幻のシンガ-
俺の名前は黒神 尋。俺は、とある高校で吹奏楽部の部長をやっていた。全国で金とるくらいの強豪校で、部員は3年ふくめ150人ほど。そんな俺だったが、全国大会の前日、帰宅途中に運悪く大型トラックと衝突。即死だった。
とまぁ、ざっとこんな感じだが、きっと読者さんは納得してないだろう。
そう、俺はなぜ死んでるのにしゃべれんのかって話だ。
まぁ、聞いてくれ。俺は死んだ直後、よくわかんねぇ場所にいた。壁は茶色の、まさにゲームに出てくるダンジョンてきな。服は死んだ時とちがって、紺の自衛隊が着てそうな服で、半袖にヒートテックみたいな黒いのだった。近くにはケースに入ったホルンがあり、チュ-ナ-もあった。
辺りを見回していると、青いリボンで長い白髪を束ねた女性がいた。俺と同じような服だが、ヒートテックみたいなやつの上は、肋骨のあたりで終わっており、ズボンも短く、体型が分かりやすかった。俺は女性に話を聞こうと、立ち上がり、訪ねた。
「あ、あの、ここどこか知りませんか?」
振り向いた女性が、驚いたように目を見開き、その後少し笑った。
「ここは、異世界って言ったらわかるかな?こんにちは。地球出身のホルン奏者さん。私の名はシェルヴィナという。この世界では幻と言われたシンガーだ。10年ぶりに地上に戻るとこだ。どうだ、そなたも来るかい?」
あまりの美しさに魅了され、開いた口がふさがらない俺は、とりあえずうなずいた。
「荷物をまとめろ。まずはダンジョンの神にご挨拶だ。」
微笑しながらホルンのケースを俺に渡すシェルヴィナさんは、やけに上機嫌にみえた。
俺とシェルヴィナさんは、俺の現在に至るまでの経緯を話しながらダンジョンの神とかって方に会いに行くための道を歩いた。
「ゼン、シェルヴィナだ。そこでひろった地球出身の青年もいる。」
「入って、いいよ。」
大きな扉の前で、シェルヴィナさんは言った。少年のような少し高い声がかえってきたのを確認し、シェルヴィナさんはドアを開く。
「シェルちゃん、おっきくなったね。前はもっと、ちびっこかった。」
「ゼンも安定の高身長だな。また少しのびたか?」
「10センチくらいだけ。で、その後ろの隠れてる人が地球からきた?」
シェルヴィナさんと軽い会話をしている少年のような声の持ち主は、どうやらゼンと言うらしい。人と話すのが苦手なのか、やけに間が多かった。くらい部屋の中には、ポツリ、とベッドがおかれていた。ベッドの上に、そのゼンという神はいるのだろう。
「そう。ほら、自己紹介くらいできるでしょ?」
唐突だなぁおい。
「地球から来ました。黒神 尋です。ホルンやってます。」
「シェルちゃん、この人ほんとに地球から?ランク、SSだけど。」
「「え?」」
これは、俺の異世界ホルン戦記である。
黒神 尋(18·男)
ホルン奏者。
ねむみのきわみ