神国ニッポン
ただのバカ話なので、真に受けないでね。
我が神国ニッポンは、世界に冠たる大帝国であり、その兵士は精強無比であります。
"黄金の鉄の塊で出来ている鋼の魂のダイアモンドの騎士の戦車"を徒手空拳で打ち破り、空から襲い来る鋼鉄でできた戦闘機には竹槍を用いて見事撃墜するのです。
また、隠密として活躍している忍者部隊は、その名が夷狄の国にまで知られており、要人暗殺においては、「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」と、暗殺対象が断末魔の叫び声を上げるほど。
夷狄どもが、
「汚いなさすが忍者きたない」
などと叫ぶも、忍者の恐ろしさ故であることは、"確定的に明らか"であります。
また、軍事科学技術の面おいても神国は他の追随を許すことがなく、"天空城塞ラピュータ"が、30年の長きにわたって我が国の空の防衛の要を務めております。
この天空城塞は、神国が誇る"ジブーリ"と呼ばれる最高技術者集団より生み出されたのであります。
ラピュータには、
「ウオッホン"旧約聖書にあるソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えているがね"」
失敬、こごだけなぜか声色を変えなければならない伝統がわが国にはあるのです。
またラピュータには、インドラの矢以外にも飛行可能な戦闘用ロボットが無数に搭載されており、ロボットが放つレーザーの一撃は城の壁を薙ぎ払い、溶岩の塊へと変えてしまうほど。
私がかつて田舎でただの農夫をしていたころ、空からロボットが落ちてくるなどと言う騒ぎがありまして。
その際見たロボットは、私ごとき凡人でははかり知ることが出来るわけがありませんが、「鉄でできているのか粘土でできているのかさえ」理解できかねました。
またありえぬことではありますが、もしもラピュータが敵に占領されるようなことがありますれば、その際には最終手段として"自爆装置バルッス"がございます。
「バルッス!」
そう叫ぶだけで、飛行城塞ラピュータは自爆して崩壊してしまうのです。
しかし嘆かわしいことに近年では、神国の若者たちがある特定の時期になると「バルッス」と叫びまわる奇怪な祭りが行われております。
そのたびに、ラピュータが自爆しており、空から降り注ぐ瓦礫の数々は、今や毎年の風物詩と言える状態。
まったく困ったものですな。
飛行城塞ラピュータには、司令官として大佐級の軍人が任命されるのですが、彼らは気の毒なことに「バルッス」の叫び声を聞いた途端に、「目が、目がー」と叫んでいるのですぞ。
しかもなぜか司令官に任命される大佐たちは、階級に対して皆若く優秀な将校であるにもかかわらず、髪の毛が薄いのです。
まあ若いと言ってもあくまでも階級に比べてなので、若い子相手に「流行の服は嫌いですか?」などとナンパしている、いい親父どもでありますが。
ですがそんな彼らにだって悩みはあります。
「アデランスに行っても、毛が生えてこない!」
と嘆いている、気の毒な人たちでもあるのです。
コホン、話がそれましたな。
なお、技術者集団"ジブーリ"には、夷狄の国より亡命してきた科学者"ハウール"博士なるお方がおり、最近では天空城塞ラピュータに触発されて、地上を"動く城"を作られたとのこと。
私などには、単にその辺にある建物を適当にくっつけまくった、おんぼろ砦にしか見えませんでしたが、いやはやそれは私の目がただの節穴であるからにすぎないでしょう。
間違っても、有り合わせの建物を適当に継ぎはぎして作ったなんてはずがあり得ない!
