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第14話 予想(妄想)通り

 今回ちょっとやらかしたかも。

 オオカミに襲われてから一晩明けた。大変な経験だったが、大きな意味があった。


 魔物という存在、その恐怖や脅威。それを知ることができただけで、十二分に昨日は価値があったとわざるおえない。悔しいけど。


 琴葉だが、本当にただ寝ていただけのようで、家に着く頃にはケロリとしていた。

 俺は魔法の特訓と称して、自分で回復しなければいけなかったため、寝るまでに傷は治りきらなかった。それで、風呂で一人で涙目になっていたのはここだけの話だ。


 因みに、母さんもグルだったようだ。あっさりと自白した。

 まあ、あのタイミングでどこかに消えるってのも都合がよすぎるからな。


 ここまでいろいろと状況を振り返ったが、未だにこの状況を理解できない。


 時は、俺が朝起きた頃に遡る。



***



 チュンチュンと、爽やかな朝にふさわしい鳥の囀りで目が覚める。


「いい朝だ」


 まだ体に多少は疲れが残るが、窓から差し込む日の光が心地よい。

 前世(引きこもり時代)では考えられなかったな。


 そんな幸せをくれたのは、母さんや、この傍にいる琴葉なのだろう。


 その感謝を込めて、琴葉をそっと撫でる。

 柔らかくすべすべして、癖にな―――すべすべ?


 確かに琴葉の毛並みは最高だった。そこに議論の余地はないだろう。

 だが、すべすべという言葉が当てはまるかと言われれば、否と言わざる負えない。なぜなら、最高のモフモフであるからだ。最高のモフモフであるからだ。


 じゃあ、何なのかと聞かれると答えに困る。

 感覚的に髪の毛のように感じるのだが、母さんではないだろう。


 えーい、男は度胸。覚悟を決めて、手の方に視線を向ける。


「え?」


 そこには、全裸の幼女がいた。

 もう一度言おう。全裸の幼女がいた。


 ―――ゼン…ラ?


 状況を客観的に見よう。

 中身高校生の男と全裸の幼女が、一緒に寝ている。

 やべえ、犯罪臭しかしねえぞ。


 いや、待てよ、俺の見た目は、子供。なら何の問題もなくないか?

 よし、問題ないな。なら、


「二度寝と洒落込みますか」


 そう、再び布団に入ろうとした時だった。


「エル、朝…よ……?」


 母さんが部屋に入ってきた。


「あら、お邪魔しちゃったわね♪ごゆっくり~」


「ちょっ、ちがっ…」


「ゔぇ~る」


 最悪のタイミングで、幼女が俺の名前を呼び、抱き着いてきた。


「じゃあ、私は行くから、またあとでね」 


 こういう時は、焦るからダメなのだ。

 やましいことなど何もないのだから、冷静に声を掛けるのが大事なのだ。


「か、母さん!ききき、きっと話せばわかると思うんだ」


ダメだったーーー!!


「ええ、分かっているわ。大丈夫、だからごゆっくりね」


 なるほど、全然わかってない。

 いやマジどうすんだよこれ。


「あの、母さんこれには、マリアナ海溝並みに深い理由がありましてですね」


「マリアナ海溝ってなによ?いえ、そうじゃなくて、だから、分かってるって言ってるじゃない。その子が目覚めたら枕元にいて、エルには身に覚えが全くないっていうんでしょ」


「うん、そうだよ、その通りだよ。でも、分かってるならなんでそんなこと言ったの?」


「だから普通に、分かっているから(ゆっくり寝なさい)ね。っていったのよ?」


 母さんは、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、そう言った。

 つまり、ただたんに揶揄われていたと。まあ、母さんならいいか。

 ただし、アベル、お前は許さん。


「でも、じゃあこの子は誰?」


 そう、根本的な問題が、解決していないのだ。


「琴葉よ」


「え?」


「だから琴葉よ」


「えーーーーーーーーー⁉」


 いや、まあ正直琴葉が妖狐だって聞いたときに妄想もとい想像しなかったとか言ったら大ウソつきになるよ。

 だけど、急に全裸の幼女になるとか普通思うか。(ごめんなさい、ちょっと思って(妄想して)ました)


