爵が外で産ませた子で、最近魔力持ちと判明したから家に迎えたとか。
年齢的に今年から私のひとつ下、2学年に編入するそうだ。
学園最後の年。
ここから私の人生は始まるのかもしれない。
*月∵日
ローザと学園内でよく出会う。
もう幼い頃みたいに遊べる年齢じゃないが、代わりに楽しく会話。
プレゼントに花やお菓子をよくくれる。
今までこんなに良くしてくれる人は、誰も居なかった。
これだけで私は幸せになれる。
しかし、しかめっ面であり続ける。
ここには子女とは言え、貴族籍の者がいるのだ。
何が私の攻撃材料となるか分からないから、弱みになりそうな物は見せない。
+月△日
私を見付けたら、明るい顔で駆けてくるローザに、顔が熱を持って仕方ない。
私の好きな物を的確にくれるローザが、可愛くて仕方ない。
私を認めてほめてくれるローザが、愛しくて仕方ない。
私が欲しかった言葉をくれるローザが、光って見えて仕方ない。
私の言葉一つ一つに可愛いリアクションをくれるローザを見て、元気になって仕方ない
しかめっ面を続けられなくなるほど、感情が止められない。
ローザの微笑みを見るだけで、心が跳ねて止まらない。
ローザがチョコチョコ動く度、笑みがこぼれて仕方ない。
私が王太子である前に私のままでいて良いと、言ってくれる安心感がこの上無い。
私は私だ。
国は関係無い。
私がしたい事をする。
だがローザと仲良くするなと言ってくる側近達が、うるさくて仕方ない。
私は知っているぞ。
側近のお前達も、ローザの可愛さにやられている事を。
両親からの婚約者に気を配れと言う小言が、煩わしくて仕方ない。
婚約者は婚約者じゃない。
あいつは婚約者じゃない。
定期的な手紙もプレゼントも茶会も、何もかもを私の侍従に代行させている。
私はあいつとの接点なぞ、ひとつも無いのだから。
そんなのが婚約者だなどと、笑うしかないだろう?
△月△日
ついにあの偽婚約者がやってくれた。
愛しのローザがあの女に突き飛ばされたと言う。
そして、そのショックで昔出会っていた事を思い出してくれた。
思わず現状を忘れ、抱き合い、昔話に花を咲かせてしまった。
我に返ってから見物人に女の居場所を訊いたが、学園にいないそうだ。
まずくなると分かって、逃げたな?
これを口実に、アイツの攻撃材料が出来た。
少し前までライバルだった側近達と協力して、目下の敵を追い詰めてやろう。
□月□日
愛しいローザに学園で日々行われている、悪事が随分な数になった。
大好きなローザが教えてくれた、私が阻止できず見過ごしてしまった犯人やその悪事も、かなりの数にのぼる。
婚約者と言うことになっている、あいつだけではなかった様だ。
そんなに取り巻きや協力者がいたなんて想定外だか、もはやそんなのは関係無い。
あの女の一派は追い詰められている。
これを学園中に広めた成果で、素晴らしく可愛らしいローザと我々は、生徒達から哀れみの目で見られている。
被害者が誰なのか、そして巨悪が誰なのか。
私達に視線だけでも応援してくれる生徒達が沢山いるんだ、これは勝てる!
決戦は卒業パーティー!
次期王として、初めて正義を振るう機会だ!
お父様に相談していないが、誰が悪いのかが分かれば、私の行動はむしろ功績となるだろう。
側近の中でも策士と言われる者に相談して、失敗のないよう最後の詰めを行おう。
〓月〓日
明日だ。
明日、全てが決着する。
ローザと結ばれる。
結ばれたい。
準備は万端、敵は国を経済や文化方面で侵略し、支配を目論む侯爵家。
王家から下手に命令を下せば、民・貴族関係なく逆らい、まとめて王家の敵に回るかも知れん程の強大な影響力を、既に持っている。
あの婚約者を騙る悪女を排除できれば、中核が無くなりその内四散するだろう。
これは国の為の戦いでもある。
やろう。
やってやるんだ。
*月*日
これが私最後の日記となる。
全ての日記帳を読み返したが、我ながらひどいものだ。
大体がグチまじりの作業報告日誌か、元婚約者への悪口か、ローザへ向けた愛か。
そんなのしか書かれていない。
温情として面会出来た、監禁中のローザに訊いた。
あの子の言動……初めての出会いから、全てがウソにまみれていた。
あの時既にコップフ男爵の娘となっていた。
あのボロはわざとだ。
私に会えると何故か分かっていて、同情を引く……覚えてもらうため、スラムで盗んで服の上に着ていたらしい。
学園で昔を忘れていたローザもウソ。
婚約者と不仲なのを知っていて、王太子妃の座をかすめ取ろうとしていた、ただの俗物だった。
他の男にもちょっかいをかけながら、私好みの女を演じて、すり寄ろうとしていた毒婦だった。
そもそもの話、1学年の途中から元婚約者は学園にほとんどいなかった。
3学年になってからは、始業式と卒業式にしか学園に来ていなかった。
何も出来るわけが無い。
それと、取り巻きや協力者と吹き込まれた令嬢達は、あの好き放題していた嘘つき女を諌めようと説得していただけで、とても優しい令嬢達だった。
生徒達が私達へ向けていた哀れんだ目は、被害者を見ているのではなく、只々可哀想な者として見ていただけ。
対して元婚約者は、私より努力して私より勉強して私より働いて、私より結果を残してほめられただけ。
それに強く嫉妬して、腐りきった私と言う構図。
私の人生は何だったのだろうな。
どこかで漏れ聞いた、俗な言葉でまとめるとこうだろうか?
