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第一章第一話「MADMAX」

5/13。追加執筆しました。

「本当に不思議な乗り物だ」


 ドンドルド砂漠を横断する黒い装甲車の中、操縦室にて、操縦桿であるハンドルを握りながらマックスがそう言葉を零す。


「と、いうと?」


 その隣に座るアピスが窓の外から見える何も変わらない風景を眺めながら、そう聞く。


「商会ギルドが補充してくれる運搬車や飛行機にはあらかた乗ってみたけど、こんなにもデカい車をあんな歯車一つで動かしちまうのがよ。『竜骨』って言うんだっけ?エーテルエンジンとは訳が違う。

 昔読んだ古典書に方舟の動力として用いられていたって書いてあったけど、こうまじまじと運転してみるとなんだかスゲェってのがこみあげてきてよ」

「ああ、そういうこと」


 竜骨。綺空挺の原点となっている『方舟』と言われた第一の男が発明した万能の乗り物に搭載された動力であり、それもまた第一の男の発明だ。

 第一の男はその方舟に乗り、楽園に至ったとされている。


「一番の疑問はなんでドンドルドの地下にあんな空間があって、方舟の動力が眠っていたのかだけどな」

「一から説明するか?それでもいいが、どうせ見当はついてんだろ?」

「まぁな」

「ドンドルドは『再生』が起きた土地。『ソロモンの匣』があったり、『竜骨』があったりしてもなんら不思議じゃないってことでしょ?」


 その後ろ、操縦桿とはまた別の、システム系統の管理を専用のデバイスで行っているドロシーがそう答える。


「俺が知るかよ。とりあえず、今は分からないことが多すぎだ。

 楽園に行くにしたって、方法も場所も分かんないんじゃ、今までと変わらない」

「って言ってますけど、どうなんですか~?アピスさ~ん?」

「急になんだよ」

「いやいや、これから何処に行くのって話だよ」

「まだそんなこと言ってんのか?言っただろ?冒険は気の向くままだ」

「え、マジでノープランな訳?」

「当たり前だろう。ここからは完全に考えてない。というか『匣』が機能してないんじゃ、考えても意味はない」

「それなんだけど、『匣』の機能ってなんなんだよ?」

「本当にこれだから、辺境出身は……まぁ、エーテル学の学士達が出していた論文からの推察だけど、一番有力なのは、『匣』は『楽園』とエーテル粒子を介して繋がっているとされていて、『楽園』には全能とされている機能があり、『匣』はその機能を引き出せる。これが全能の匣って呼ばれる理由。

 まぁ推察は他に一杯あるよ。『匣』には持っている者に『楽園』への道筋を見せる。とか。

 ここではない何処かの記録が刻まれているとか?

 でも全部あくまで推察に過ぎない。実際に『匣』を手にして、使ったことがあるのは『第一の男』ただその人だけだからね。

 伝説上の代物だから、推察に推察を重ねても、出てくる答えは推察だけ。

 だから、頼りになるのは、自室で寝ているアンタの友人って訳」

「……ドロシーって賢いんだな」

「まぁこれでも、元学術院所属ですから?辺境の学校も行ってないアホとは頭の質が違うんですよ頭の質が」

「お前、一口余計だって言われないか?」

「はっは~ん分かってないなぁ~。余計な言葉ってのが意外な発明ってのに繋がるもんだよワトソン君」

「誰がワトソンだボケ。名探偵だったら、もっともらしい推理でもしてみせろよ」

「ではここで推理でもしてみせよう。この方舟にはレーダー機能が備わっているのですが?

 そのレーダーに先ほどエーテルウェイブ反応が確認出来ました。方向は十時。

 エーテルウェイブ測定値の大きさからして商会ギルドの持つ綺空挺といったところだ」


 ドロシーのその言葉にアピスが見ていた景色に見たことのある空飛ぶ船が映る。

 方舟の丁度斜め左前に並列して航行している。


「……ドロシー。綺空挺って武装されてたか?」

「アピス艦長殿!敵艦の船側せんそくにて重火器の機動を確認!」

「とんだご挨拶だな、ったくおい。

 ドロシー!この船って武装ってあんのか?」

「ありません!」


 ふざけた口調になったドロシーを余所にアピスが立ち上がり、方舟内部の内線を起動させる。


『船員各位。喜べ。船旅初日だが、さっそく接敵だ。敵は商会ギルドの綺空艇』

「な、なんで商会ギルドが……」

「狙いは十中八九アルヴァルトだろ。マックス、なんでもいいからアレの死角に着け。

 船の構造上、真後ろになら攻撃は出来ないだろうからな」

「嘘だろおい?さっきコイツの運転したばっかだぜ?無茶言うなって――」

「おいおい、操舵主。じゃあどうする?このままハチの巣になって死ぬか?

