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12話 お買い物と・・・

 俺はこの数か月修の修行で、ようやく、3時間程度なら髪の色を変え続けられるようになった。

 何度気絶して、何度吐いたかはこの際どうでもいい。

 重要なのは母さんと町(村)に行けることだ。


 もしかしたら、今世初めての友達なんかできちゃうかもしれない。前世も最終的に一人もいなかったから目指せ、ボッチ脱却というのもある。

 それが、美少女幼馴染とかだと、男の子的に最高だよね!


 冗談はさておき、今回は塩や香辛料などの調味料が欲しい。加工前のものでもいいから、手に入れておきたい。

 だが、母さんの野菜とのブツブツ交換なので交換できるものには限度がある。持っていける野菜にも限度があるからな。


「エル、そろそろ行くわよ~。準備済ましちゃいなさい」


「はーい」


 大き目の鞄に、料理用のナイフや、ハンカチなどを詰めて準備完了だ。


 いよいよだ、いよいよ町に行ける。

 この時のために、必死に毎日魔力吐き出して魔力総量をバカみたいにあげて来たんだ。

 一つ、使いたい魔法もあるしな。フフッ。


 


***   



 そういうわけで、俺は町に母さんとやって来ていた。

 母さんは、両手に大きな手提げを持ちリュックを背負っている。

 

 俺は、力がないからその半分も持つことができない。

 …情けない。


 それはともかく、琴葉は目立たないようにリュックの中に入れて連れてきた。

 顔だけちょこんと出している姿が可愛い。はっきり言って、萌える!!


 ゴッホン。

 何人かの人と交換するらしいから、一人俺が話せと言われている。コミュ障には厳しい試練だ(泣)


 村に入る前に俺は髪に水魔力を流し込む。

 そして母さんは髪から魔力を抜いていく。すると、陽光を受けキラキラと輝く美しい銀髪に変わる。


 髪から魔力を抜く方法話は、難易度的に俺にはまだできる気がしない。

 それは、循環してる魔力の流れを強制的に止める技術だ。定期的に水属性の魔力を流して溜めておくだけなのに比べ常に高度な魔力コントロール求められるから、難易度はけた違いだろう。

 それを顔色一つ変えずにできるとか、流石は母さんだよな。 


「あ、こんにちは。お久しぶりです」


 母さんの知り合いらしい。恰幅のいい肝っ玉ばあさんって感じだ。


「あら、久しぶりねぇ。そんなに畏まらないでいいって言ってるのに。それにしても、老けないわねぇあなた。私なんて、もうおばあちゃんよ。いつ死ぬかなんて分かったもんじゃないわよ」


 と、笑う姿からはこのおばさんが死ぬのは相当先なのではと思わせる、おばちゃんパワーみたいなものを感じる。


「じゃあいつもの、お塩と交換お願いできますか?」


「むしろこっちからお願いしたいくらいよ。メアリさんのお野菜は驚くほどおいしいんだから!」


 内心で激しく同意しつつ、おばちゃんを観察する。

 人間観察は前世からの癖みたいなものだ。見ていないと、何となく不安になるんだよね。

 例外は、母さん、琴葉、アベル、今のところこの三人だけだ。


 そうして、塩一袋と俺が手に持っていた手提げいっぱいの野菜とを交換する。

 この辺りでは、貴重なものなのだから、妥当だろう。


「あら、そのこが前言ってたお子さんかしら?でも息子さんじゃなかったかしら。もしかして、妹さんかしら、可愛いわね~」


 すごい弾丸トーク(一人)だ。全く割り込むすきがなかった。


「い、いえ。一応男ですヴェールって言います!」


 初対面だから、敬語は大切だよね。

 まじめな話初対面から、ため口で距離感地縮められる人ってすごいと思う。尊敬する。

 

 妹さん呼ばわりは、若干不服だが母さんの趣味で中性的な服装だから間違うのはしょうがないから許そう。けして、俺が男らしくないとかそんな理由じゃない。ないったらない。

 …ないよね?


「あら、ごめんね。お詫びに飴ちゃんあげちゃう」


 大阪のおばちゃんか!

 

 でも、久しぶりの甘味。有難くいただくとしよう。


「ありがとうございます。食べてもいいですか?」


「ふふ、そんなもの欲しそうな顔しなくてもいいわよ。取ったりしないわよ」


 は、俺としたことが、がっついてしまったようだ。


「で、では」


「ふふふ、可愛らしいわね~、初々しいわね~」


「あ、母さんこれ半分にしてくれない?」


「いいわよ、はい」


 そう言って、母さんは素手で飴を切り裂き俺に渡してくれた。母さんは、体術ができるらしいから、そこまでの驚きはない。まあ、でも素手でこの奇麗な断面は、マジで意味わかんないけどな。


 では、今度こそ。


「はうぅ~」


 ただの飴だとゆうのに、久々に食べたということも相まって思わず声が出てしまうほどにうまい。


「よかったわね、じゃあ、私にもその半分を」


「へ?琴葉のだけど?」


「そ、そうよね。私の分なわけないわよね」


 母さんが、すごいへこんでる。ものすごい罪悪感。

 でも、琴葉に食べさせてあげたいから心を鬼にせねばならないけど、流石にこのままだと悪いから、


「今回砂糖が手に入ったら美味しいお菓子作るから」


 そっと耳打ちする。7歳児が、母親にお菓子を作るという光景。

 なんかシュールだな。

 

