第7話『禁断の力、目覚め』
【この物語は、かつて世界を滅ぼした少年が、もう一度だけ救いを選ぼうとする旅の記録である。】
夜明け前、
俺たちは、再び荒野を進んでいた。
突然、地響き。
砂煙を巻き上げて現れたのは、
異形の魔獣だった。
──あれは、普通じゃない。
エリスがすぐに剣を抜く。
「……後退しろ! あれは、この辺の魔物じゃない!」
だが、ミレナが、足を取られて転ぶ。
魔獣の鋭い牙が、一直線に彼女を狙って飛びかかってきた。
(間に合わない──!)
体が勝手に動いた。
ミレナの前に飛び出し、右手を突き出す。
その瞬間。
俺の中で、何かが──”目を覚ました”。
右手が、黒く、赤く、脈打つ。
(──創造神の、右手。)
魔獣の体が、溶けるように崩れ落ちた。
存在そのものを、消し飛ばしたように。
静寂。
俺は、自分の右手を見下ろした。
そこには、
異形の紋章が刻まれていた。
──世界を書き換える力。
──存在をなかったことにする力。
「……レオン……?」
ミレナが、怯えたように俺を見上げた。
俺は、拳を握りしめた。
この力は、破壊のためじゃない。
救うために──そう、信じたい。
けれど。
エリスが、
剣を持つ手を震わせながら、俺を見ていた。
その目に、確かな”恐れ”が宿っていた。
──すれ違いは、さらに深くなる。
それでも、俺は──
この手で、誰かを救いたい。
たとえ、世界に拒まれても。
「禁じられた力を抱いてでも、俺は──もう一度、救いたい。」