 時間は待ってくれねぇ。役割分担の時、運転は任せろって言ったのお前だぞ」


 耳元で囁くアピスの声に全身が震える。


「なんだ?怖ぇのか?変わってやってもいいぞ?」

『そこのデカい装甲車!止まれ!止まらなければ撃つ!』


 綺空挺からの無線の声が操縦室に響く中、マックスが自分の帽子を深く被り直して、ハンドルを力強く握り直す。


『3秒数える!停止が受け入れられないのなら、発砲を実行する!』

「バカ言うな武者震いだ。アンタこそシートベルトしっかりしとけ。

 船酔いしても知らねぇぞ」

『――3!――2!――』


 目つきが変わったマックスが方舟のアクセルペダルを全力で踏んだ。

 方舟の車輪が唸りを上げて回転し、砂漠をものともせずに全速で進む。

 それと合わせて、綺空挺からの銃撃が放たれる。


「こいつらマジで撃ってきやがった!ドロシー!」

「はいよ!障壁装甲展開!」


 ドロシーの言葉の同時に、方舟の装甲が起動し、青いエネルギー障壁を展開。

 それらが降り注ぐ銃弾の雨を確かに防ぐ。


「あってよかったね!防御装備!」

『おい!あまりコイツのエネルギーを使うな!スピードが落ちるぞ!』


 内線からグローが注意喚起をするが、それどころではない。


「無理無理!多分だけどあの弾普通に高級な奴だから!一撃でも当たったらダメなタイプの奴だから!」

「行けるか?マックス!?」

「今集中してんだ喋りかけんな!」


 方舟は最高速度で銃弾の雨の中を駆けるが、それでも綺空挺の方がスピードは上だ。

 銃座の銃口角度を維持しながら撃ってきている。


「何してんの!?さっさとあの船の後ろに着きなさいって!?」

「だから喋りかけんな!そのまま仕事してろ!」


 マックスのハンドルが徐々に左に傾く。


「何してんのそっちは逆だって!」

「――黙って見てろ」


 砂漠には数々のレギオンの死骸がそこら中にある。

 小さなものから大きなものまで。


 マックスは知っている。これまでこの砂漠を知り尽くしてきた。

 砂漠の地形は必ずしもどこも同じではないことを。


「確かここら辺に……」


 波打つ地形の中、マックスの駆る方舟は綺空挺から距離を取りながら目的の物を見つける。


「あった」


 マックスが見据える先。

 砂漠で目立つ横たわるかなり大きなレギオンの死骸。

 死んでから時間が経っているのか中が空洞になっており、デカい顔部分しかないが雨を凌ぐにはもってこい。


 方舟は中抜きになったレギオンの死骸の中へと走っていく。そのデカい死骸は見事に方舟の姿を消す。


 それを見た綺空挺の銃座にいた従業員達がメムメムに報告する。


「目標が大型レギオンの死骸に逃走!」

「撃て。撃ちまくれ。あのようなボロイ壁でどうにか出来る訳がない」

「は!」


 再び銃座による掃射が開始される。

 エーテル強化を施した弾丸の雨はいとも簡単にそのレギオンの死骸を瞬く間に崩壊させる。

 大きな土煙が立ちこもり、視界が覆われる。


「あの障壁も無限ではあるまい。このまま撃ち続ければ出てくるだろう」


 弾は無限。商会ギルドの持つ財力に物を言わせた戦力は実に豊富。

 だが――。


『ったくよぉ――散々稼いだ後はもう俺達みたいなのは要らないってかぁ?』

「なんだ?誰の声だ?」

「例の装甲車からの無線です!」


 綺空挺にその声が響く。同時に綺空挺の索敵機能から方舟の姿が消える。


「反応ロスト!」

「どうなっている?」

『ケツがガラ空きだぜクソ鼠共』


 突然、綺空挺全体が衝撃と共に揺らぐ。


「今度はなんだ!」

「装甲車の反応!船尾トモ側に出現!」


 クマが船側の窓から船尾側を見渡すと、そこには綺空挺の船尾にぶつかっている方舟がいた。


「これでは狙えません!」

「クッ!」

「装甲車!船下を通って前方に出ます!」

「全速前進だ!追え!」


 態勢を崩した綺空船がうねりを上げて、正面を逃げ行く方舟を追おうとする。