むしゃくしゃしてやった。
ため込んだ理不尽で身勝手な怒りをぶつける相手は、誰でも良かった。
今は反省している。
反省している様子を見せても何を今さらと、みんな不快に思うだろうから、しないが。
多分これで私の人生は終わる。
卒業パーティーで行った大失態で、私は昔聞いたランダムテレポートの罰をこれから受ける。
人生最期のもうひとつの温情として、こうして日記をつける事が許された。
直系唯一の子息で王太子である私の代わりは、なんとか見つかったみたいで安心だ。
しかし、ランダムテレポート刑の警告を受けた日と、その刑を受ける日が同じと言うのはなんと皮肉なことか。
これを読んだ王家よ、王族よ。
もしかしたら禁書庫へ入れられて、偶然見つけた誰かか? それともどこかへ売り払われて、たまたま手に渡った誰かか?
どこの誰かは分からないが、これだけは書き残そう。
私みたいになるなよ。
以上が80年前に起きた、当王国一番の大事件を引き起こした側の記録です。
4年前に亡くなられた、慰謝料として陞爵なさった女大公爵様の家より、丁度良い機会だろうと許可を頂き公開に踏み切られ、こうして王国歴史資料館で展示が実現しました。
日記を全て公開してもほとんど事務的なメモ状態なので、抜粋となります。
女大公爵様の行った教育改革で、国内では文字を読めない人間の方が珍しくなりました。
その成果でどなた様も、当時の様子をこうして読んで知ることができる、この現状こそが女大公爵様一番の功績かもしれません。
隣に展示されている発見後すぐさま撤去された、ランダムテレポートで王城正門の上部にて城壁に埋まっていた元王太子の様子を描いた絵画も、どうぞ併せてご覧下さい。
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パーティーでの逆断罪はどうなったか?
王太子・ローザ側の無茶苦茶な言いがかりで断罪しようとした、その権力乱用っぷりを問題視されて、王命の婚約をブッチしようとした命令違反も含めて、きっちり断罪返しを食らいました。
この辺は王太子の日記にあると不自然だろうと判断し、本文には書いてません。
元々はヒロイン=悪役令嬢。
恋路を邪魔する悪役令嬢がおらず、ただただクズい乙女ゲーヒロイン転生者によってボロボロに堕とされて、惨めになる王太子を書こうとしました。
したんですが、なんかいつの間にか悪役令嬢も知識チート転生者として登場して、典型的な劣等感に塗れた浮気・不貞王太子になっていたorz
まあそれはそうと開き直って、典型的な王太子が悪女ヒロインにのめり込む様子が伝われば良いなぁ、と。
あと言い訳。
この作品中でちょっと浮く表現、むしゃくしゃしてやった~を書いたのは、王太子が狙って書いてます。
強がって、刑罰なんか怖くないと、自分に言い聞かせようとしてる表現です。
シリアルにしてやろうとか、これ書いたら読者は白けるんじゃね?(いたずらっ子顔) とか考えていたのではありません。
ランダムテレポートなんて実質の死刑。 恐怖で潰れないよう、最後まで憎たらしい王太子でいられるように。
その憎い王太子が、憎いまま刑を執行された、と。 被害者の心が軽くなるように。
今さら反省しました~刑をおとなしく受けました~なんてしても、見ている連中の心に嫌な物を残すだけなので。
つまり最期の贖罪のつもりですね。
それと、こんな弩シリアスは自分の体力がとても持ちませんので、書くのは極めて稀でしょう。 こんな文量の短編ですらかなり疲れました。
~~~~~~
主な人物の顛末
王太子
本文にて察せると思うけど* おおっと *して* テレポーター *で* いしのなかにいる *となった。
ローザ・コップフ
“ピンク頭”をドイツ語で変換したら、こうだそうで。
ローザ:ピンク コップフ:頭
乙女ゲーヒロイン転生で、ワタシヒロイン! 世界の中心! と思い上がって、ずっこけた。
国の宝である侯爵令嬢を王家で囲えなくした、王命(王太子と侯爵令嬢の婚約)に逆らった罪で投獄。
最期は王城地下牢で、獄中餓死。
侯爵令嬢
ベタベタな断罪回避で全力出した、知識チート転生者。
詫びとして公爵……しかも公爵の中でも最上位の発言力を国からもらい、ドン引き。
誰かは知らんが、運命の人と出会って幸せな結婚をして幸せな人生を送って、人生を楽しんでこの世を去った。
世界設定?
世にも珍しい、女性向け恋愛ゲーム+DRPGと思われる。
学園要素+DRPGは実際にあったので、乙女ゲーDRPGがあってもおかしくない。
侯爵令嬢は恋愛要素よりDRPGが好きで、知識チートで高効率レベルアップしてカンストに到達していた事も、簡単に予測できる。