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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【短編】勇者の話

作者: タカヤナギ

短編です。

ルール的に一応R15にしているだけなので、気楽に読んでくださって大丈夫です!


俺は、生まれた時から勇者になる事を運命づけられている。

その証拠がこの腕の痣らしいが、俺にその自覚は一切なかった。

だが、皆が世界がそう望むのならと受け入れ俺は厳しい訓練を受け続けた。

そして18になった日、国王の命により魔王軍の討伐に出発することになった。

最初は一人で行くのかと不安にもなったが、俺には幼少の頃から付き合いのある頼もしい仲間がいた。

年上の魔法使い。

お調子者だが攻撃魔法の腕は同世代で並ぶものは無く、いざって時に頼れる兄貴分。

幼馴染のスカウト。

弓の名手で常に冷静に物事を判断出来る切れ者だが、ふいに見せる笑顔は年頃の少女そのものだ。

年下の神官(シスター)

気弱だが芯の通った女の子で、ダメな事にはダメと言える強さを持っている優しいヒーラー。

このパーティなら負ける気がしない。

そう心から思える程に彼らは頼もしかった。


最初の2週間は苦労の連続だった。

食料、寝床の確保には本当に苦労した。

だが、日が経つごとに要領を得たスカウトが俺たちにも教示してくれて、それ以降は苦労することも少なくなっていった。

それからひと月くらい経った頃、スカウトと偵察に出た際に愛の告白をされた。

俺は戸惑いつつも彼女の気持ちを受け止めた。

その日以降はなるべく二人で偵察に行き、その度に身体を重ねた。

愛する人ができ、信頼できる仲間がいて、出会う人々も俺たちを歓迎してくれる。

俺はやっと勇者として生まれてきて、初めて幸せだと感じていた。


ある時魔物が飛ばしてきた体液を魔法使いが浴びてしまうことがあった。

その体液は肉体を溶かしたが神官の回復魔法が間に合い、傷は何とか元通りになった。

こんなことまでしてくるなんて…。

俺は仲間を傷つけられた怒りに任せて剣を振り、そこら一帯の魔物を殺しつくした。

当の魔法使いは痛みの記憶に苛まれ、暫くは戦えるような状態じゃなかった。


魔法使いをかばいながらもやっと、魔王の城まであと半分という所まで来ることが出来た。

この先にはもう人が住む大きな街は無く、逃げ遅れた人々や、魔王軍すらも見向きもしないような小さな村しかない為、魔法使いの休養を含め最後の補給に向かった。

俺はスカウトをここで離脱させたかったが、彼女は最後まで付いて行くと聞かず仕方が無いので連れて行くことにした。

その日を境に一度、一人の勇者とスカウトに戻るとベッドの中で誓いあった。


それからひと月程経った頃、すでに戦力として復活している魔法使いのナビのもと、迷いの森を抜けようと俺たちはさまよっていた。

めぼしい食料も殆どなく、水のみで過ごす日も少なくなかった。

そんな弱り切っている俺たちを魔王軍が見逃すはずがなく、連戦になる事も増えていった。

キズは神官の魔法でなんとかなるが体力だけはどうにもならず、全員限界が近かかった。

それでもなんとか迷いの森の根源である魔物を倒すことに成功した俺たちは、安堵し油断していた。

地中から顔を出したサンドワームによりスカウトが地中に引きずり込まれてしまった。

何とか俺と魔法使いは彼女の身体を掴み、支えるが耳元で聞いたことも無い絶叫が響いた。

俺たちが引き抜くまで、とにかく回復魔法をかけ続けるよう神官に指示するもその声がやむことは無かった。


あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!


