第5話『有能すぎる仲間たち』
【この物語は、かつて世界を滅ぼした少年が、もう一度だけ救いを選ぼうとする旅の記録である。】
砂煙の中で、盗賊たちが倒れていった。
エリスの剣は、一閃ごとに鋭く、無駄がなかった。
俺も、体は覚えていた戦い方を自然に繰り出していた。
気がつけば、数で勝っていたはずの盗賊たちは、
恐怖に駆られ、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていた。
静寂が戻った村に、俺たちの息遣いだけが残った。
──勝った。
ただの力じゃない。
ただの破壊じゃない。
誰かを救うために、この手を使った。
ふと、背後に気配を感じた。
振り向くと、そこにミレナが立っていた。
驚いたような、
怯えたような、
それでもどこか、信じたそうな目。
「……なんで、あんたたち、ここまでするの?」
ミレナの声は震えていた。
「別に、何か得するわけじゃないのに」
エリスは剣を収め、静かに答えた。
「得るものなら、あるさ」
「……なに?」
「未来だ」
ミレナは目を丸くした。
「未来を救うために、今を守る」
エリスは当然のように言った。
それは、誰かに教わったものではない。
彼女自身が、そう信じて生きてきた証だった。
ミレナは、少しだけ目を伏せた。
そして、小さな声で呟く。
「……私も、何か、できるかな」
俺は、笑った。
「できるさ」
「……どうして、そんなこと言えるの?」
「未来は、まだ誰にもわからないからな。
だったら、できるって信じたほうが、いいだろ?」
ミレナは、何かを堪えるように唇をかみしめた。
そして、震える声で言った。
「──連れてってよ」
エリスが軽く目を見開く。
「私も、行く。
どうせこの村にいたって、何も変わらない。
だったら、あんたたちと一緒に……!」
勇気を振り絞ったその言葉に、
俺は、力強く頷いた。
「ようこそ」
ミレナに手を差し出す。
彼女は一瞬だけ迷ったが、
それでも、俺の手を取った。
──それは、小さな、小さな革命だった。
未来へと繋がる、小さな希望の芽吹き。
たとえどれだけ絶望に覆われていても、
この手で、何度でも、何度でも──
俺たちは、未来を創り出す。
「希望はひとりじゃ育たない。でも、仲間がいれば、何度だって芽吹かせられる。」