表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/24

第22話 決闘

 長くなったので分割。

 今の俺の気持ちを正直に言おう。


 “寂しい”だ!


 だって琴葉が、前賢狼の森に行ってから全然かまってくれないんだもん。

 

 甘いお菓子を作ったり、地球のおもちゃを作ってみたり色々と試行錯誤してみたけどダメだった。

 因みに、隠れてみてたら普通に喜んでくれてた。


 その反応が可愛いのなんのって。


 まあ、それは置いておくとして、

 兄離れ、ちょっと早すぎませんかねえ?

 つい最近兄認定されたばっかだよ、まだ1年もお兄ちゃんやってないよ⁉


 さーーみーーしーーい。


 ふぅ、ちょっと落ち着いた。


「あ、琴葉」


 ちょうど琴葉を見かけたので声を掛ける。

 

「あ、おに…ふん」


 すててててててぇー、と走り去ってしまう。


 かわえぇ。

 けど、俺からニゲタ。ニゲタ?ニゲ…タ。


 ニゲるってなんだっけ?

 逃げるとは、面倒なこと、いやなことから積極的に遠ざかろうとする。(辞書参照)


 俺は、いやで、面倒?


 あ、こりゃだめだ。パっきりと心が折れる音が聞こえた気がする。

 母さん先立つ不孝をを許し下さい


「ヴェル、ぼーっとしてどうしたの?」


 女神のようなきれいな声が聞こえる。


「なるほど、ここが天国(エデン)か」


「何言ってるのよ?」


 半ば呆れたような声で、母さんが聞く。

 そのこえで、正気に戻る。


「だって、母さん…」


 迂闊にも涙目になりながら、母さんにさっきまであったこと話す。


「なるほど、これはかなり重症ね。なら、そろそろ頃合いかもね」


 母さんが何やら思案しているようだ。ぶつぶつと、俺の割といい耳でも聞き取れない声で呟いている。


「まあ、大丈夫よ。ヴェルの思ってるようなことじゃないから」


 母さんはそう意味深に笑うだけで、それ以降何を聞いても答えてくれなかった。




「エル、ちょっと聞いて」


 琴葉が、俺に話しかけてくる。

 それだけで、浮かれそうになるが、問題はお兄ちゃんと呼んでくれなかったことだ。


 確かに俺は兄としてふがいなかったかもしれない。威厳なんてあるとはとても言えない。


 だからこそ、今威厳を示せるように、毅然として返事をせねばならないのだ。


「なに〜琴葉〜?」


 うっわキッも、なに猫撫で声とか出してるんですかねぇ、俺は。

 こんなんだから、琴葉に呆れられるんだよ。


「お兄…じゃなくって、ヴェル、戦おう」


「なにで?」


 深呼吸をして、琴葉が真剣な顔をする。


「決闘で」


「どっ、どうして」


 こんな時でも動揺する自分が情けない。


「どうしても」


「ッーーーー」


 琴葉が本気なのだと、魔力の高ぶりで理解させられる。


「本気、なんだね」


「うん」


 なにが理由かはわからない。

 でも、兄としてこれは受けなければならない気がした。


 手加減すれば、怪我も最小限で済ませられるだろう。


 深く息を吐き出し、覚悟を決める。


「ルールは?」

 

「命に関わる事、後遺症が残る事はなし。それ以外は、なんでもあり」


 無理をして淡々と話しているような気がする。

 確証はないけど。


 理由はわからないけど、戦う事自体が目的ってわけどもなさそうだ。


「その勝負、俺が見届け人を務めよう」


「うお、どっから湧いたアベル」


 唐突に、どこからともなくアベルが現れて俺と琴葉の決闘を見るという。


「エル、一つだけ言っておく。お前は弱い。以上だ」


 そりゃ、アベルに比べたら俺なんてミジンコみたいなものかもしれませんけど、それでも修行してちょっと前とは比べ物にならないくらい強くなってるんですけど?


