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精霊の少女

病棟にはすぐ着いた。

俺はB地区の病棟の最上階へ向かう。

エレベーターの前には学園の治安を守る生徒会の生徒がいる。

俺の顔を見て、エレベーターの扉を開ける。

俺はそこに乗り込む。

すると、もう一人滑り込んでくる。

「精霊ちゃんが目覚めたんだって?」

「…そうらしいな」

序列二位、ノト・レガフストだ。

やや青みがかった銀髪を腰まで伸ばした美しい女性だ。目は少し釣り上がっていて、瞳は深く吸い込まれそうな青。

「ぬー、なんだい。私がいるっていうのに反応しない男は征くらいだよ」

だろうな。実際、ノトは凄く美人だ。だがそれを本人に言うつもりは無い。戦闘面で勝っていてもそれ以外はノトに勝てた試しがない。勉強に料理、炊事洗濯……。これは、勝てなくてもしょうがないんじゃ……。

「で、なんでお前まで来るんだ?」

「それはほら、精霊って女の子だったんでしょ?だったら、同じ女の子がいた方が色々助かると思って」

……色々か。そうだな。着替えとかそう言うものは俺がやる訳にはいかないからな。

「ん、助かる……」

ほんとに、戦闘以外ではコイツに敵わない。

二人でエレベーターを降りて最上階の精霊が眠る部屋の扉の前に着く。

「……んじゃ入るか、開けるぞ」

扉を開けた。

窓から射し込む日差しに少し目を細めるが、直ぐに俺は目を見開いた。

ベッドには精霊として召喚された少女がいた。

長く伸びた金髪は陽の光を反射してキラキラと輝いている。肌は白磁の様に白い。瞳は見事な金色に染まっている。陽の光を反射して輝く月の様な、優しく包み込むような金。

精霊の少女がこちらに気付き顔を向ける。

「……?」

「ほら、征?おーい、おーい!あぁダメだこりゃ」

ノトが呼びかけてくるが、今は何を言われても意味を理解出来ない。

「…………痛っ!!」

ノトが俺の腹を刺している。

「あの、いくら不死とはいえ痛いのは痛いんですが」

「見蕩れるのはいいけど、挨拶!私以外の、それも年下そうな女の子に負けた事はなんにも、微塵も、これっぽっちも関係ないからね!!」

はぁ、ノトは直ぐに俺の体を刺してくる。

不意打ちとはいえまともに食らったのは久しぶりだ。

「あの、……大丈夫なんですか?」

「ん?あぁ、もう傷は塞がってるよ」

少女は少し驚いた顔をすると、納得した。

「貴方が、私のお世話をしてくれる人ですか?さっきいた人が言っていた特徴が似ていますので」

おぉ、なかなか頭の回転は早いらしい。

医者か誰かが黒髪の愛想の悪いヤツが来るとか言ってたんだろう。

「……まぁ、正解だ」

「私は、この人のサポートとして勝手にやるからね」

おっと、自己紹介をしないと。これは初対面の人にまずやるべき事だ。

「俺の名前は黒咎征。んで横のやつがノト・レガフスト」

「征さんと、ノトさん。よろしくお願いします」

すると、ノトが口を開く。

「ねぇ、気になってたんだけど…精霊って日本語喋れるんだね」

「あぁ、それは…召喚された際に現地の基本的な情報が頭にインプットされてますから。どういった原理なのかは分かりません」

なるほど。俺としては戦闘能力の方が気になるんだが、そんな事は言えない。言ったら主に横から剣が飛んでくる。

「……あの、明日から征さんの部屋に移動だと聞いているのですが……」

………………?たっぷり三秒も頭が真っ白になっていた。えっと、何故に?

「当然だろう。君は彼女の世話役なのだ。いついかなる時も側にいて護りなさい!」

振り向きざまに俺は拳を突き出す。

拳は後ろにいる女性の頬を掠め、背後の壁を軽く凹ませた。

「……君はいつもそうだね。そんなに私の事が好きなのかい?これはツンデレと言うものだろう?」

俺の拳をノトが止める。

「ちょ、ちょっと待った!征落ち着いて!フィース!こうなる事が予想できてるんだからいつもいつもちょっかい出さないで!止める身にもなってよね、コイツの本気に勝てるやつなんていないんだからね!?」

「なはは、これはすまない。反応が可愛いものでついついからかってしまうのだよ」

フィース・テラテトス。この学園の医療系を統括している少女だ。見た目は幼いのに精神年齢が高いのか話し方に癖がある。癖の強い赤髪を無造作に伸ばし、白衣を纏った少女。口にはチュッパチャプスを咥えている。

「次やったら殺す……俺のことわりなく何でも勝手に決めるんじゃねぇ」

「んー、そう言われてもねぇ。精霊を守る事は今この世界で何に置いても優先されるべきことだ。そしてそれを完璧に守り切れる可能性が最も高い人物が君とゆう訳だ。必然的に君と共にいさせるのがベストな筈なのだが?」

ぐ、正論すぎる。確かに精霊の召喚には莫大な魔力が必要になる。ポンポンと精霊を召喚できるほど魔力に余裕があるわけがない。なら、一度召喚した精霊を闘いの日まで守り抜く必要がある。この学園での最強は、この国での最強を意味する。

なら、これは俺の仕事……。

ダメだ、自問する度フィースの言っていることが正しすぎて……反論できない。

「……分かったよ、反論するのは諦める。んで聞きたいことがある。そいつの戦闘能力は?」

フィースは不敵に微笑むと、

「君は不死身なんだ。一度本気で戦って確かめてみればいい」

「…………本気でいいんだな」

「まぁ、怪我はさせないでくれよ。ネネ、いいかい?」

精霊の少女は頷いた。

ネネ、それが彼女の名前らしい。


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