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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ドルセット界物語

異世界トリップでチート巫女

作者: とにあ

 公園の階段を踏み外し異世界トリップ。

 人生破壊されたと思った。


 だって私は人生設計してたんだもん。


 お兄ちゃんの教科書で上の学年の勉強も予習して、体力だってつけて、家事だって練習してた。料理はどうも向いてなかったけど、簡単な物なら作れるわ。

 お茶やお花は綺麗な所作が身につくと言うからがんばった。師匠達には苦笑されてたけどね。

 チラチラと短期のバイトもしてた。

 だって実際に働いてみないと世間ってわからないじゃない?

 社会勉強って必要だと思うの。

 もちろん、活動資金もね。

 うちは貧乏じゃないし、子供二人を大学に行かせる資金はある。そして習い事をさせてくれる余裕もあった。

 私ががんばったのももちろんあるけどね。


 生活資金に困るコトのない生活。


 私の目標のために必要なのはそれだ。


 小学生の時に好きになったあの人との生活。それを心に抱いて過ごしてきたのだ。


 それが没になるのは許せなかった。

 努力が無駄になるのは嫌いなのだから。

 こみ上げる怒りをこらえることが大変だった。

 言葉も意志もどこか通じない。

 でも、この世界にあの人も共に来ていた。


 それなら、この世界で生活していく。

 彼さえいればいい。彼が戻らないことを望むならこの世界で成功していこう。


 それでいい。



 言葉のわからない世界であの男は私を赤毛の女に預けて放り出した。

 彼はその内容を疑わなかったけれど、私は少し、胡散臭く感じた。

 連れて行かれた先は神殿と呼ばれる場所で。

 そこで銀の幼女に出会って、神の声を聞いた。

 銀の鈴が振るような神の声を聞き、この世界の言葉を理解した。

 そして親切な神様に与えられた知識。


 そこで知ったのは神の善意にたかる寄生虫のような奴ら。


 気に入らなかった。


 信仰心のない宗教家。ううん。宗教屋だと思う。

 生きるのに便利な魔法を神から得るために利用する奴ら。

 神様はそれすら笑って許してしまうお人好し。

 銀の幼女と私は同じ立場の別血統で、神様は巣立ったその末裔に会いたかったのだと笑った。そして、ちゃんと帰してくれると言った。

 ウザかった。

 銀の幼女の奮う力は神の命。神の命は信仰で強まる。しかし、信者は、幼女の信者なのだ。神への信仰ではなくなったものでは神様の力はただただ削られ消滅まで近かった。だから、神様は私を呼んだのだ。死の間際に巣立った子の行く末を知りたかったと。

 我侭なのだと笑う神様。

 幾つかの計算をする私を神様はニコニコと見守っていた。

()るわ」

 銀の幼女を滅して神の力を独り占めするコトを決める。

 それでも神様は止めるコトなく笑っていた。

 そっと忍んできた銀の幼女を殺した。

 ジワリと暖かくなる腕が嫌だった。

 名前も知らない銀の巫女に流れていた神様の力が私に流れてくる。

 この女、同じコトを考えてた。

 力が二分されるのなら一つにって。

 でも、バカだと思うの。

 神様を消滅させたら終わりなのに。

 ねぇ、神様。

 信仰を集めてあげる。あなたを求めあなたに感謝する。

 私はあなたをきっと信仰はできない。

 でも、あなたを心の安らぎに中心に据えたいと言える人達を探してみせる。

 だから、私に力を貸して。

 私は心地よい快楽の中、全ての証拠を消して逃走した。

 神様はニコニコと笑ってる。

 ねぇ神様。

 私が信仰を集めてあげる。

 ちゃんと約束は守るわ。

 だから、力を頂戴。



 神殿をぶっ潰して赤毛女を連れて彼の元へ戻る。

 赤毛女を言いくるめるのは簡単だったし、あの男を言いくるめるのも神殿内情への不干渉を突きつければ一発だった。

 それでも私にはまだ力がなかった。

 表面上はあの男に従う。

 歯車が回りだす。

 目的といった目的地はない。

 世界のどこかに眠るヒスイ様のシルシを探す。

 それが旅の目的。

 地図作りの彼と、この世界のことを知る赤毛女、そして大好きな彼。

 男女四人で世界を巡る。


 旅のさなか、地味に神様の信徒も増やしたわ。

 呼応して使える力が高まってゆく。

 受けいれられるものは受けいれるけど気に入らない者は基本そばに置かないし、神の加護なぞ与えない。

 その選別の権利は私に託されていた。

 世界を知る赤毛女からいろいろ情報を引き出して、ヒスイ様が見る世界常識との差異を埋める。

 神の常識で人の世界を見ればそれはまともな行為にならないのは火を見るより明らかだ。

 人の常識と神の常識は当然過ぎるほどの隔たりがあるのだから。

 気がつけば周囲にいるのは弱いもの、独りだった者ばかりだった。

 ヒスイ様は笑って彼らを慈しむ。

 ようやく見出したヒスイ様のシルシは碧の指輪。

 それを握っていた女が嗤う。

 私の後を引き継がせたいの。と。

 彼ならうまくできるでしょうと。

 私が替わりにやると言うと、彼女は嗤ってそれでもいいと言った。

 だから、私は魔族が支配する地域の王の座についた。

 王と選ばれれば、神の力を揮う私に逆らうものはなく、そこに住まう魔族はヒスイ様を信仰してゆく。

 ヒスイ様はにこにこ変わることなく慈しむ。ヒスイ様は優しい神だ。

 もう既にヒスイ様に消滅の兆しは見えない。

 王である私に逆らう者などはそばにいない。

 私がすべきことは、国を守ること。

 その意思を見せ続けること。

 ああ、彼が笑う。

 私の愛しい貴方。

 貴方との生活のためだけに私は今の地位を、権力を求めたの。


「この子、行くところがないらしいんだよ」


 貴方にまつわりつく幼い子供。貴方は慈しみの眼差しを幼子に向ける。

「大丈夫。きっとすぐにここの生活に慣れると思うわ。みんな優しいもの」

 そう言って幼子を預かり、別行動をしている地図職人が戻っていることを教える。

 貴方が彼に会いにいってしまうのを確認し、私は幼子に視線を落とす。

「あの人の一番は私。そこだけ弁えていればいいわ」

 そう、あの人の一番は私でなきゃ、いやなの。

 他の誰かがあの人の一番になるのは許せない。



 ヒスイ様って、そういえば彼に似てるのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
[一言] チートなヤンデレ、素敵ですo(^o^)o
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