「別に、気にしてないわよ」


 そう朗らかに笑い、俺の頭を撫でる母さんだがよだれが少し出てる。

 

 黙って、口元を指す。

 すると、母さんは一瞬で口元をぬぐう。


 本当はもう少しからかってみたいところもあるけど、母さんの可愛いところも見れたので良しとする。


「ふふ、仲がいいのね」


「はい!」


「ええ、そうですね」


 少し面映ゆいが、他人から見てもそうだと言われると嬉しい。


 そこから、少し雑談をして別れることになった。


「今日は、ありがとうございました」


「ありがとうございました」


「いえ、こちらこそ。それに、微笑ましいものもたくさん見れたしね」


 若干顔が熱くなるのを感じながら、そのまま別れる。


「いい人だったね」


「ええ、そうね」


 そうして、俺と母さんはお肉や、その他もろもろを交換し最後に俺の番となった。

 見るからに頑固爺といった感じだが、大丈夫だろうか。


「こんにちは、おじいさん」


「おう、どうした嬢ちゃん?」


 いい加減間違えられるのは、慣れた。今は、訂正するのすらめんどくさい。


「あの、僕母さん、えと…メアリの()()のヴェールって言います」


「ああ、メアリさんの息子さんか。て、嬢ちゃんは嬢ちゃんじゃなくて、坊主だったのか」


「はい、ちゃんと男の子です」


 苦々しく俺が呟くと、おじいさんは俺に同情してくれた。


「悪かったな。坊主も苦労してんだな。で、なんのようだ?」


 そうだ、俺は、ここでどうしても手に入れなきゃいけないものがあったんだ。

 あと少しなんだから頑張るぞ俺!


「あの――――を交換したいんですけど?」


「あ、坊主にはまだ早いだろ。ふざけに来たのか?」


 思わず、後ずさりしそうな迫力だが、アベルの威圧を日々受けている俺からすれば、大したものでもない。


「いえ、僕じゃなくて僕の師匠のためのものです」


「そういうことか。怖い顔して悪かったな」


「いえ、慣れてるので大丈夫ですよ」


 そう笑うと、おじいさんは頭を撫でてくる。若干恥ずかしいが、嫌でもなので、甘んじて受けることにした。


「孫に欲しい」


 今ぼそっと言ったことはばっちり聞こえているが、反応に困る。

 最初の、頑固爺然とした表情が崩れ好々爺善とした爺さんになっている。

 

「あ、あのそろそろ交換、お願いしても…」

 

「おう、そうだったな。悪い悪い。で、どのくらいほしいんだ?」


「じゃあ、これがいっぱいになるくらいでお願いします」


 といって、俺は手のひらサイズの麻袋を差し出した。


「それなら、少しおまけして、その鞄の野菜半分くらいでいいぞ」


「それだけでいいんですか⁉」


 母さんが、相場はこのかばんいっぱいぐらいだと言っていたから、実質半額ほどだ。

 鞄は7歳の小柄な俺でも持てる程度のサイズだ。


「子供がそんなこと気にすんじゃねぇよ。それに、お前みたいな可愛いガキには優しくしたくなるのが、爺の習性なんだわ」


 そう、快活に笑う姿には、あまり年寄りという印象は受けない。


「あとは、たまにでいいから遊びに来てくれや」


「はい、また遊びに来たいと思います」


「おう、そうか。いつでも来ていいぞ」


 そういうおじいさんの表情は、最初とは比べ物にならないほど和らいでいた。


「今日は、ありがとうございました」


「それじゃあな」


 軽く会釈し、俺はその場を後にする。

 

 幼馴染はできなかったが、おじいちゃんができたみたいな気分だな。



 用事も、終わったので人気のないところに行く。

 そして、鞄から琴葉を出してやる。


「長い間、閉じ込めっぱなしでごめんな。はい、これ。あの時の飴だよ」


「ク――ン」


 俺が、手に置いて差し出すと、琴葉は匂いを嗅いで恐る恐るといった様子で舌で舐める。

 一口舐めると美味しかったのだろう。すごい速さでペロペロと舐め始める。


 ……気に入ってくれたのはいいけど、手から直接舐めるからすごいくすぐったいんだけど。

 


 そんなことを考えるていると、初めのおばちゃんが駆け寄ってきたので、急いで琴葉を鞄の中に押し込む。


「あ、ヴェール君。こんなところにいたのね。あなたのお母さんが何か急用らしく、一人で帰ってきなさいですって」


 話し方からして、琴葉には多分気付いていない。


 それよりも急用?今までそんなこと一度もなかったのに何だろう。

 まあ、多分道は覚えてるから帰れるだろう。


「はい、大丈夫です」


「そう、じゃあ気を付けてね」


「はい、ありがとうございます。では、さようなら」


 村が見えなくなった辺りで、鞄から琴葉を出し降ろしてやる。

 飴はさっきの拍子に落としてしまった。

 だからかは分からないが、さっきから俺の足をゲシゲシと叩いてくる。


「よし、帰るか」


 そうして、俺たちは帰路を辿る。


―――ズサッ


「え………?」


 コマ送りになった俺の視界に移るのは、夥しい量の血をまき散らしながら宙を舞う琴葉の姿だった。



 受・験・終・了!!

 大変長らくお待たせしました。

 これからは、以前よりは投稿ペース上げる予定です。


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