初めての屋上
「よっ、早いなユウ」
「おはよう、エン」
通学路で待ち合わせして2人で学園に向かう。学園は寮はないから、実家からの通学か、1人暮らしのどちらかになる。僕もエンも1人暮らしだ。
「今日から授業開始だっけか?」
「違うよ…昨日何聞いてたの」
先生の話はしっかり聞きなさい。
「今日は学内まわって終わり。いわゆるオリエンテーションだよ。まぁ、1日やるんだけどね」
学内回るだけならすぐ終わると思うだろう。だがこの学園無駄に広い。全部回ると結構時間がかかる。
「よく覚えてるなぁ」
そんな関心することか?
「今日は屋上行こうぜ!」
今日はって…まだ2日目だよ?知り合って全然時間たってないし。でも昼休み、エンと屋上で弁当を食べます。天気もいいし暖かいし、教室で食べるのは勿体無いね。
「あれ、誰もいない?」
屋上は結構混んでるものだと思ってた。エンも不思議そうにしている。
「まぁ、誰もいねぇんならそれでもいいんじゃねぇか?広々使えるしな!」
「まあ、そうだよね」
屋上でゆっくりできるようにベンチとかもある。本当に、なんで誰もいないんだろう?
「あ、よく見たら誰かいる。ほら」
屋上への出口から1番離れたベンチに誰か寝転がっている。寝てるのかもしれないし、近づかないようにしとこ。そう思いながらベンチに座り弁当を広げた。
「お前ら!ここで何してんだ!」
後から来た狐の獣人に怒鳴られた。制服だから教師じゃないね。その近くにサイの獣人もいる。
「普通に弁当を食べてるんだが?」
エンがすでにイライラしてる。面倒ごとに巻き込まれたくないんだけど。狐獣人とかが近づいてくる。あ、エンも立ち上がらないで。
「アニキ!やっちゃってください!」
サイの獣人が言う。狐獣人がアニキなの?エンはヤル気満々で構えている。でも狐獣人は構えるそぶりすら見せない。
「エン!後ろ!!」
僕たちの後ろに何者かの気配を感じてエンに向かって叫んだ。
「な、いつの間に!」
僕もエンもベンチから離れる。ベンチの後ろに立っていたのは白い虎の獣人。この人も制服。エンよりも背が大きくてガタイもいい。…でもなんとなく危害を加えてこない気がする。なんとなくだけどね。
「エン、なんか大丈夫そう。多分だけど、虎さんは何もしてこないよ」
「…マジか?」
エンは警戒するのをやめる。エンは素直だね。他人を信じすぎちゃダメだぞ?
「…お前ら、逃げないのか?」
虎さんが聞いてくる。
「特に危害を加えてこないなら逃げる必要もないと思いますが?」
「…」
答えるだけ答えて、ベンチに座り弁当を食べる。昼休み終わったらやだし。
「この2人と話がしたい。お前らはどこかに行け」
虎さんが狐獣人とかに言う。狐獣人たちはは何か言おうとしたけど、虎さんに睨まれて、何も言わずに行ってしまった。
「なんだよ、話って」
エンが不機嫌そうに聞く。…というか座る位置がひどいと思う。虎さんとエンに挟まれて僕が座ってる。2人とも体が大きいからきついんだけど。
「…友、とはなんだ?」
「…は?」
虎さんの質問にポカンとしてしまう。
「友って、そりゃ何時も一緒にいる奴のことだろ?」
その答えはどうかと思う。
「一緒にいて、楽しいって思える人のことじゃない?あとは気の許せる人、とか」
友を説明しろって言われると難しいかも。
「感じ方とかは人それぞれだから」
友の定義も人それぞれって意味も込めて付け足す。虎さんは何か考え込んでいる。
「…お前たちのような関係を友、というのか?」
「おう!俺らはダチ!いわゆる友だぜ!」
何誇らしげに言ってるの?
「そうか…」
虎さんはまた考え込む。あ、そういえば名前言ってないや。
「僕は時雨ユウ、一年です」
「俺は風音エン!同じく一年だ!」
「…空我ライテイ。三年だ」
あ、やべ。年上にタメ口きいちゃった。
「…タメ口なぞ気にするな。むしろその方がいい」
なんとなく、見た目と違う人だなぁ。…もしかして。
「ライテイ先輩、ここで暴力ふったことないでしょ」
ライテイ先輩はうなづく。
「あと、さっきの人たちの名前知らないでしょ」
またライテイ先輩はうなづく。やっぱりね。
「ん、どういうこと?」
エンは頭悪いの?ここまで聞けばわかるでしょ?
「ライテイ先輩は友達いないの。見た目が怖いから、会う人みんなに逃げられる。さっきの人たちはそれを利用した、みたいな感じかな。さっきの人たちの心理はわからないからそれだけは僕の勝手な推測だけど」
「なるほど」
エンはやっとわかったんだね。…ライテイ先輩ごめんなさい。そこまで落ち込むとは思わなかった。
「あ、チャイム鳴った。教室戻んなきゃ」
ライテイ先輩はなんか寂しそうだったけど、怒られるのやなので。
「…また、屋上に来てくれ…」
ライテイ先輩が泣きそうなので、近いうちに来るようにしたいです。