永遠にすら感じた時間も彼女を引き抜くことで終わりを告げた。

しかし、彼女の身体は地面から出ていた胸より上しか存在しなかった。

それでも魔法のおかげでかろうじて生きてはいたが、生きているだけであった。

もう喋ることもできないが「殺して」とそう言った気がしたから、俺は躊躇せず彼女の心臓に剣を突き立てた。

その後の事は余り覚えていない。

暴走した魔力を彼女が嵌っていた穴に向かって解き放ったところまではなんとなく覚えているが、気付いた時には魔法使いに背負われていた。

俺はその時心の中で彼女に誓った、絶対に魔王を殺すと。


スカウトもいなくなりこれ以上進めないと判断した俺達は、最後に寄った街に一度戻ることにしたがその道も楽ではなかった。

あの日以降ほぼ毎日神官の悲鳴で目が覚める。

彼女の死がフラシュバックするのだろう。

それは俺も魔法使いもふとした時に思い出していた為攻めるつもりも無いが、流石に限界だった。

俺達もそうだが特に彼女の限界が近かった。

彼女の寝床に剣を持って行く。

今日もまた悲鳴を上げ目を覚ますであろう彼女に近付き、その身体に剣を突き立てるつもりだったが、気付いたら彼女の服を破り何度も何度も何度も何度も彼女を犯していた。

翌日会った彼女はいつもより安定しており、悲鳴を上げることも無くなった。

だが、暫くするとまた悲鳴を上げて目を覚ますのでその度に犯した。

次第に毎晩彼女から求められるようになっていき、気付いたら魔法使いも含め3人ですることも増えた。

しかしある日とうとう彼女が壊れた。

恐怖心を快楽で無理やり誤魔化していた反動が来たのだろう。

街はもう少しだというのに。

俺達は街で彼女を売り、十分な路銀を手に入れた。

全ては魔王を殺す為に。


そこからの旅は比較的順調だった。

道中のめぼしい魔物はすでに殺していた事もあり、戦闘も少なくなっていた。

それでも食料の面で厳しい状況は多々あり、次第に口数は減っていき、いつしか俺たち二人の間に会話は無くなっていた。

食料が尽きたころ、何とか小さな村を見つけた。

俺達は勇者パーティで魔王討伐の途中である事、食料に困っているから助けるよう命令したが聞き入れてもらえなかった。

こんな汚らしい勇者がいるわけない、お前らを助ける余裕なんかない、そんなことを言われ仕方なかった。

俺達には使命があるのにこんなところで足踏みしている暇なんてないのだから。

その日は久しぶりにまともな食事をすることが出来た。


魔王城までもう少しと迫った頃だった。

俺は魔法使いの裏切りにより魔王に捕まってしまった。

それからは拷問の日々。

切っては、焼いては、削っては、抉っては、刺しては、捩じっては、砕いては回復魔法でもとに戻された。

永遠の従属契約を結ぶか、殺された仲間の数だけ俺を痛めつけるまで止めないと言われたが俺は決して屈したりしない。

あの日の近いを果たす為に。

ある時、鎖でつながれた俺の前に魔法使いがやってきた。

勇者を連れてきた褒美に魔王に力を貰ったのだというが、正直そんなことどうでもよかった。

するとこの裏切り者は手下に中身の入ったでかい麻袋を持ってこさせた。

曰く魔王は全ての魔物と記憶を共有することが出来るらしく、その力を使いサンドワームに捕食された彼女の下半身を読み取り、再現してもらったのだという。

それだけ言うと目の前でそれを犯し始めた。

下半身だけの別の人間を使って俺を煽っているのだとはじめは思ったが、俺と彼女しか知らない幼いころに付いた傷跡がそれにはあった。

ずっとお前が嫌いだった、スカウトも神官もお前しか見てなかった、お前なんか…お前なんか…。

あとなんて言ってたっけ、あぁ『殺さないでくれ』か。

目の前の肉の塊を踏みつぶし、魔王のもとへ向かった。

俺の力が上がったのか、そもそも魔王が大したことなかったのかわからないが、目の前で涙を浮かべ命乞いをするさまを見るのはとても愉快だった。

その後俺は魔王城にいるすべての魔物を一掃し、故郷を目指した。


そんなある日、食料を貰いに町に寄った。

町長が話の分かる人で、快く譲ってくれた上に湯浴みまでさせてもらった。

そろそろ出発しようかと思っていた時、子供に石を投げられた。

お母さんを返せ!勇者なのになんで守れなかった!そう泣いていた。

言っている意味が分からなかった。

俺が母親を殺したわけではないのに、なんで勝手に死んだ奴の死に責任を持たなくてはいけないのか。

無視していると他の住人からも次々石が飛んできた。

言っていることは同じような事。

魔王城に向って行っているのになぜ近場の村を救わなかったのかとか逃げ遅れた人間は見捨てたのかとか。

さっきからなんて些末な事を気にしてるんだこいつらは。

俺は魔王を倒したんだぞ?世界を救ったんだぞ?その偉大さがなぜ理解できない。

町長に良くしてもらった手前大事にしたくないので、俺はそのまま無視を続け気にせず歩き出した。

その時、子供の投げた石が俺の頭に当たった。



気が付くと湖のほとりで眠っていた。

さっきまで何をしていたか全く覚えていないが、何やら全身濡れていた。

確認すると全身赤黒く染まっており、誰かのいたずらで塗料をかけられたのだと分かった。

その塗料が何に由来の物かはわからなかったが、どこか落ち着く匂いがした。

丁度湖にいるのだからとまず手と顔を洗う。

その際水面に移った自分の顔が何故か少しだけ魔王に似ている気がしたけど、俺は気にせず塗料を落とし続けた。



勇者を聖人君主では無く、人間まで堕としたらこうなりました。

別にホラーとかが書きたかった訳では無いです!

ただ、ゲームの勇者は綺麗すぎるなって思ったことがあったのと、魔王ってどこから生まれるんだろうって考えた結果こうなった次第です…!


ご拝読ありがとうございました!!

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