あなたと巡り会えた日
これは、悲しい過去を忘れられずにいる主人公と不思議な少年の悲しい恋愛物語です。
プロローグ
いつか消える灯火…でも私の心の中では…消えない…灯火。あの日あなたと出会ってから…。
第一章あなたと巡り会えた日
夏。日が道路をじりじりと照らしている。小学生達はみんな明日から夏休みと言うこともあって、みんな暑い中楽しそうに走りながら下校している。その中1人で気だるげに歩いている少女が一人。その少女は冷たく無表情な顔をしているにも関わらず、すれ違う人が皆振り向く程美しい容姿で歩いていた。皆暑くて汗まみれになっているのだが、その少女は汗をかいているのに汗をかいてることを感じさせない爽やかな雰囲気も漂わせており、余計人の視線を集めていた。この少女の名は月野夜葉、小学六年生だ。夜葉はいつも無表情でどこか冷たい雰囲気と爽やかな雰囲気を醸し出していて、綺麗な一つに結った髪が歩く度に靡く。その髪はとても柔らかそうで、とてもいい匂いがしそうだった。目は大きくてパッチリ二重、クールな目付きそして、綺麗な肌。その肌はとても白く日焼けという言葉を知らないのでは?という程綺麗な白だった。でも、夜葉には欠点があった。それは、感情を表に出すことが苦手ということ。この無表情はとても綺麗だが、一緒にいて楽しいかと聞かれるとそうではない。やはり、どこか疲れを感じてしまう。誰だっていくら話をしても無表情のままで居られたら疲れるし、腹が立つ人もいるだろう。その結果夜葉には友達が一人もいない。当の本人の夜葉は気にもとめていないのだが、やっぱり大人は心配するようで先生や親に友達を作るようにずっと言われてきたが、小学校の六年間で友達は一人もできなかった。夜葉はいつも他人の顔色を伺いながら話すクラスメイトと仲良くなれる気がしなかったし、仲良くなろうとも思わなかった。夜葉は相手の顔色を伺いながら話すのはめんどくさいと思い友達をつくろうとはしなかった。夜葉は暑い中焼けたコンクリートの道路を歩いて、自宅に帰った。
〇
「ただいま」その声が玄関に響く。夜葉は家に帰ってきてただいまと言うとすぐに夜葉の母が玄関まで来て「おかえり!」と言った。おかしな話だと思うが、夜葉の母は夜葉とは対称的で感情をすぐに顔に出してしまう人だ。何故夜葉は母とこんなにも違うのか夜葉自身が一番疑問に思っている。「明日から夏休みね〜どこか行きたいところある?」「特にない」「そっか〜、夜葉もうすぐ誕生日でしょ?何か欲しいものない??」「小説」「また〜?」母は呆れたような驚いたような声で言う。夜葉にあげてきた今までのプレゼントは全て小説なのだ。夜葉が5歳の時から誕生日プレゼントは小説と決まっていた。夜葉は寂しそうにする母をあとにして自室に行き、本棚をあさり始めた。そして一番読んだであろうことが想定できる本を取った。その本は少しボロボロになっていた。タイトルには「消えた灯火」とあった。夜葉が一番気に入っている小説がこれなのだ。夜葉がその本を買ったのは7歳の誕生日の時だった。母に誕生日プレゼントのリクエストを聞かれ即答で小説と答えたのだ。そして本屋に行き、3冊までと言われ欲しかった2冊を直ぐに手に取り残りの1冊を探していた時隅っこに置かれ明らかに人気がないであろう本があった。その本に何故か惹き付けられてその本を選んだ。その本は人気があるというわけではなかった。むしろ、人気がないの部類に入る本だと思われる。その本の内容はざっくり説明するとある少年が少女に出会い少女に恋をするが、その少女は亡くなってしまうという話だ。普通はここで大好きな人が亡くなるという時は結ばれてから亡くなるか想いを伝えて亡くなるのだが……、この話では少年は想いを伝えることもせずただ少女が死ぬのを見ていて終わった。夜葉がこの本を何度も読んだのは最初この話の意味がわからなかったからだ。理解するまで読み続けているのだ。夜葉はどんな本でも長くかかっても3日で本の意味を理解できるという、遥かに優れた理解力を持っていたがこの本の真意だけは未だによくわかってない。ただ夜葉はこの本が指す灯火は命の事を指していることだけは充分すぎる程分かっていた。ベッドに寝転がり、また本を読み直し始めた。そして気がつけば夕食の時間だった。夕食を食べてお風呂に入り、自室に戻った。本をまた何度も何度も読んでいて気がつけば寝ていた。目を覚ますと午後10時という時間だった。そして嫌に目が冴えてしまって、眠ることが出来なかった。「最悪…」そしてゆっくりと自室を出て、下に降りると両親は眠っていた。夜葉は靴を履き、外に出た。そして自宅から15分ほど歩いた所にある河原に着いた。当然のことたが河原には誰も居ず、夜葉が一人佇むだけだった。けれど川辺を見ると誰かが居た。夜なだけにすごく暗く全く誰か分からない。ゆっくり歩いて近づいたところでそこにいた人が振り向いた。そこに立っていた人は綺麗な容姿をした少年だった。けど夜葉と並ぶくらいに無表情な少年で瞳は吸い込まれそうなほど綺麗で濃い青だった。夜葉はその瞳に釘付けになり、じっと見つめていると少年は「誰?」と声を発した。男の子ということが分かる声だが、男の子にしてはすごく綺麗で高い声だった。「私……夜葉。月野夜葉」「夜葉…そっか僕は灯」「灯…珍しい名前…」「夜葉も大概珍しいよ」「そう…灯って無表情ね」「夜葉も…同じくらい無表情だよ」「そうかな…」「うん…凄い無表情」「灯…こんな夜に河原で何……してるの?」「それは夜葉にも同じ事が言えるよ、僕はここの景色が好きなんだ。」変わらない無表情で答えた。「景色……?」「うん…月が反射して川に映るんだよ…この景色は見ていて落ち着くし…色々…思い出せるからね」少し灯は悲しそうにした。「そうなんだ…」「で、夜葉は…何しに来たの?」灯に問いかけられた夜葉は答えた。「眠れないから…来た」灯は無表情で「夜葉は…毎日楽しい…?」と聞いてきた。「楽しくは……ない」夜葉はつまらなそうな顔をして答えた。「つまらない?」「うん…みんな誰かの顔色を伺ってばかりで…刺激なんて何も無いただの日常…人の顔色ばかり伺う人を見る日常はつまらない……かな」夜葉はどこか辛そうに言葉を発した。灯がそこで口を開いた。「じゃあ…夜葉またここに来て。僕夜はよくここで一人でいるから。」「え…」「僕はつまらないんだよ。ずっと…人が裏切ってくることを一番知ってるから…だから人を寄せつけない。だけど夜葉は違うみたいだから」「私も…灯になら会いにいく…何か……私と似てるから」「僕も同意見だよ」「灯は何歳?」「十二歳。夜葉は?」「同じ…十二歳」「そっか……じゃあ気兼ねなく話せるね。」「うん…」「じゃあ…また明日」「また明日」そう言って夜葉は自宅に帰った。けれど少し不思議なことがあった。夜葉が自宅に帰るための道を歩き出して直ぐに夜葉は振り向いた。なのに…灯の影すら見えなくなっていた。夜葉は自宅に帰り、自室に戻ると睡魔に襲われ、すぐに眠りに落ちた。
今回は第一章でした。次は第二章です。最後まで読んでくださった方に感謝です。第二章もご覧いただければ幸いです。ではまた。