和解
「諚…お主は…」
炎魔先生はヤイバ先輩に近づこうとしたが、ためらってしまう。拒絶されると思っているのだろう。
「ユウ、大丈夫か?」
「あまりにも遅いから来てみたんだけどよ。俺らが手助けしないとダメか?」
エンとライテイ先輩も来てくれた。
「これ以上僕たちはなにもできないよ。あとは2人だけの問題だよ」
僕は首を横に振る。それにもう手伝わなくても大丈夫なはずだ。
「…儂はな…お前が暗くなっていくのを見ていることしかできなかった。…儂はお前を助けることができなかった。すまん…謝ってもどうにもならないのはわかっておる…。じゃが、言わせてくれ。本当にすまん…」
炎魔先生が土下座をしてヤイバ先輩に謝っている。その肩は震えていた。ヤイバ先輩はそれを見ると道場の奥へと入っていく。しばらくして出てきたヤイバ先輩は封筒を持っていた。それを炎魔先生に渡した。炎魔先生はゆっくり封筒を開ける。なかには手紙が入っていたようだ。無言で読んでいる。内容が気になるところだけど覗き込むのは反則だろう。
「…諚…お主は…すまなかった」
手紙を読み終わった炎魔先生はまた謝った。ヤイバ先輩は泣きながら炎魔先生に抱きついていた。
「とりあえず、一件落着か?」
「…そうだな。行くぞ」
「そうですね。邪魔しちゃいけないし」
僕たちは道場から出て、応接室に向かった。
「…情け無いところを見られたな。すまん」
しばらくして炎魔先生とヤイバ先輩が応接室に来た。ひとしきり泣いてきたんだと思う。先生たちになにか声をかけたいけど何を言ったらいいのかわからない。てかエン、お前は寝るな。…?ヤイバ先輩がスケッチブックになにか書いて僕に見せてくる。
『さっきはすまなかった。怪我は…大丈夫か?』
さっき…あぁ、道場でのあれか。
「大丈夫です。回復力は自信ありますから」
僕が言うと、ヤイバ先輩はホッとしたようだ。
「…あの手紙には何が書いてあったのだ?」
…ライテイ先輩。それ聞いちゃう?僕も気になる。炎魔先生はヤイバ先輩の方を見る。うなづくヤイバ先輩。
「ほら」
炎魔先生はヤイバ先輩の手紙を渡してくる。えっと…
『ごめんなさい。俺のせいで顧問辞めることになって…。俺の声が出なくなって、塞ぎ込んで。もっと強ければこんなことにはならなかった。先生は責任なんて感じなくていい。この手紙を渡したってことは、俺の中でけじめがついたってことだ。だから…』
手紙はこれで終わっていた。ヤイバ先輩の顔が若干赤い。
『やはり恥ずかしいな。だがもう大丈夫だ。ありがとう』
「儂からも礼を言う」
僕たちは何もしてない気がするんだけど?でも、先生と先輩と仲直り?したし、仲良くもなれたし、いいことだったね。
「お前は人の心や過去が見えるのか?」
帰りにライテイ先輩が聞いてくる。
「お前の推測、考えは怖いほど当たるな」
「たまたまじゃない?」
まあ、みんな表情とか行動とか、周りの環境とかで容易に想像できることなんだよね。言わないけど。
「そういう部分もユウのいいところだよな!」
「そうだな」
エンとライテイ先輩はそう言って笑う。本当に2人に出会えてよかったって改めて思えた。これからもよろしく、なんて恥ずかしくて言えないけどね。