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第20話 sideメアリ

遅れてすいません。

 私はメアリ、ヴェールの母親だ。

 

 あの子が前世の記憶を思い出したときには驚いたが、その本質は、何も変わらないの。

 私の愛する息子で、ちょっとやんちゃな子供だということに違いはない。


 それに、あのこは過去の経験からか、自分に対する痛みには鈍いが、他人に対しては過敏と言っていい程に、反応する。

 自分が傷つく分にはおそらく耐えられても、自分の大切なものが傷つき壊れたら、ひどく脆いように感じられる。


 以前なんて、琴葉がスープを飲んで火傷しただけで大慌てしていた。


 それなのに、私がアベルに修行が厳しすぎるんじゃない?といったときも、自分が望んだことだからと、固辞していた。


 あんなこと大人であっても耐えられない人の方が多いというのに、あの小さな体で、健気に頑張る姿は、母として、止め止めてはいけないのだろうと思うが、ボロボロの姿で帰って来るのは、ひどく心臓に悪い。

 しかし、それが、私や琴葉を守りたいからというのだから、止めるに止められないのだ。

 

 そして、琴葉も似たようにに感じているようで、毎日ひどく心配した様子だった。

 しかも、あの娘は自分を守るために必死に戦ったエルの姿を見ている。


 あの時だろう、本当の意味で琴葉がエルに懐いたのは。


 元来妖狐という種は警戒心が強く、知能も高い。だから、人種(ひとしゅ)(亜人種含む人型の生物全般)に対しては、めったに気を許さない。

 だから、初めは自分を庇護する対象として、本能的にエルを利用しようとしていた。それは、エルも薄々察していたようだった。


 それだけに、驚いた。

 あの事件の後、たどたどしく琴葉が、エルのためにできることがないか、聞いてきたことには。



 ***



「メアリ、お兄ちゃんのためにできることはない?」


 琴葉が、たどたどしく質問してくる。


「琴葉、あの子はね他人を頼るということをほとんどしようとしない、いえ、できないの。どうしてもってとき以外わね。だから、その時のために、あの子が頼れるくらい強くなって。あと私のことは母さんって呼びなさい」


「うん!お母さん」


 迷うことなく、あっさりとして返事だが、その瞳には強い意志を感じさせる。


 それから、私は琴葉に魔法を教え始めた。

 

 それで分かったのだが、琴葉には十分な才能があると言える。魔力量は、一人前と呼ばれるⅮランク冒険者を基準として百倍程の魔力がある。これは、冒険者最高ランクのSランクでもおかしくないレベルだ。

 エルやアベルで百五十倍程、私は…言わなくてもいいかしら。


 と言っても、魔力量はある一定の指針程度にしかならない。

 例えば、ヴェールの植物系と水の属性のように、相性や、技術によって魔力効率は大きく変わる。


 燃費については、修行で大きく改善できるが、魔力量に関しては、子供のうちには、ある程度成長するがそれ含めて先天的なものが大きい。

 だから、うちの子たちは凄まじい才能を秘めていると言っていい。


 私は、琴葉と属性が違うが、魔力の扱い、魔法の使い方、遠距離戦での戦い方、それ以外にも色々と、私が教えることができる。


 これからの修行次第で、どこまでも強くなるだろう。

 エルは、速度のある前衛に、琴葉は強力な魔法で、エルのサポート。最高のパートナーとなってくれるだろう。

 何より、見ていて微笑ましいくらい、仲のいい二人だ。その信頼は、完璧に近いコンビネーションを生む。


 きっと、二人でなら、私やアベルも超えるくらい。


 私や、琴葉はあの二人みたいに回復魔法が使えないから、長時間訓練を続けることは難しい。

 しかし、琴葉は驚くほど呑み込みが早い。

 だから、現在総合的に見ればエルとそう差はないだろう。


 まあ、少し考えれば当たり前のことだったのだけれど。

 そもそも、妖狐は修行などせずとも人間よりよほど強い種族である。そのためポテンシャルは比べるまでもなく、能動的に、明確な意思を持って強くなろうとしたのなら結果は明白だろう。


 だから、すぐにエルにも追いつくはずだ。


 あの二人が協力して戦えば、私やアベルですら超えるのではないのだろうか。そんな期待をさせてくれる二人だ。


 それだけに、修行の時間の関係上、余り一緒にいさせてあげられないのが可哀想だと思う。


 ここまで、語っておいてどうかと思うが、本当は二人に命をかけた戦いなんてして欲しくは無い。

 けれど、これは私の親としてのエゴだ。あの子たちがそれを望むのなら、何かを守れる力が欲しいというのなら、私はそのために力を尽くしててあげたい。

 それが、私が母親としてしてあげる数少ないことだから。私は家事とかできないしね。


「お母さん、どうしたの?」


 琴葉が、少し心配そうに私の様子を窺う。

 

「大丈夫よ」


 そんな姿が愛おしくて、琴葉の柔らかな髪をなでる。

 耳ももふもふしていて撫でてるこっちのほうが心地いい。

 しかも、琴葉も目を細め気持ち良さそうにしているから、誰も損をしない。


 エルが夢中になるのもわかるというものだ。


「ただ、エルと琴葉は、いつまでも仲良くいてくれたらなって思って」


「うん、お兄ちゃんとはずっと一緒だよ!」


 満面の笑みで、屈託なく笑う姿をみて、心配しすぎだったかなと思う。


 どうか、この子たちのこれからが、幸せに溢れたものであるように、ただ、そう思うことしかできないことに歯痒さを感じながら、目の前の今できることを、精いっぱいやろうと改めて心に決めた。





 テスト前日にこうゆうことしてると、焦燥感すごいですね。

 

 2021年 1月22日 ヴェルをエルに変えました。 


 ぶっちゃけ、ダンまちと同じだったからですね。

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