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第20章:国民の審判

総選挙、投票日。

その日の日本列島は、まるで、国民の期待と不安を映し出すかのように、薄い雲に覆われた、静かな日曜日を迎えた。


全国のテレビ局は、朝から、特別番組を組み、最新の情勢を、報じ続けていた。

『専門家の、最終予測です。自民党は、単独過半数を確保できるか、まさに、当落線上。一方、『チーム未来』は、野党第一党に躍進する、可能性も』


日本中が、固唾を飲んで、その審判の時を、待っていた。


午後8時。

全国の投票所が、一斉に、締め切られた。

その瞬間、全てのテレビ局の画面に、同じ、衝撃的なテロップが、踊った。


『『チーム未来』、驚異的躍進! 100議席超えか!』

『自民党、単独過半数、絶望的!』


出口調査の結果は、全ての専門家の予測を、遥かに、超えるものだった。


その頃、『YATAGARASU』のオフィスに設けられた、『チーム未来』の開票センター。

そのテロップが、巨大モニターに映し出された瞬間、部屋は、地鳴りのような、歓声と、どよめきに、包まれた。


安野貴は、その喧騒の中心で、腕を組み、静かに、その文字を、見つめていた。

彼の隣で、夏目響と羽生翔太が、信じられない、という表情で、顔を見合わせている。

「やった。やったぞ、安野さん!」


羽生が、興奮した声で、安野の肩を叩く。

だが、安野は、まだ、表情を、崩さなかった。

「まだだ。まだ、何も、決まっていない」


一方、その頃。

自民党本部の、開票センターは、テレビ局とは思えないほど、静まり返っていた。

集まった、党の幹部たちは、誰一人、口を開かず、顔面蒼白で、モニターに表示される、悪夢のような数字を、ただ、見つめている。


石破下流総理は、すでに、公の場に、姿を見せていなかった。

そして、その絶望的な空気の中心に、小泉寸次郎は、いた。


彼は、自らの選挙区の、開票状況が映し出された、モニターの前から、一歩も、動けずにいた。

『――開票率、80%。小泉寸次郎、当確』


その文字が出ても、彼の周りでは、誰一人、拍手も、万歳も、しなかった。

なぜなら、そのすぐ下に、信じられない数字が、表示されていたからだ。


対立候補である、『チーム未来』の、あの無名の元市役所職員との差は、わずかに、数百票。

小泉家の、鉄壁の王国で、彼は、落選寸前にまで、追い詰められていたのだ。


利益誘導、組織の締め付け。

彼が、自らの魂と引き換えに、繰り出した、旧世代の禁じ手は、確かに、彼を、当選させた。

だが、同時に、それは、彼の、政治家としての、未来を、完全に、殺していた。


国民は、全てを、見ていたのだ。

夜が更け、全ての議席が、確定した。

最終的な結果は、日本政治の、歴史を、永遠に、塗り替えるものだった。


自民党:220議席(単独過半数233に、遠く及ばず)

『チーム未来』:110議席(結党、即、野党第一党へ)


安野の、冷徹な予測通り、『チーム未来』は、単独で、政権を獲ることは、できなかった。

だが、彼らは、巨大与党・自民党を、結党以来、初めて、単独過半数割れという、絶望的な状況に、追い込むことに、成功したのだ。


その瞬間、『チーム未来』の開票センターは、この日、一番の、爆発的な歓声に、包まれた。

安野は、初めて、その口元に、かすかな、笑みを浮かべた。

そして、マイクの前に立つと、集まった、仲間たちと、そして、画面の向こうの、国民に、静かに、語りかけた。


「ありがとうございました」


彼は、深く、深く、頭を下げた。「これは、我々の勝利では、ありません。国民の、皆さん、一人ひとりが、勝ち取った、『新しい政治の、始まり』です」


彼は、顔を上げた。

その瞳は、すでに、次の、戦場を、見据えていた。

「明日から、この国は、誰も、経験したことのない、新しいステージへと、入ります。我々は、約束します。『批判より、提案を』。この国を、前に進めるため、我々は、あらゆる、可能性を、探っていきます」


国民の審判は、下された。

それは、どちらか一方の、完全勝利ではなかった。


旧世代に、退場を命じ、

新しい世代に、未来を託す。


しかし、そのどちらにも、単独での、絶対的な権力は、与えない。

それは、国民が、初めて、自らの意志で、作り出した、絶妙な、そして、極めて、高度な、政治の「均衡」だった。


摩擦の時代は、終わりを告げた。

これから始まるのは、全く、新しい、融合の、物語。

日本の政治が、本当に、生まれ変わるための、長い、長い、陣痛が、始まろうとしていた。

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