「馬力ならこちらの方が上だ」

『そいつはどうかな』


 方舟の操縦室で綺空艇の隙を見つけ、静かに笑うマックスがいた。


「今しかないからな。障壁展開中止だ。行くぜ()()()()()()()号!ニトロブースト起動!」


 方舟の背面の装甲が展開し、中から大型のブースターがエーテル粒子を吹いて方舟の速度を更に上げる。


「は?おいおいなんだマッドマックス号って?」

「あ?この船の名前だよ。今付けた。ただの船じゃ愛着湧かないからな?」

『ハッハッハッいいじゃねぇか。マッドマックス号。この風景にぴったりだ』

「グロー勝手なこと言うな。船長はアタシだろ。名前を付けるならアタシが付ける」

「いいや?マッドマックスだね。もう決めた。これ以外ありえない」

「いやいやいや、そもそも、マッド()()()()ってなんだ。自分の名前をこっそり入れてんじゃねぇよ。ズルぃだろうが」

「じゃあ、他にあんのかよ?ダサいのは無しだからな」

「…………。」


 咄嗟に名前が思いつかないアピスが顔を渋くさせる。


「決まりだな」


 その顔を見てマックスが得意げな顔でそう言って見せる。


「呑気に話してるところ悪いけど、アイツらしつこいよ。

 まだ追って来てる。ん?なにあれ?」


 マッドマックス号のおよそ1km後ろ。

 全速力で追いかけてくる綺空挺の姿があった。そして、その甲板の上にひときわ目立つ人影があった。


 一風変わった大剣を背中に背負い、三つ編みにした長くて青い髪は大剣の放つ色と少し似ている。

 筋骨隆々の体にパツパツの黒シャツとゆったりしたズボン。黒い瞳を持ち、その右目の下に囚人であった証の黒い刺青が掘られている。


「さぁってとぉ、腕が鳴るのぅ」

『リー。今回、父上があなたをあの大監獄から出す取引をしたのは他でもない戦力として。

 懲役5000年の刑期があるのにも関わらずです。

 こちらに派遣された理由。お分かりですよね?』


 耳に焼き付けられ、がっちりと固定された無線からメムメムの声が聞こえてくる。


「そんなん皆まで言わんでも分かっとる。

 じゃがのぉ、久しぶりの娑婆じゃ。楽しみたいってのが普通じゃろ?」

『これは機密の仕事です。くれぐれも――』


 リーと呼ばれるその男が背中の大剣を引き抜く。


「がぁたがたうるさいんじゃ。要は――」


 およそ四尺ほどあるであろう長い両の剣身。

 特徴的なのはその剣身の根元。

 鍔がなく、代わりに青く光る歯車が三つ羅列している。


「あの車斬ったらエエだけの話じゃろうが」


 鋭い眼光をまき散らすリーが言葉を放つ。


「――()()大剣・起動」


 そして、剣に備えられていた万能の炉心が動き出す。

 その様子をマッドマックス号のカメラで捉えていたドロシーが口を大きく開けて言葉を漏らす。


「――嘘でしょ?アレ、竜骨大剣?ってことは、あの男……ジーク・リー!?なんであんな大罪人が……」

「商会ギルドも後がないってことか?よっぽどソロモンの匣が欲しいらしい。ラッテン・クーニッヒめ、サンクタとも繋がってやがるのか」


 ジーク・リー。

 そう男の名を語る。


「……誰だそりゃ」


 頭上に疑問符が浮かぶマックスが堪らずそう聞くと、信じられないといった風な形相でドロシーがマックスを睨む。


「……呆れた。世間知らずにもほどがあるわ」

「ジーク・リー。かつてのアジア近海にあった『日本』と呼ばれる島国をそこに出現していたレギオン諸共、海に沈め、その罪からサンクタ監獄に収容中だった筈の男だ」


 その解説を頭上にあるカメラウィンドウを睨みながら、アピスがそういう。


「そして、この世界に六本現存されるとされる全能の神デアエが遺した爛器。『神造兵装』の内の一つである『竜骨大剣』、又の名を『バルムンク』。その名の通り、『竜骨』を内部構造に組み込み、無限にも思えるエーテル出力によって破壊の限りを尽くせる武器。そのたった一人の適合者だ」