なお、地上部隊の説明をしたついででありますが、陸軍の戦車部隊ではここ最近「チハたん」の愛称で知られる戦車が、密かな人気になっておりますぞ。
ですが、私としたことがとんだ失態。
我が神国の誇る精強無比なる軍隊を述べるよりも先に、まずは我が国を統治なさる大神様の紹介を忘れておりました。
我が神国一億二千の民を導かれる至尊にして至高なる、最高統治者であられる神聖不可侵な存在の大神様は、女性であられます。
神国一億二千の民を導かれる存在であられると共に、その精神は非常にもろく、何かあるたびに岩戸にお隠れになられ、引きニート生活をなされます。
大神様は太陽神でもあられるため、岩戸にお隠れになられますと、そのたびに神国の空からは太陽が失われ、地上は暗闇に覆われることとなります。
引きこもりになった大神さまの嘆きは大地にとどろき、それに影響されて地上には"腐海"と呼ばれる領域が誕生します。腐海の中では"ホモー"とばれる神獣が生み出され、時にお怒りによって、涎を垂らしながら腐海の外にまで飛び出してきます。
神獣様は大神さまに使える獣でございます。
何人たりと神獣様に逆らうわけにはいかず、そのお怒りを鎮めるためには"薄い本"と呼ばれる"聖典"をお捧しなければならないほど。なお、この時聖典の内容がBLでなければ、ホモー様の大いなるお怒りが地上に現れますので、一部の"貴腐人"を除いた神国の民は、皆恐れおののいております。
このように大神様がお隠れになると、地上はそれはそれは悲惨な有様に。
特に男は老いも若いも問わずに、ホモー様の犠牲に晒されますので、男にとっては、それはもうあられのない涙々、滂沱の涙の地獄となります。
ですので、大神様がお隠れになるたびに、神国では"コミックマーケット"なる神事が催されるのです。
コミックマーケットでは、各地に住まう一流の職人が生み出した特産品が売買され、その中には先ほどホモー様の怒りを鎮めるために用いられたBL系の薄い本も大量に売買されます。
コミックマーケットで売買される大量の聖典の存在につられ、引きニート生活をされている大神様も、自然にお隠れになっていた岩戸から飛び出して、この神事の場へと姿を現されます。
薄い本を大量に捧げられた大神様はそれはそれは絵にも言われぬにやけ切った顔をして満足され、、引きニート生活を引退されます。
まあ、それでも何かあるとすぐに岩戸にお隠れにならるのですがね……
この大神様が納められる神国の人間が非常に優秀であることは当然。
社会は"月月火水木金土土"の1週間からなっており、会社の労働時間は深夜の0時から24時までとなっております。
会社からの逃亡は許されず、例え帰宅できたとしても、自宅で残業をこなすことが出来るほどの恵まれた労働環境。
ですが労働者は誰一人として不満を漏らすことはなく、
「市民幸せですか?」と尋ねれば「はい、コンピュータ様幸せです」と、声を揃えて彼らは答えてくれるほど。
そのあまりの幸せぶりから、近年ではあまりの嬉しさに感極まり、突然心臓発作を起こして倒れてしまう者もしばしば。
そのまま死に至るものまでおり、"過労死"と呼ばれております。この死に方は現在では喜びの絶頂に至った者のみが至れる、神国で最も名誉ある死に方とされております。
この神国における最大の都市は、"大都会岡山"であります。
いえ、岡山はとは大都会らあらず"超都会"。
その人口は1200億人を数え、これは神国の総人口はおろか、世界人類の総人口よりもさらに多い人口が、超都会岡山に住んでいるのです。
岡山には、神国のみならず夷狄の国々よりも集った、政治家の集まる国連が置かれております。ここでは日夜岡山に関する政治が議論されております。
それもそのはず、世界のことなど論ずる必要などなく、国連は岡山のことについてのみ述べておればよいのです。
神国は昔はニッポンと呼ばれておりましたが、現在では"岡山国"と改名されております。地球などと言う星は存在せず、"岡山星"が存在しているのです。太陽系などという意味不明な呼称など存在せず、あるのは"岡山星系"のみ。
銀河ですとな?
なにをバカなことを言われる、銀河とは"岡山銀河系"しか存在しないのです。
このように、世界とはすなわち"岡山"のことを意味するのですから、国連でも当然岡山の事しか話されないわけです。
もっとも、国連に出席している全ての政治家は、岡山人が100%を占めております。
なお、これらの情報は神国"大本営"よりの発表を元にした内容であります。
一部の事実を認識できない歴史家どもが、「大本営発表は嘘偽りであり、大戦中には連日大勝利と言いながら、実際には敗北しかなかったではないか!」などと騒ぎ立てておりますが、なに問題はありますまい。
今頃は我が国の誇る忍者部隊が派遣され、「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」と叫んでいることでしょう。
以上で、我が神国に関する説明を終了させていただきます。