第4話『辺境の村、革命の種』
【この物語は、かつて世界を滅ぼした少年が、もう一度だけ救いを選ぼうとする旅の記録である。】
砂ぼこりが、頬を打った。
森を抜けた先にあったのは、乾ききった荒野。
そして、その中央にぽつんと佇む、色あせた村だった。
「ここが……クライヴ村か」
エリスが呟く。
家々は崩れかけ、畑は干上がり、
それでも人々は、かろうじて生き延びていた。
だが──
「……目が死んでるな」
俺は、そう思った。
村人たちの目には、絶望しかなかった。
道端に立っていた子供に声をかけようとしたエリスを、
老人が無言で制止する。
「関わるな」と言わんばかりに。
この村では、「諦めること」が生き延びる術らしい。
「……盗賊団が牛耳っているらしいな」
エリスが低く言った。
支配。
暴力。
恐怖。
それらがこの村を支配していた。
「救えると思うか?」
俺の問いに、エリスは答えなかった。
ただ、剣の柄をぎゅっと握りしめた。
救えるか、救えないか。
そんなこと、問題じゃない。
救いたいか、救いたくないか──それだけだ。
俺は、拳を握った。
そのときだった。
「おい、そこのよそ者!」
粗野な声が響く。
盗賊たちが、こちらへ歩いてきた。
ボロボロの鎧に、血に汚れた剣。
見るからに、力だけで村を支配してきた連中だ。
「旅人か? だったら、“通行料”置いていけよ」
村人たちは、遠巻きに怯えた目で見ていた。
誰も助けようとはしない。
誰も、声を上げない。
──そんな世界。
俺は、エリスと目を合わせた。
何も言わなかった。
けれど、互いにわかった。
俺たちは、もう迷わない。
「悪いな」
俺は、静かに言った。
「そんなもの、持ってないんだ」
盗賊たちの顔が歪む。
剣が、抜かれる。
エリスは剣を抜き、静かに前に立った。
そして、俺もまた。
壊すためじゃない。
救うために。
この手を、伸ばした。
「希望は、小さすぎて、誰にも気づかれない。でも、それでも、ここに芽吹かせるんだ。」