「神造兵装?適合者?」


 意味の分からない言葉の羅列にマックスの疑問が増殖する。


「通常、爛器はNUTにエーテル神経操作によって、その力を発揮する。お前達の用いるエクソもその一つ。NUTはエクソを操作し、それに付随する武装型の爛器をも操作し、対するレギオンと渡り合う。

 ここまで分かるだろう?」

「ああ」

「神造兵装は発見当初、誰にも扱えない物だとされていた。何故か分かるか?」

「いや……」

「神造兵装はその内部構造が異次元的だった。誰もその構造を理解することが不可能であり、再現も不可能。そして、その複雑さ故に、誰にもその操作方法を解読出来なかったからだ。

 だが、神造兵装には適合者と呼ばれる者が存在することが明らかにされた。

 その者にしか、神造兵装を扱うことが出来なかったから、そう呼ばれている」


 神造兵装。未だ解明されていないこの世界の謎の一つ。

 適合者本人でさえ、扱い方を熟知している訳ではなく、それはまさしく、神が作りたもうた遺物とさえいえるだろう。


「そんなのは常識!問題は――」


 そして、その性能は――人の範疇を超える。


「あの剣が島の一つや二つ、簡単に吹っ飛ばせる程の馬鹿みたいな性能だってこと!」


 カメラに映るリーが持つ竜骨大剣が徐々に光を帯びていく。


「竜骨大剣――」


 竜骨大剣の剣身が二つに分かれ、鍔部分にある三つの竜骨が回転。耳を劈く音と共に竜骨の光と同様の青い光が柱となって矛先から伸びていく。

 そして、その光の柱は空に届き得るほど伸びていった。


 それは熱であり、炎であり、エネルギーであり、破壊の力。


 正しく、竜を屠る光の剣と言える。


「――排熱大公はいねつたいこうォ!!!!」


 その光の剣が勢いを付けて、振り下ろされる。


 距離を取っていた筈だったが、そんなものは無意味。

 光の剣は空から振り下ろされ、遠目で小さな光の柱だった物が、眼前にて、マッドマックス号を覆い尽くすほどの巨大な熱線に変わる。


「――ハッ、まぁだが、その程度で、アタシの道を阻めるかって話だよなぁ?」


 次の瞬間、そこまで迫っていた破壊の光が一筋の赤い軌跡によってマッドマックス号の軌道からずらされる。


「――ホォ!コレを防ぐか!なかなかやりおるやないかぁ!」


 防がれた一撃を見たリーがその瞼を開く。

 そのリーの視界の先、赤く光る刀身を滾らせ、マッドマックス号の甲板に一人。

 フード姿の人影があった。

 マッドマックス号の鬼人。ジャック・サウダージその人である。


 こちらに構えるその出で立ちには隙一つなく、笑みさえ零れる。


「ハッハッハッハァ!そう来おへんとなぁ」

『笑っている場合ですか?逃げられているんですが……』


 リーの耳元の無線が光り、メムメムの声が聞こえる。


 視線の先、リーの攻撃を防いだマッドマックス号が遠ざかっていくのが見える。


「そう焦んな。急いては事を仕損じるって言葉、鼠は知らんか?」

『楽観的ですね。バカなんですか?』

「鼠の癖に人様を馬鹿にすんな。殺すぞ」

『本当に分かってるんですか?私はあなたをいつどこでも殺せる』

「ハッ、やってみぃ。そんなこと出来ひん癖によぉ喋りおるわ」

『――――。』

「まぁええわ。あの船とはまた会いそうな気がする」

『何を根拠に……』

「勘や。儂の勘はよう当たるで」

『それを根拠にするのは――』

「――それにな、心配すんな。儂を誰やと思うとる?」


 リーは笑い交じりで喋りながら、綺空挺の甲板に腰掛けながら、空を見上げる。


()()()()を殺した男……』

「……まぁけど、あの車には結構……しんどそうなんがおりそうや」

『あの剣士ですか?』

「せやあらへん。あのフードとは別のピリピリした圧がした。

 鼠。ええ仕事持ってくるやんけ。

 これで、退屈せんで済みそうや。のぅ……」


 座って眺める竜骨大剣が青い煌めきを放つ。


「……バルムンク」


 声が聞こえる。ような気がした。

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