「そっすね」


「はぁ」


 心外にも、溜息をつかれた。


「まあいい。琴葉、エル、準備はいいか?」


「いつでも」


「いいよ」


 俺は木刀に手をかけ、琴葉は腰を下げ魔力を高め始める。


 淀みなく魔力はきれいに流れる。俺にはできないので、正直自信を無くす。

 だが、そんな様子はおくびにも出さず、余裕があるようにふるまう。


 先手は琴葉だった。


 琴葉の背後に十数個の火の玉を浮かべる。


 それが掃射される。


「ふっ」


 幸いスピードはそれほどでもなく、アベルとよく模擬戦をしている俺なら躱すことができる。

 ただ、


「俺遠距離攻撃できないんだよな!」


 だから、このままではジリ貧だ。


 なんかFPSで近接縛りしてるような気分になってきた。


「ふぅ…」


 ようやく体が温まってきた。集中力も高まってきた。

 普段より良く周りも見える。


 息を吐きだし、全力で駆け出す。


「琴葉、行くよ」


 魔力を感じながら、最低限の動きで、火の玉をすべて避けていく。


「単調なんじゃないか、琴葉?」


 高揚感に任せて、駆け抜ける。

 琴葉は何も言わず、表情も少し俯いていていて窺えないが、焦っているのではないだろうか。

 兄としての威厳を取り戻せているような気がした。


「お兄ちゃん」


 琴葉がそっと呟く。


「馬鹿に…しないで!」


 琴葉の雰囲気が変わる。

 一段階ギアが変わったのが分かる。


「馬鹿になんてしてないさ」


 琴葉が、一歩踏み込み、それと同時に駆け出す。


 近づくことで徐々に増していた弾幕の密度が急激に上がる。


 掠る程度だが被弾が増え始める。


「まだ本気じゃなかったのか。

 でも、まだ足りないよ」


「それがバカにしてるって言ってるの!!」


 彼我の距離、残り3メートル前後。


 届く!!


「え?」


 うし……ろ?


「う、おぉぉぉぉ!」


 魔力が後ろから来るのを感じて、慌てて転がって避ける。

 まじか、遠隔操作なんて可能なのか。


 なんて考え事をしてたら、四方八方を火の玉に囲まれていた。


「魔力効率悪いからあんまりやりたくなかったんだけどな」


 髪の魔力――最近練習で水属性の魔力を髪に蓄えている――をただの水に変換する。

 それによって、琴葉の魔法を相殺する。


 と、同時に目くらましにもなる。

 水蒸気で視線が切れ、その隙に一気に接近する。


「はあぁぁぁぁ!!」


 気合の声を上げ、琴葉に木刀を振り下ろす。


 勝った!!っーーー⁉︎

 

 寸でのところで避けられ、剣を持つ片手を掴まれ、背負い投げの要領で投げられる。


 そのまま、関節を極められる。

 動けない。すなわち。



 負けた。




 そう、負けたのである。


 妹に、自分が守らなければならないと思っていた相手に。

 何もできずに、手も足も出ずに完封された。


 これほどの無様があるか?


 だが、ここで逃げることはしない。言い訳もしない。

 辛うじて残っている僅かなプライドがそれをさせなし、許さない。


「琴葉、俺の完敗だ。強いな琴葉は。ごめんな、無様なお兄ちゃんで。もっと強くなるからさ、その時はお兄ちゃんって呼んでくれないか」


「…がう」


「?どうした琴葉」


「違うって言ってるの!!!」


 琴葉の初めて見せる怒り。

 俺は、訳も分からず困惑するばかり。


「エルは、本当は最初から本気だったら私に勝てたよね?」


「いや、それは…」


 勝てたかは兎も角、俺は本気ではなかったのだ。


 ここは森の中。障害物だらけ。

 隠れる場所には事欠かない。アベルとの修行で、木の上での移動や戦闘の訓練は重ねた。


 一度視界を切ってしまえば、魔法は当たらない。

 琴葉の索敵能では俺を見つけられず不意打ちで倒すことは可能だっただろう。

 たとえ失敗しても、少なくともここまで無様を晒すことはなかっただろう。


 だが、それをしてしまえばフェアではない。それに、妹にはカッコよく勝ちたいと見栄を張った。

 その結果がこの無様だ。


 ただの、怠慢。油断でしかない。

 結局は俺の弱さだ

 だから… 


「俺の負…「格好つけるのはやめて!」けだ…?」

 

 俺の降参の声は琴葉の言葉に遮られた。              

 なんで作者はいつもテスト期間に投稿してるんですかね?

 

 次の投稿はそんなにかからないと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