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9話 異世界の認識

 噂をなすればなんとやら。

 カサカサと音を立てて、男の頭部が現れる。

 琴葉と違って全然かわいくない。そして、本能的に全力で逃げ出そうとした。


 前、これからよろしくとか言ってじゃないか?ハッ!怖いもんは怖いんだよ。

 本能が、俺に呼びかけてくるんだよ、逃げろってな。まあ、それも無意味だったんだけどね。

 なぜなら俺は、すでにアベルに首根っこを掴まれ、宙に浮いている状態だからな!


「どこへ行くんだ?」


 伝説の野菜の人かな?


「ちょっと野暮用が…」


「エルの用ってなんだ、メアリ?」


 そこで、なんで母さんに振るんだよ。言い訳できないじゃん。

 いやでも、母さんが口裏合わせてくれるかも。

 かすかな期待を込めて母さんのことを見る。そして、母さんはにこりと笑った。

 さすが、母さん。わかってらっしゃる―――


「何の用もないわよ。好きなだけ、しごいてあげて」


 とはならずに、というか、なるわけもなく、本当に、本当にいい笑顔で、母さんはそう言った。

 くそぉ、奇麗だから怒るに怒れないじゃないか。そう見惚れてしまうほど、母さんの笑顔は美しかった。

 ていうか、母さんって、意外とスパルタだったんだなー。

 最近現実逃避ばかりしてるなー、などと、どうだっていいことを考えていたら、アベル(悪魔)が、笑いかけて(威圧して)くる。


「了解。じゃあ行くぞエル」


 そうして、俺はアベルに連れていかれるのであった。

 首根っこを掴まれたまま…

 地面が恋しい。



 ***



「アベル、今日は何すんの?」


「呼び捨てか?」


 無意識に呼び捨てにしていたことに気づき、たらりと、冷や汗が頬を伝う。


「ダメ……だった?」


 恐る恐る、きくと、アベルは相変わらずのいたずら小僧のような笑みを浮かべる。


「いや、そっちがお前の素なんだろ?だったら、そのままでいいぞ。でも、どういう心境の変化だ?前は、あんなに必死に演技してたのに」


 バレてらぁ。

 妙に勘の効くアベルには、お見通しだったようだ。

 野生児の勘かな?


「なんか、失礼なこと考えていないか?」


「ソンナコトナイヨ」


 危うく、バレるところだった。


 そして、修行へと移る。


「修行内容は…」


「修行内容は…」


 ごくりと唾を波込む。


「修行内容は、腕立て伏せ1000回、状態起こしせn…」


「ちょっとまてーー!」


「どうしたんだよ?」


 少しイラついた様子でアベルが俺に聞いてくる。

 いや、何がって言われても、それどっかで聞いたことあるし、俺禿げたくないし。

 あと、


「俺まだ一応六歳児だし、そんなことしたら死んじゃうよ」


「それくらいなら、俺が五歳児の時にはもううやってたぞ?」


「俺、普通のドライアド。(普通のドライアドとかあったことないけど)アベル(人外)と一緒にしないでよ⁉」


 なんと衝撃の事実。何その子供怖い。

 五歳児がやっていいことじゃないだろ。

 そういえば、筋肉つけすぎると身長伸びなくなるとか聞いたことあるけ、今のアベルは俺の感覚からすると、190センチは余裕であるしな。

 きっとアベルは人間じゃないのだろう。


「……なるほど、今日の修行は、余程痛めつけてほしいみたいだな」


「そ、そんなことないよ」


「そうか。まあ、お前に関しては、筋トレさせるわけでもないんだけどな。ようは、冗談だ」


 ――――あれ?

 そう笑うアベルの表情には陰りがある気がする。変な間もある。

 何か、嫌な思い出でもあるのかな?

 まあ、聞くのもあれだし、アベルも聞かれたくないだろうし聞かないでおこうかな。なんか怖いし。


「そ、それで今日の修行は何をするの?」


 この雰囲気に耐え切れなくなり、俺は誤魔化すように話しかける。すると、アベるもさっきの自分に違和感があったことに気付いたのか、取り繕うように言葉を重ねる。


「今日は、と言っても前と同じように走力を鍛えるための鍛錬だな」


「了解。でも剣に触らせてはくれないの?」


 たったの二日目で剣を触りたいというのは我儘だとは思うが、男の子としてはしょうがないと思う。


「それは、お前まだガキだろ」


「むー」


 否定はできないが、元高校生として、子ども扱いに少しむっとし、頬を膨らませてしまう。


 あれ、今俺無意識に「むー」とか言って頬を膨らませていたぞ。向こうじゃ、もう高校生の年だぞ⁉恥ずかしい。

 そんな、特に意味もないことを内心考えていると、アベルが呆れたように声を出した。


「いや、七歳児が何子供扱いされて怒ってんだよ。話し戻すぞ。お前はまだ子供だろ。ようは体が未発達なんだよ。だから、こっから成長していくであろうお前に剣教えてもあんま意味ないんだよ。つってもガキのお前にはわかんねぇだろうがな」


「いや、分かったよ。つまり、手足とか伸びると間合いが変わるし、スピードが変われば戦い方も変わるって意味でしょ」


 ラノベ知識で答えると、アベルは驚た表情になり、続いて、疑うような眼を俺に向けた。


「あぁ、大体そんな感じだ。てか、お前七歳児って、やっぱ嘘だろ!」


 やっぱ、ということはもともと疑われていたようだ。自分のお粗末な演技が少し恥ずかしくなった。

 そして、特に隠す意味もないのであっさりと、転生者だということを話す。もちろん、いじめの下りとかは、軽めにして、死にたかったとかは伝えなかった。なんとなく、気恥ずかしかったからだ。

 すると、アベルは納得したような顔をしていた。


「なるほど、転生者だったのか」


 驚かれずに信じたことに驚いていると、アベルは、さも当然だろうという態度で話す。


「たまにいるんだよ、異世界人とか、この世界の文字だって、そいつらが伝えたものらしいぞ。あと勇者とかも、その世界の住人らしい」


 さらりと告げられた事実に再度驚く。この世界では、異世界というのが、信じられているのか。

 と、同時に納得するところもあった。なぜなら、母さんが、いくら俺のことを信じてくれたからと言って、異世界を簡単に受け入れすぎだと思っていたのだ。

 それに、この世界の文字が日本語に近いのもおかしいと思っていた。

 そうじゃなきゃ、幼稚園児レベルの知識しかないヴェールのこの世界の知識で本なんかまともに読めるわけがない。


「といっても、転生者は大分珍しいんだがな。現世に、空間の割れ目ができて迷い込んでしまうことはあっても、魂だけでこの世界に迷い込むってのはほんとに稀なことだからな」


 これが、異世界の認識か。

 魂とかよくわかんないな。て〇スラみたいに、界渡りで強くなってるとかないかな?ま、ないか。この世界、スキルとかもないみたいだからな。


 そんなことを考えていたら、アベルは手をパンと叩いた。


「さて、話はこれくらいにしてそろそろ始めるか」


 そして、そう口を歪めながらつぶやいた。


 この後、めちゃめちゃ走らされた。

 走りすぎて、吐いたのは初めて――ピーーーーー(規制音)

 もう半年以上たつのに、10話もいかないってどうなんでしょうね?

 次回もかなり遅くなりそうです。申し訳ありません。

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