 そういえば、耳と尻尾はいつもの琴葉のモフモフだ。

 ただし、尻尾が二股に分かれえいることを除けばだが。


「琴葉の尻尾増えてない?」


「いってなかったかしら、妖狐は成長に伴って尻尾が増えて尻尾が増えて強くなっていく種族だって」


「初耳だよ⁉」


「そういえば、言ってなかったわね」


 最近分かってきたが、母さんって多分大分適当な人なんだよな。


 料理とかもおおざっぱだし、息子に平然と魔物と戦わせるし。


「ゔぇーう、どうしたの?」


 寝ぼけているのか、少し舌足らずなしゃべり方が最高に可愛い。


「どうしたのかな?」


「エル、流石に気持ち悪いわよ」


 腕をさすりながら母さんが言う。

 必死に優しい声を出したのだが、気持ち悪かったらしい。

 自分でもわかってるよ。


「こっち来て」


 そういわれ、琴葉の近くに寄る。


「ぎゅう~」


 琴葉が抱き着いてくる。

 

 え、なにこれ、俺夢でも見てるの?

 狐っこ(かわいい)が俺に懐いて抱き着いてくるって、何俺死ぬの?

 まあ、死んでもいいんじゃないかな。


 などと、思いっきり錯乱していると、琴葉が不安そうな顔でこちらを見上げてきた。


「ゔぇーるはいや?」


 俺が、何の反応も示さなかったことに不安になったようだ。


 何この可愛い生物、やばい、抱きしめていい?

 いや、いいんだよね。むしろ向こうら抱きついてるしいいんですよね。


 そんなくだらない、言い訳を自分にして納得し優しく琴葉を抱きしめる。


「はうぅ」


 琴葉が可愛らしい声を零し、思わず口元が緩む。


 そして、俺はついに耐え切れなくなった。


 だって、こんな可愛らしい子が無防備に俺に抱き着いてるんだよ。

 だって、こんなに俺に懐いてるんだよ。

 だって、狐っこだよ。耳も尻尾ももふもふよ。

 だって、こんな機会、一生ないかもしれないじゃん。


 だから…だから……だから…………………。


「琴葉、俺のことを―――――、『お兄ちゃん』って呼んでくれないか!」


 琴葉の反応が怖くて、思わず目をつむってしまう。

 まるで、一世一代のプロポーズでもしたような気分だ。

 そんなリア充イベント俺には関係なさそうだけど。


「お兄ちゃん?」


 ズキュン!

 あどけない表情で、上目遣いに琴葉が、琴葉がががが―――。


「うおっほん、そろそろいいかしら」


 母さんのわざとらしい咳払いで現実に引き戻される。

 その母さんは、微笑ましいものを見るような、呆れるような不思議な表情を浮かべている。


「ごめん、かあさん。琴葉が可愛すぎてつい」


「おかあさん、ごめんなさい」


「この子、娘にしましょう」


 そのとき、俺と母さんの心がかつてないほどにシンクロした。


 この子を、妹に(娘に)と。

 がっちりと(心の中)で握手を交わす。


「琴葉、これからは、俺は琴葉のお兄ちゃんで、母さんは、琴葉のお母さんだから」


「うん、お兄ちゃん、お母さん」


 琴葉の太陽が咲くようなキラキラとした笑顔に、俺と母さんはとても癒された。


 それから、母さんが俺の服を琴葉に着せ(その間、俺は部屋の外に追い出された)思う存分、母さんと琴葉をめでた。


「よし、そろそろご飯にしよっか」


 自分に言い聞かせるのも含め、二人に呼びかける。


「エル、頑張ってね」


「お兄ちゃん、ふぁいと♪」


 母さんを恨みがましい目でみて、琴葉に笑顔を向けて、俺は一人で料理に向かう。


「あ、琴葉って普通のご飯食べれるの?」


「うーーん、食べてみる!」


 首をかしげてから、元気よく答える琴葉は、相変わらず可愛くやる気が湧いた。


「そっか、なんか食べたいものある?」


「お兄ちゃんの作ったの!」


 無邪気な顔で、兄冥利に尽きることを言ってくれる。

 これは、腕によりをかけて作るしかないな。


 子供が好きなもので、朝ご飯だよな。

 まあ、ホットケーキか、フレンチトーストとかかな?


 

 結局、ホットケーキを作り琴葉が喜んでいたので大満足なヴェール君なのでした。

 母さんも、作ったこっちが驚くほど喜んでくれたので、幸せだった。

 

 だが俺はこれが、束の間の平穏だということは理解していた。


 なぜなら、あの男が、


「エル、修行するぞ」


 まだ来ていなかったのだから。


 ほんとはもっと短くまとめて、次のこと書く予定だったんです。

 でも、書きたくなってしまいました。過去一で、筆が進みました。

 楽しんでいただけたのであれば幸いです。

 次話はもう少し早く投稿できるといいな。

 学校始まったら遅くなるかもしれません。

 

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